踊るキノコの不思議・神秘マイタケの世界

1999.08.10 47号 16面

マイタケ(舞茸、学名=グリフォーラ・フロンドウザ)は、おもに日本の東北地方の山に自生するサルノコシカケ科のキノコの一種。ミズナラ・ブナ・シイなどのブナ科の木の根元周辺に育ち、収穫の時期は9~10月に限定されていたため、つい一〇年ほど前まではごく一部の人々しか味わえない貴重なものだった。

ところがこんにちではバイオファームでの人工栽培技術の成功により、一年を通じてどこでも安価に入手できるようになった。時を同じくしてこのキノコのがん・エイズ・高血圧・糖尿病などに対する驚くべき薬用効果が次々と報告されている。がん治療の現場での使用は、現代科学の先端を走っているイメージの強いアメリカにおいてまずスタート、日本においても次々に臨床の成功データが報告されている。

マイタケの名前の由来には二つの説がある。一つは、その形が蝶や天女の舞う姿を連想させるため、という説。もう一つはその昔、地元の大名がこのキノコを幕府に献上したところ、大変に喜ばれ再度の所望があった。しかし簡単には手に入らないため村人に銀の褒美付きで探させた。銀を手にした村人は喜び舞ったとさ、という説からだ。大名がそんなにもこのキノコを所望したのはおそらく、数々の薬効が認められたから、と現代の科学分析をもってみれば考えられる。

量産が約束されたところでその薬用効果解明が核心に迫ってきたこの不思議さ。マイタケはもしかしたら二〇世紀末に生きる私たちに託された神秘のクスリなのかもしれない。

(14~15面に続く)

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