ニュージーランドのヘルシー料理「ハンギ」をご存知? 素材の味生かした蒸焼料理

1996.01.10 4号 16面

南半球のニュージーランドは夏真っ盛り。

今日はこの地に古くから伝わる「ハンギ」という料理法をご紹介しましょう。

ニュージーランドは世界中の美しい風景が箱庭のように散りばめられた国、といわれます。

スイスのアルプスのような壮観な山なみ、太古の姿を今なおとどめる原生林、蒸気を噴き出す火山地帯と温泉、緑に縁どられた長い長い海岸線、どこまでも続く緑の丘陵に草をはむ羊の群れ。壮大な大自然の風景が次から次へと繰り広げられます。

こうした自然の豊かなニュジーランドは、海の幸にも山の幸にも恵まれています。

ラムや牛肉や鹿肉、酪農王国にふさわしい乳製品の数々、カキやロブスター、伊勢海老などの海産物、そして太陽をいっぱい浴びた果物や野菜などが豊富です。まさに「世界の農園」と言われる由縁でしょう。

英国の入植の歴史をもつこの国は、いたるところに英国の田園都市風景がみられます。

一般に家庭料理も英国風ですが、この国独特の「ハンギ」という料理法があります。

もともとニュージーランドは、今から一〇〇〇年以上前に、中部太平洋から後にマオリ族として知られる遊牧民のポリネシア人が移住してできた国です。当時は飛べない鳥モアを食糧にしていたようです。

「ハンギ」料理はまず地面に穴を掘り、その中に枯枝の束を積み上げその上に大きな石を置きます。枯れ枝に火をつけ石を充分に焼き、水を注いで灰をとばし蒸気を充満させます。石の上に大きな葉にくるんだ野菜や肉を置き石の熱と蒸気を利用して蒸し焼きにする、というのが伝統的なやりかたのようです。

「青く広がった空の下、楽しい夏のひとときを皆でハンギの料理を楽しみましょう」と料理の本にもあるように、ニュージーランドではハンギ料理はたいへんポピュラーです。アングロサクソン系の人々が主流でマオリ族は人口の約一割強に過ぎませんが、マオリの伝統や文化がこの地にはしっかり生きています。

大勢のお客さまのもてなしや祝いごとに、そして家族の集まりなどにこのハンギの料理はよくつくられます。

誰でも利用できるハンギ(大地の釜)が広場などには常設されていますし、簡単に穴を掘って石と枯木を集めて即席のハンギを手軽につくったりします。まるのままじゃがいもやさつまいも、切ったかぼちゃなどの野菜類とラムや羊の肉、豚肉や鶏肉、魚などを布袋に詰めるか、あるいはワイヤー・バスケットに肉類を下に野菜類を上に並べ焼いた石の上に乗せ、布や葉で覆って二時間ほど蒸焼きにする、というやりかたが一般的なようです。温泉のあるところは地熱を利用しています。

蒸すことによって余分な脂肪が落ち、野菜の持つ風味に肉のうま味がしみこむ。おいしくしかもヘルシーな調理法だと思いました。

(料理研究家・中村典子)

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