院外給食など激変する医療関連サービス 厚生省の規制に風穴開けるか

1996.01.10 4号 9面

様々な規制緩和が叫ばれる中で、最も頑固で風穴を開けるのが難しいとみられるのが厚生省監督下の医療ジャンル。とはいえ、近況は年々上昇する国民医療費の圧縮から緊急な対応に迫られている。今年4月から薬価引下げが実施されるが、同時に病院の経営費削減から院外給食制度導入も始まる。これら一連の動きに合わせた民間業者の進出がみられるが、高齢化社会とそれを取り巻くサービスが食をベースに確実に変化しつつある。

民間ベースの在宅ケア・サービス事業が新しいビジネスとして注目されだしたのは一九八九年のゴールドプラン(高齢者保健福祉推進一〇カ年戦略)以降であり、ここで法令の改正、新制度の導入、新制度の計画・推進が次々と提案された。新風と感じられたのは「民間委託が可能なサービスはできる限り委託していこう」という方向が出され、ここに食事、入浴、在宅介護、安否確認など新しい民間事業が進出してきた。

病院給食だけに絞ってもすでに一兆三〇〇〇億円のマーケットがあるが、実際に高齢生活者が望む「医療関連サービス」として捉えれば、その幅はあまりにも広い。食事も大病院に対して近辺のクリニックに通院する、慢性疾患患者向け食事から在宅介護者、六五歳以上で手・足が不自由とか何らかのヘルプが必要な高齢者向けなど実態は一律の“給食”といった枠には収まらない。

例えば、金型の有力商社である(株)ミスミ(本社=東京都江東区)のメディカル市場チームは医療用具材料の通信販売を主体に「食事の分野にも食材の供給を手がけていきたい」という。現状は全国のクリニックに向けて聴心器、手術用手袋、ガーゼなどの用具であり、「このセット販売は厚生省認可が今はとれないが単品ごとにセールスしている」(若林正明チームリーダー)。円高輸入品で低価格に設定し徐々に「医療行政の緩和に挑戦していく」。

食事に絞っては四年前に真空・窒素封入式を開発しロングライフ弁当を売り出した淡竹商事(本社工場=神奈川県横浜市)。同商品は産給、防衛庁等に導入、さらに一般市販向けはCVSのスリーエフに昨年(12月12日)から「ジューシーなチルド弁当」(平均小売値四七〇円)として販売するが、「今年4月以降の院外調理導入にロングライフ弁当で参入したい」(丹羽満雄社長)。同弁当は窒素封入、フィルム密閉で水温度帯(〇~五度)で流通、食べる時点で電子レンジを活用する。課題はフィルムの密閉が強くプラスチックカッターをつけたり、また漬物など冷温に対し、容器を電子レンジ時に切り離すようなオプション式にするなど、さらに生活者に便利な工夫が必要とみられる。

様々な規制緩和が叫ばれる中で、最も頑固で風穴を開けるのが難しいとみられるのが厚生省監督下の医療ジャンル。とはいえ、近況は年々上昇する国民医療費の圧縮から緊急な対応に迫られている。今年4月から薬価引下げが実施されるが、同時に病院の経営費削減から院外給食制度導入も始まる。これら一連の動きに合わせた民間業者の進出がみられるが、高齢化社会とそれを取り巻くサービスが食をベースに確実に変化しつつある。

総合的に医療周辺サービスの中で食事に取組むヘルシーライフサービス(株)(本社=東京都新宿区)。介護を医療専業サービスとし、在宅の食事に関して自治体の依託を受けて各家庭、クリニック(人工透析など通院者向け)に料理弁当(重箱入り、味噌汁つき)を届ける。

調理センターから〇・七五t、一・五t車の保温・保冷付き車で配送、各家庭に専用の小型、保温・保冷庫を無償で設置し巡回車が(一台当たり四〇件)昼と夕飯向けに宅配する。すでに都内なら五区、三市、他に横浜市、川崎市など八市、神戸の災害地区も依託を受け実施。

ここには食事の宅配の中での安否の確認があり、食事代は一食=一〇五〇円。これが高いか、適正か、となるが、個人負担は四〇〇円。公費負担額が六五〇円(国庫補助三二五円、自治体負担三二五円)となる。

これも直接宅配とボランティアの拠点(区の公民館など)から各戸に届く二通りで推進している。

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