長生きしたけりゃ高齢者に学ぶが一番 九州大学・藤野武彦助教授講演から

1996.01.10 4号 6面

「人生を百歳まで元気に導いてくれるリーダーは決して医学ではない。学ぶべき対象は長寿者と食品」‐‐日本食糧新聞社では先ごろ、九州大学の藤野武彦助教授を講師に招き、「百歳元気」をテーマとした講演を行った。心臓の専門医の権威でありながら、現代医学の専門医制度を大胆に否定。大事なのは日常生活とトータル医療だと説く、藤野氏の斬新な高説を一部紹介しよう。

◆現代病に勝つ法

現代の日本人に一番多い病気は「うつ病」です。日本人の置かれているすさまじいまでの時間のなさが、人間の脳を疲労状況の極限に達しさせています。

会社では社長、部長ならもちろん、たとえ平社員であっても家族を背負うという責任を持つ方であれば、誰もがなりうる状況で、その結果うつ病を招きます。症状は心臓がドキドキする、胃の調子が悪い、頭が重い、肩が凝るなどのため、その専門医を訪ねて行きます。

しかし、人間全体を見ることができる医者というのは、専門医にはならない。患者さんは薬をもらっても良くならず、専門医からは「気のせいです。運動してはどうですか」などといわれる。

けれども、「うつ状況」の時は頑張ることは厳禁です。自分にとって気持ちの良いことだけをしたり考えたりして、悲しい時は悲しいままの気持ちでいることが大切です。また、周りの人も「頑張れ」などと励ましてはいけません。逆効果になります。

うつ病はがんの最大の原因ともいえます。五年から一〇年の間に医学が断言するでしょう。ストレスに負けず自己治療ができ、うつ状況から早く立ち直ることのできる人が社会的なリーダーとして生き残るといえます。

◆「医学」に頼るな

医学と医療は別のものです。医学は医療という世界のなかで氷山の一角を担っているに過ぎません。医学は数百年の歴史しかないですが、医療は人類始まって以来のつきあいです。医療の出発点は巫女(みこ)さんであり、そして内科医です。

現在の日本は専門医制度が進行していて、多くの方々は専門医で治療を受けることを希望されます。しかしこの考えには問題もあります。私は心臓の専門医ですが皆さんが私を評価するとき心臓のことしかわからない医者だと評価すべきです。医学は心臓という臓器自体がどのような状況であるかを伝えることはできます。しかし現代の医学では、人間の身体全体の健康について本当に正しい診断をすることはできないといえます。

東洋医学、中国医学は、病いを未然に防ぐという概念を持っていますから近代医学より少し進歩している。病気になってから治すのではなく、病気を未然に防ぎ、より健康になることを考えることが大切です。

何よりも健康については百歳で元気な方から学ぶのが正しい。長寿の方は自ら学んできた。決して医者やテキストからは学んでいません。

◆黒酢を飲むと…

私の専門である心臓血管系の病気では「食品」が非常に重要となります。食品が人をいかに生き生きさせるかの研究を続けるなかで、私は日本の伝統的な食品であるお酢が有効であることを発見しました。ここで紹介する人体に有効なお酢とは、鹿児島県で三〇〇年近く前から中国渡来の酢として製造されている黒酢です。

黒酢を飲むだけで得られる効果は、コレステロール値が薬を飲むのと同じように下がるということです。同様に血圧や糖尿病の方の血糖値も下げる効果がありました。

さらに最も注目すべきことは血液をサラサラにすることです。血管の中を血液が流れていくときに血液がドロドロしていたら詰まりやすく、血管自体の動脈硬化につながります。

私の患者さんの場合、黒酢を飲む前と飲んだ後では一週間で血液はサラサラになり始めました。サラサラになることで手のしびれがとれたり、咳が止まったり、あるいは狭心症の症状がとれたりと、様々な自覚症状が治るのです。

現在も心臓血管系の病気で、血管を何とかしてしなやかにしようと考え、暴力的に風船を入れて広げるという治療が行なわれています。薬においてもコレステロールを下げることはできます。しかし血液をサラサラにするのは食品である黒酢だけだといえるでしょう。

◆ENネットワーク

昨年11月1日に福岡にレオロジー食品機能研究所が設立されました。この研究所は、「食品がいかに人を健康にするか」という研究をリードすることになるでしょう。

また私はEN(えん)ネットワークということを提唱しています。

ENには三つの意味があり、その一番目は「縁」。縁で結ばれない限り何ごともうまくいきません。二番目に「円管」の「円」。つまり丸い円ですが、一つの完結した世界を映し出さなければダメです。三番目には、お金の「円」です。これからの時代は経済効果を持たないとうまく行きません。

個々のものはENネットワークを結び、組織論をしっかり持つことによって一つの業を興すことができます。まさに夢を現実にすることができるのです。

▼藤野武彦助教授のプロフィル

▽藤野武彦(ふじの・たけひこ)氏=九州大学健康科学センター助教授。心臓の専門医で、心臓・血管系の基礎的・臨床的研究に活躍中。「食品が人をいかに生き生きさせるか」をテーマに、医学と農学をドッキングさせた研究を続けている。

著書に「マンマシーンインターフェイス」(朝倉書店)、「環境と人」(井上書院)、「ウィグル‐その人々と文化」(朝日新聞社)など。

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