だから素敵! あの人のヘルシートーク:フリーキャスター・木場弘子さん

2000.05.10 56号 4面

テレビという注目度の高い業界で局アナという立場から初の女性スポーツキャスターとして看板番組を担当してきた木場弘子さん。当時はまだ珍しかった帰国子女。プロ野球投手(阪神・与田剛士選手)との結婚。お子さんにも恵まれ誰もがうらやむ花形人生。でも努力なしでは得られるはずがない。今回はご主人の与田選手のことも含めてじっくりとお話を伺った。

アナウンサーというよりはプロデューサーになりたかったんですよ。中学生の時に添削指導の進路相談欄に「テレビ局のプロデューサーにはどうしたらなれるんですか?」なんて聞いてましたから。漠然とだけれどテレビの仕事には憧れていました。

その憧れっていうのもね、私が帰国子女だということに要因があるんです。小学二年生の時にノルウェーに住んでいたんですが、当時はまだ日本人学校もないから地元の学校へ行くでしょう。でも授業が分からない。遅れるから帰国してからもやっぱり授業についていけなくて。多少いじめにも合いましたし。

でもね、いじめの一番の理由は日本の流行を知らなかったから。例えば、ちあきなおみさんの「喝采」の「あれは三年前……」っていうのとか、とても流行っていたでしょう。それを知らなくて友だちと話が合わなくてね。だから早く流行に追いつこうとか、言葉を学ぼうとか。そのための手段がテレビだったんです。帰国してからはテレビが第一の子供でした。なのに親はテレビの見過ぎは目に悪いから一時間だけにしなさいって言うし。仕方がないからドアの隙間からこっそり見てました。自分にこれだけ影響を与えて、勉強になったテレビ。小学校の高学年には、こういう世界で仕事がしたいって願望がありましたね。

TBSに入社して半年後にはスポーツ番組に配属されました。局がちょうどスポーツキャスターに女性を起用しようって時期で。他社でもまだ女性は起用されていなかったんです。私は報道志望でしたが、スポーツも広い意味で報道ですし、アクティブに現場に行けそうだったので喜んでやらせていただきました。

ニュースというのはアナウンサーが原稿を読むのにつれて映像が切り替わるんですが、スポーツニュースは逆なんです。映像が先でそれに合わせて原稿を読む。だから読む私が一呼吸でも遅れるとまったくの台無しになってしまう。たとえばラグビーのニュースなら、真冬のスポーツでしょう。試合前の三時間くらいは練習風景を撮って、試合の二時間を撮って、帰ってきてから編集、原稿書き。大勢のスタッフがかかわって、中にはすっごく寒い中での仕事もあるし。しかも放映はたったの一分だったり。その一分も一秒一秒のつなぎでしょう。すべてプロフェッショナルの方が精魂込めてやって下さってるんです。そして一連の仕事の最後に私が読む。だから間違いは許されない、そう思っていました。そういう意味ではプレッシャーのかかる仕事でした。全行程を一緒に作ることが多いので拘束時間も長いけれど、とても勉強になる仕事をさせてもらったと思います。

局に勤めている時は寝る時間以外、自分の時間はほとんどない状態でしたね。それでも食事だけはできるだけ自分で作っていました。もともと外食があまり好きではないから苦にならないし。実はお弁当も作って持って行ってたんです。今日もお弁当持参ですよ。局で出るお弁当は揚げ物とか肉類が多いんです。自分で作るお弁当なら野菜も入るし。私の母は食べ物にバランスを重んじる人でしたから、昨日はお肉料理だったから今日は魚料理とかね。子供の頃から恵まれた食生活でした。味が濃いのもダメだし、お酒も飲めない。

家族の食事も夫がスポーツ選手ということもあって気を遣ってます。いま主人は阪神タイガースの独身寮にいますから食事の心配はしなくていいんですけれどね。夫も私も三〇歳を過ぎてからは食事量を落とすようにしています。運動量も減るし、新陳代謝も悪くなるから。カロリーコントロールは気にしています。

仕事をしている分、家にいる時間は子供と一緒にいたいと思います。子供と一緒に遊んでいる時間がリラックスする自分の時間になるのかな。私は息子と毎日一緒に買い物に出かけるんです。その日食べる分はその日に買う。買いだめが嫌いなんですよ。たまに仕事があって行けない日があるとお漬け物屋さんに「昨日はどうしたの?」なんて言われるぐらい。魚屋さんには「今日はイサキがおいしいよ」とか言われたり。コミュニケーションを通じてその日買う物を決めてます。毎日買う方が新鮮ですしね。もう日課ですね。

買い物中は子供は和菓子屋さんで待っているんです。お店の中でスタンプ押しの手伝いなんかをしながら楽しく過ごしてますよ。みなさんが本当にいい方で、下町って感じがしますよね。

あとはいま半身浴に凝っています。お風呂に一時間は入っているかな。子供も一緒なんですけれどね。下半身だけお湯に浸かって、ぬるくなってきたらお湯をたして。次の仕事の資料など持って入るんです。お子さんがいらっしゃる方にはお勧めですよ。一緒にいられるし、かといって普通にお風呂に長く入ってから後だと資料を読んだりする時間が取れなくなるし。でもこうすれば早く寝れるでしょう。一石二鳥なんです。最初はダイエットが目的で始めたんですが、二キロぐらい痩せました。体脂肪も四%ぐらい落ちたし。だからいまは香りを入れたりしながらゆっくり入る半身浴がとてもお気に入りの時間です。

夫が戦力外通告されてから、リストラされた方から手紙をいただくことがあるんです。「与田さんの姿を見ていて恥ずかしいと思いました」って内容だったり。でも私も主人も自分が仕事をすることで誰か他の人に影響を与えようとか、賛同をもらおうとかという気持ちがあってやっていることではないですから。この間、主人がテレビで言っておりましたが「自分は幸せです。やりたい仕事をやっているから。一%でも可能性が残っている限りはしがみついてでもやっていたい」って。

他にはリストラされて自殺したいとか、そういう手紙ももらうけれど。好きではない仕事を生活のためにしなければいけないなら相当につらいことですよね。私たちは好きな仕事をするために頑張っていられるから、夫の故障とかつらいことはあるけれど幸せです。

私も結婚を機にTBSは辞めたけれど「仕事はずっと続けていきたい。大舞台から小舞台に移っても別に構わない、いつか機会があればまたテレビの仕事に戻ってこられたらなぁ」って思っていましたね。そして運良く戻れたので、幸せですね。でもね、好きな仕事とはいえ夫の成績が悪いと世間にすぐ分かってしまいますから、生活のために私が働いているとか、出稼ぎに出ているとか言われちゃうとね。気にしだすとマイナス思考で悪い方へ考えて悪循環だから。自分の好きな仕事を諦めるのはイヤだしね。

やっぱり一家の大黒柱が楽しく仕事をして初めて家族みんな楽しく生きていけるから、夫の復活が与田家にとって一番だな、と思います。

こっている料理があって「粗食のすすめ(発行=東洋経済新聞社)」って料理本があるんですけれど、その中の気に入ったメニューを順々に作っているんです。もう半分くらいは作ったかな。息子も「これおいしいよ、ママ」って言ってくれるし、おいしくないとそれなりの反応なんです。結構厳しいんですよね。食にとても興味があるみたいで、一緒に買い物に行くから買ってきたものが食卓にないと「ママ、今日買ったアレどうしたの?」って聞いてきたり。一緒に洗い物をしたり、野菜を切ったりするのが好きなんですよね。マイエプロンも持っていますよ。一緒に買い物、一緒に料理をしているうちに興味を持ったのかな。特別な自分の時間がなくても普段の生活の中でリラックスができる時間があるからいい感じですよ。

◆プロフィル

1964年横浜生まれ。千葉大学教育学部卒。87年TBS入社、「筑紫哲也 ニュース23」など多数のスポーツ番組を担当。女性スポーツキャスターの草分け的存在。現在は報道専門チャンネル、朝日ニュースター(衛星放送)「ニュースジョッキー」火曜日のメーンキャスターを務める。

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