百歳への招待「長寿の源」食材を追う:春菊
健康のためには肉が主体の生活から野菜が主体の生活に改めることが望ましい。ヘルシーでおいしく安上がり。長寿の秘訣はビタミン、ミネラルいっぱいの野菜を愛用することから始まるともいえよう。
(食品評論家 太木光一)
春菊は原産地が地中海地方の、キク科の一~二年草。中国に一一世紀頃に伝わり、ここで野菜用に改良された。現在、インドから東南アジアにかけて広く栽培されている。ヨーロッパではもっぱら鑑賞用で、食用としていない。
日本には中国から戦国時代に伝来したが、キクナ、フダンギクとも呼ばれていた。現在では関東一円、関西、九州などで多く栽培されている。
春菊は春先に開花し、花は黄または淡黄色。マーガレットを肉厚にした感じでこれが野菜の花かと目をみはるほどの美しさだ。種から育てて、数カ月で収穫できる。生育途中にはつまみ菜として利用できる。
春まき・秋まき・冬まきと年三季に栽培され、周年供給が可能である。栽培上、土質を選ばないが、乾燥に弱いので特に注意が必要。真夏でもヨシズを覆って作られる。
品種は大別して大葉・中葉・小葉の三種類となるが関東では大葉が、関西では小葉が好まれている。大葉種は葉の欠刻が浅く、草丈も大きくなる。小葉種は分岐が多く直立型で葉の欠刻は深くかつ細かい。
春菊は香味野菜・有色野菜として優れている。一○○㌘当たりカルシウムは九○㍉㌘、鉄一・九㍉㌘、ビタミンでは、A効力一九○○国際単位、B2○・二一㍉㌘、C二一㍉㌘と多く、銅や亜鉛にも恵まれている。
カルシウムや食物繊維、ビタミンAが抜群に多く、コメや麦などに不足がちのアミノ酸やリジンも多い。カルシウムで見れば牛乳一○○㍉㌘よりも上で、ホウレン草の一・八倍、トマトの一二倍となる。
A効力で見れば、鶏レバー二三○○、バターの一九○○国際単位よりも高い。パセリ、にんじんに次ぐ高さで、ほぼ小松菜と同じ。トマトの一一倍、セロリの一六倍となる。しかも春菊はカリウムが多い。塩分を摂り過ぎると高血圧の原因となるが、カリウムは塩分を取り去る効力もある。
このほか葉緑素も豊富で高アルカリ性食品である。血液の酸毒化を防ぎ、美容効果も高い。皮膚の粘膜の生理を健全にし若返り作用も期待される。
春菊の葉をちぎって叢いをかぐと芳香がある。周年作られるため価格の安い葉菜といえよう。消費のピークは秋から冬にかけてで、名前の示すように冬から春にかけてが旬。
色よくゆでるには、たっぷりの湯でさっとゆで、冷水に放つこと。料理は香気を生かして楽しむように。水炊き・すき焼き・ゴマ和え・浸し物・天ぷら・汁の実・炒め物などに。冬の鍋物の青味として欠かせないが、中国で有名な北京の初案〓羊肉(羊肉のしゃぶしゃぶ)でも人気者である。
香り野菜としての春菊は生産者にとっても作りやすい作物で採算性も良く、大都市近郊で生産量拡大をみせて価格も安値安定。
カルシウム・カリウム・ビタミン源として老化予防にも最適。愛用をお勧めする。