百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「小松菜」理想的カルシウム・鉄・ミネラル
緑黄色野菜が身体にいいことは常識だが、できることならその中でも足りない栄養素補給に最大限有効な物をセレクトしたい。お正月の雑煮に欠かせない小松菜と夏の青菜の王様、モロヘイヤ。成分の実力をみていきたい。
(食品評論家 太木光一)
アブラナ科の越年草で、徳川時代初期のころから栽培されていた。呼び名も冬菜・小菜うぐいす菜・葛西(かさい)菜などマチマチ、東京都江戸川区小松川町に産地が定着してから小松菜と呼ばれるようになった。この名は徳川綱吉が付けたともいわれる。
カブから改良されたもので長楕円形の葉を持ち、濃緑色の葉は柔らかく甘味があり、葉柄は細く質も薄い。耐寒性が強いので、東京付近でも冬に収穫することが出来る。
栽培地や収穫の時期により、いろいろの別名がみられ、ウグイスナ・フクタチナ・シュウガツナ・オオサキナ・シーブナ・クロナ・サッポロナ・クマモトキョウナほかと多い。
野菜入門の第一歩は小松菜といわれるほど丈夫で育てやすく、しかも利用価値の多い野菜である。種をまいてから収穫までに、夏場なら三○日、秋四○日、冬五○日あればよく、一年に四~五回の輪作が可能である。
しかも発芽は早く、温度の高い時は二~三日、遅くとも五~六日で出てくる。ぎっしりと目白押しに出てくるから、すぐ間引きして、つまみ菜として利用できる。
双葉から本葉が発生するたびにつまみ、常に隣の株と少し触れ合うぐらいにしておくと株もしっかりとする。冬以外ならいつでも種をまくことが出来る。生育中大切なことは水不足にしないこと、それに充分な陽光で、この二点を除けば栽培は極めて容易である。
生産農家にとって小松菜の魅力は年一回の勝負作物と違って輪作がきき、狭い土地でも高い収益があげられる。また産地が東京であると輸送コストもミニマムですむ。
成分をみると一○○㌘当りカルシウム二九○㍉㌘鉄三・○㍉㌘を始めビタミンではビタミンA効力として一八○○国際単位、B1○・○九、B2○・二二、C七五いずれも㍉㌘となる。カルシウムと鉄が多く、ビタミンでもA、B2、Cが多い。その他マグネシウム、亜鉛、銅などにも恵まれ、総合ビタミン剤に優る内容だ。
カルシウムの場合、ほうれん草六五、キャベツ四三、にんじん三九、セロリ三四、レタス二一、トマト九、いずれも㍉㌘で、これをみても小松菜はカルシウム不足の日本人の食生活で貴重なものかが理解できる。
ビタミンAについても野菜の中ではトップクラスでほうれん草よりも多く、トマトの九倍、セロリの一一倍、レタスの二五倍。Cについてもキャベツの二倍、トマトの四倍、レタスの一二倍で、食べるビタミン野菜とも呼べよう。
アクが少なく味にクセがない。一年中とれるので青菜の少ない時にはビタミン、ミネラルの給源として理想的といえよう。正月には東京の場合雑煮需要として高値になる。
品選びは葉と茎がみずみずしいことがポイント、伸び過ぎたものは味が落ちる。またあまり大きなものを選ばないように。