今また注目 納豆を食べよう 無臭、栄養添加など新顔も続々

1996.02.10 5号 12面

納豆は日本人にとって最も身近な伝統ある自然食品であり、古くから高たんぱく食品として知られている。また脳卒中、心筋梗塞、老化予防に効果がある優れた健康食品だ。

今日納豆と呼んでいるのは一般的には糸引き納豆のことで、原料大豆を蒸煮し、八〇~九〇℃まで冷却。その後、納豆菌を接種し、約四〇℃に保持発酵(一六~一八時間)させてつくる。納豆菌の胞子は耐熱性が強いため、高温となる製造過程の中でも死滅しない(一般微生物は死滅する)。

●豊富なたんぱく質

納豆の栄養については、まず原料である大豆そのものが良質のたんぱく質を豊富に含むことから栄養価が高い。坑がん作用を持つといわれるセレンも含んでいる。また、ゆでた大豆に比べて六倍以上のビタミンB( 2)や、大豆に含まれていないビタミンB( 12)も納豆は含有している。さらに、最近骨粗鬆症の予防に効果があることが発表されたビタミンKも含む。他にもビタミンEや鉄分など多様な栄養分を含んでいる。

一方、肉類に多く含まれているコレステロールは納豆には含まれておらず、食物繊維が多く、大豆のたんぱく質や脂肪が納豆菌によって分解されているため消化吸収率もよい。

このように納豆は身体にいいのだが、独得の臭い(発酵臭)があるためうけつけない人もいる。外国人は納豆の有益性を認めてもいざ食べるとなると拒否反応を起こす人が多い。日本人でも関西地方を中心に納豆を食べる習慣がなかったこともあり、納豆の臭いに抵抗を持つ人がいる。このためメーカーも無臭納豆の製品化を実現し普及に力を入れてきたが、現在でも人気のある食品とは言い難く、納豆を食べることは習慣化されていない。

近年、納豆が注目されたのは、須見洋行倉敷芸科大教授が昭和63年に「血栓溶解酵素ナットウキナーゼ」を発表し、脳卒中や心筋梗塞の予防・治療に効果があることが報道されたことによる。この結果、納豆の人気が高まり消費も大きく伸びた。急速に関西に普及しだしたのもこの頃である。

また昨年は納豆に多く含まれているビタミンKに骨粗鬆症の予防効果があることが発表され、再び注目された。こうした現象によってか、今日、とくに病院や老人ホームが積極的に納豆を献立に取り入れている。

●熱いご飯に、が一番

一方、メーカーもオーソドックスな納豆以外に、工夫をこらした商品を開発、販売している。

前述した無臭納豆以外にも、カルシウム、鉄分、DHAなどを添加したものや有機栽培、無農薬大豆も使用したものなど、やはりヘルシーさをアピールした開発が多いようだが、他にも乾燥加工した納豆やスティック、チューブに入れたペースト状のもの(手巻ずしのネタやピザなどに手軽に使うことができる)、納豆ドリンクなど変わった製品もある。こうした製品を料理に活用すれば、納豆の苦手な人も食べやすくなるだろう。

とはいっても、やはり納豆は生のものを熱いご飯といっしょに食べるのが栄養上最も望ましい。戦後食事の洋風化が進み朝食で納豆を食べる機会は少なくなったが、食生活を見直すうえで納豆が重要な食品であることには間違いない。

●ワーフェリン服用中はご注意を!

ワーフェリンはビタミンKのはたらきを抑え、血液が凝固するのを防ぐ薬で脳塞栓や心筋梗塞の予防薬として投与される。

ビタミンKを多くとればとるほど薬の効果が弱まってしまうので、納豆菌によってビタミンK(K2)が多量に合成される納豆はワーフェリンを投与されている人に限っては食べない方が無難だ。

●納豆と豆腐は 漢字間違いか?

「豆腐」と「納豆」の不思議な関係を紹介しよう。この両者とも日本古来からある食品と思われがちだが、実際には中国からの輸入品である。もちろん別ルートで輸入されたが時は同じ奈良時代。そして原料も同じ大豆を使用、というように共通点が多い。改めて二つの食品の漢字を見てみると、アレ?…豆が腐ると書く豆腐。しかし現実は豆が腐っているのは納豆である。

また豆を納めると書く納豆。これも現実と照らし合すと豆が箱に納まっているのは豆腐である。もしや漢字を間違えたまま輸入されたのでは?……興味深いので調べてみた。

それで分かったことには、豆腐のルーツは「乳腐」という乳加工品にあった。しかし中国では牧畜をあまり行なわなかったため原料の乳に不自由し、大豆を乳の代用品として使用した。ここで豆腐の誕生となる。語源は「乳腐」の「乳」が原料の変更に伴い「豆」に変更されただけで「豆腐」となったというわけだ。

一方納豆は、塩辛納豆がはじまりとされ寺納豆、唐納豆と言われ禅宗寺院の精進の菜として珍重された。現在私たちの食生活で親しまれている糸引き納豆はわが国独自のものだとされるが、その起源は不明である。語源は僧家の庖厨(ほうちゅう)を納所(なっしょ)と呼び、その納所で作られた「納所豆」の意味だとされる。

豆腐と納豆、漢字を間違えたまま輸入されたという説は信ぴょう性に欠けるようだ。

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