ストレスの正体とは何か?:適度な刺激は生体に不可欠
「ストレスで最近、夜眠れない」「ストレスで胃に穴が開きそうだ」、こんな言葉が日常会話になっている現代人の私たち。しかしでは、「ストレスとは何か」という質問に正確に答えられる人は意外と少ないのでないか。私たちを悩ますストレスとは一体どんな現象なのか。対応策はあるのか。今回のストレス特集では西洋医学、東洋医学の両方の権威の意見から、その正体に迫ってみた。
「健康管理のうえで、いま一番注意しなくてはいけないのはストレス対策といっていいくらいです。特に高齢者においてはストレスが生命を守る機構、生体防御の崩壊を招く第一の原因となる」。野本所長はこう断言する。
問題はそのストレスの中身だ。野本所長は著書『免疫力』の中でも強調しているが、心身に何らかの負荷がかかることすべてがストレスになるのか、心身に狂いを生じさせるのか、ということに疑問を呈している。その中身の違いや刺激の強さの度合い、さらに連続的か断続的かという差で、生体の反応が違ってくるからだ。
「適度な刺激は心身を活性化させるプラスの要素として作用します。生体防御もそのつど戦闘状態に入るから、いざという時の格好の訓練になる。刺激が全くないと生体防御が眠ってしまうから、いざという時に対応ができない身体になってしまう。問題となるのは毎日毎日同じ刺激が繰り返された結果、心身のバランスを崩すマイナス要素として作用することで、これがすなわちストレスです。恋愛でも借金でもみんなそうでしょう。ちょうど良ければ人生の良い刺激だが、過度の繰り返しとなると取り返しのつかない結果になる」。
一つ一つはささいな刺激でも、慢性病のように連続的な刺激が続くと、ダメージが積み重なる可能性があるのだという。こんな実験もあるそうだ。「動けないようにしたサルの頭部に水滴をたらし続けると、サルはそのストレスに耐えかねて胃潰瘍になってしまう。一回や二回なら頭に水滴がかかってもほとんど気にならないのに。似たような実験はラットでも認められている」。
刺激の原因が精神的なものであれ、外部からの攻撃であれ、強くて連続的な刺激は生体の恒常性低下の原因になる。「加齢に伴う問題は生体防御の機能低下そのものでなく、むしろストレスからの回復が遅れること。だからそこに至る前に、日々持続的なストレスを断続的なストレスに適宜切り替えていく習慣が何よりポイントです。ストレスのない人生なんてないんです。とにかく同じ結果が起きないように心がけて下さい」。
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