百歳への招待「長寿の源」食材を追う:あしたば茶
薬茶はいまブーム。しかし飲みやすくて価格の安いことが大切。手軽に作れることも重要。日常愛飲して養身益寿をはかり、元気な生活を楽しもう。
(食品評論家 太木光一)
あしたばはセリ科の多年草で、今日摘んでも明日にはもう芽が出るほど繁殖力が旺盛なことから「明日葉=あしたば」の名前が生まれた。日本の中南部の太平洋岸、大島や八丈島など伊豆七島をはじめ房総半島、紀伊半島の南部の海岸などに自生している海浜植物である。
一般作物の育ちにくい伊豆大島や八丈島でもよく育ち、昔から乳牛飼料として使われ、乳のよく出る草として知られていた。さらにヒトの健康にも良いということが次第に知られ、やがて長寿・回春の薬草として強壮作用のあることも判明してきた。
成分的に優れ、タンパク質・繊維が多く、カルシウム・鉄・ビタミンA・B2・Cなどに恵まれている。特にミネラルとビタミンでは緑黄野菜の王者といわれるホウレン草と比べても、食物繊維では二倍、カルシウム二割増、カロチン二割増と多い。最近では貧血に効果的といわれるB12の多いことも判明した。
現在、注目されているのは繊維の多いこと。野菜の中ではトップクラスで便秘・胆石・大腸ガン・ヘルニア・痔・肥満・糖尿病などの近代病に効果的といわれる。このためあしたば健康法の著述もみられるほどである。
食べ方もいろいろ。生葉のまま刻んで汁の実やスープの浮き実にする。おひたし・ゴマあえ・酢のものにする場合は、少し塩を加えた熱湯でゆでると色良く仕上がる。天ぷらやフライには低温にしてパリッと揚げるように。油いためにしてもよい。すき焼きや鍋物の青味にも向く。佃煮用には湯をくぐらせてから水にとり、冷ましてから細かく刻むこと。最近ではサラダや卵とじなどにも使われている。
特に望まれるのはあしたば茶。初夏から夏にかけて、生育盛りの若葉を摘みとり水洗いして水気を切る。ついで粗刻みして風通しの良いところで干す。葉を切ると鮮やかな黄色い汁が出ることが特徴で、この液にはフラボノイド系の成分が含まれており、これが毛細血管を丈夫にし血圧を降下させる作用がある。
さらに朝鮮人参や霊芝・ニンニクに含まれている有機ゲルマニウムも含有されているため、抗ガン性も期待されると注目されている。
あしたばは丈夫な植物であるから家庭の庭でも(プランターも可)育つ。日当たりがよく、適度の湿り気のあるところが望まれる。種苗店で種子を求めるのが容易。また苗を植えてもよい。種子を蒔く時は3月中旬が適している。
完全に乾燥したあしたば茶は湿気ないように密閉できる缶にいれて、冷暗所で保存するとよい。飲みやすい薬茶といえよう。食欲がなく高血圧ぎみの人に向いている。濃く煮出して飲むと便通を良くする。利尿効果も大きい。
特有の芳香が食欲を増進させるので、常用することが望まれる。一日に何回という制約はないが、飲む量は一回量として一○○ccぐらいが適量。二、三回飲んですぐ効果が現れるものではなく、飲み続けることが大切である。