自由時間術:絵が描きたくてたまらない、うまくなる3つの法則
「わー、きれい」「あぁ、おいしい」。旅先で味わった感動を絵で残せたら、どんなに楽しいだろう。「初めての人でも、描きたくてたまらない気持ちさえあれば絵は描ける」という言葉にひかれ、人気イラストレーターの永沢まことさんの、スケッチ教室に参加した。
師曰く、絵がうまくなる三つの法則は、(1)何を描く時でも実物を見て描くこと、(2)何を描く時でも線で形をとること、(3)色を塗る時は理性を捨て心を開くこと‐‐これが鉄則だという。
「今日は、この水仙の花をスケッチしてみましょう。鉛筆でなく、ペンで描いていきます。では、どうぞ」。
どうぞったって、どうしよ? 自慢じゃないが私は、学生時代美術の成績は五段階評価の「二」。筋金入りのエンチ(オンチの“絵”版)なのだ。うーん…ペンを持ったまま五分が経った。
「ひょっとしてうまく描いてやろうなんて思っていませんか? 幼い頃のいたずら書きのように、心を自由に、何も狙わず、迷ったらとにかく見る。答えは実物を見ることにありますよ」。
○△□…ひいひいふう、描けた。「ハハこれはこれは、内側の花びらを大きく描き過ぎですねぇ。ラッパ水仙というより、バケツ水仙だ」。あら、たしかに。「でも、実物を見て描いているので、線が一本一本イキイキしていて、いいですね」。ああ、自分の絵を人に見せるのはやっぱり恥ずかしい。でも同時に、自分をさらけ出した開放感が心地よい。
「見ないで描いた線はすぐ分かる。想像や真似からは、ありきたりなものしか生まれません。自分の絵を描くということは、実物という原料を使ってものを作り出すということ。どんなものでも、原料から作るのは面倒ですが、自分の感覚で、まったく新しいものを作り出すことに、絵を描く意味があると私は思います」
なるほど、とうなずきながら、私の手はもう止まらない。描くのが楽しくて嬉しくて。あれよあれよのうちに四枚も描けた。「そうやってスケッチをしていると、一日描いても拾いきれないほど、線は見つかります。自分には見えない線、自分にしか見えてこない線に気づくでしょう。そしてスケッチブックを持って旅に出たら、いままでの自分に見えてなかったものがきっと見えてくるはず」。