おはしで治す現代病:「コメアレルギー」

1997.06.10 21号 19面

「気が狂いそうにかゆい」。アトピー性皮膚炎は、年々治りにくい症例が増加している。植物油・卵・牛乳、そして第四番目の原因食物は、なんと「コメ」。日本人でありながら、コメに対しアレルギーをおこしてしまったのだ。毎日の食事から主食となるコメを、その適切な代用食なしに除去することは、容易なことではない。最近では、アレルギー物質を取り除いた低アレルゲン米が一般に販売されるようになった。研究をした横浜市立大学医学部付属浦舟病院皮膚科の池澤善郎助教授にうかがった。

Q おコメのアレルギーはどうして起こるのですか?

A コメにはタンパク質も脂質も十分に含まれています。コメがアレルギーを発症させる理由は完全には解明されていませんが、重症アトピー患者がコメを除去すると症状が軽減する例は多く報告されています。

Q コメの除去法とは?

A コメのかわりに、小麦・大麦・ヒエ・キビ・アワなどが使われていますが、同じ穀物のため交差反応性のアレルゲンをしばしば共有します。ですから、これらの穀類すら除去が必要で、主食をさつまいも・かぼちゃなどの芋類に置き換えないと皮膚炎が治らない難治性の症例も増えています。しかし、たとえ眠れないほどの激しいかゆみに悩む重症者でも、栄養面などの問題から、完全除去を行えるのは短期間で、回復次第、早めに半減法に移行します。

そこで最近注目されているのが、穀物アレルギーの原因治療のための代替食物として開発された低アレルゲン米の利用。各種治療に苦慮していた重症患者でも、このコメの摂取開始四週後に症状の著しい改善が見られます。強いステロイド外用剤を大量使用していた人も、弱いものを週に一・二回少量塗布するだけでうまくコントロールできるようになることも確認されています。このコメの食事療法によるステロイドの減量効果はたいへん重要な意味をもつのです。

Q 隠れたヒット商品、低アレルゲン米。気になるそのお味は?

A たとえば『ファインライス』というコメで、患者とその家族を対象に行った味に関するアンケートでは、普通米に比べて「おいしい」と回答したのは一一%ですが、「ほぼ同じ」が七二%と大半を占めています。またコメのうまみを左右する粘りやコシに関しても高い評価が得られています。アレルギーでない家族が食べても機能的にも、特に問題なく、ふつうのおコメの代わりとして使えます。

貴重な代替食 ファインライス

『ファインライス』は、コメに含まれるタンパク質・グロブリンを低減したコメ。平成5年に特定保健用食品に認定された。グロブリンが原因と思われるコメアレルギーに悩む重症アトピー患者にとっての貴重な代替食物として、その早急な量産化が期待されている(販売元=(株)資生堂食品事業部、電話0120・246・089)。

また現在、このほかアルカリ処理・超高圧処理・乳酸菌処理のコメや小麦など、いろいろな低アレルギー食品の開発が、各研究者やメーカーにより盛んに行われている。

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