食医冠&林 第7回 秋繰の薬膳
秋の空気の乾燥を中医学では「秋燥」と言います。秋燥という邪気は肺を傷つけやすい。なぜかというと肺は柔かい臓器で、瑞々しい状態が好き、乾燥が苦手だからです。鼻は肺の外窮で、咽は肺気の通り道です。秋燥で肺を傷めると、まず鼻の乾燥と喉のかゆみ、それからカラ咳などが起こります。
肺の状態は皮膚に表れるので、肺の水分が奪われると、肌のトラブルを引き起こします。
歳を取ると体内の水分がますます足りなくなります。そのため年配の人は乾燥性皮膚掻痒症、間質性肺炎、気管支炎、乾燥性腟炎などによく罹るのです。
秋の季節に、乾燥から身体と肌を守るためには、身体に水分を補充することが基本です。潤すために外用のクリームを塗ったり、のど飴をなめたりするのは悪いことではありませんが、それは一時的効果にしかなりません。肌の本当の美しさと元気は、決してクリームの外用だけで作られるものではありません。身体の中の状態が肌の状態などを大きく左右しているのです。
辛いものは発汗を促し、身体、特に肌の水分を奪いやすいので、秋口になったら取り過ぎには注意しましょう。身体を潤す薬膳で秋燥から身体を守りましょう。
1肌乾燥タイプ
オシャレな人でも肌がカサカサして小じわが出ていたら興ざめです。肌が乾燥すると粉をふいたようになることもあります。身体の瑞々しさが失われると、頭皮もフケがたくさん出るようになります。肩のあたりにフケが積もっているのは目ざわりです。こうなると手も荒れて亀裂が生じたり、いわゆる主婦湿疹などが起こります。肌の乾燥を潤すメニューやお茶を紹介します。
○メニューとしては「百合梨羹」
○健康食品としては「紅沙棘」
○中成薬としては「婦宝当帰膏」
百合はユリ科植物ハカタユリの鱗茎。肌を潤して、まさしく百合のように綺麗にする。アルカロイド、タンパク質などを含み、肌の新陳代謝を促進する。梨もハチミツも肌を瑞々しくさせます。
沙棘(サージ)は中国西南内陸で海抜二〇〇〇~三〇〇〇メートルの山奥の清流沿いに群生する野生植物です。紅沙棘は沙棘果肉から抽出したオイル。活性酸素を抑制し、肌を乾燥から守ってくれます。紅沙棘はビタミンEやβ‐カロチンを豊富に含み、肌を潤す。「生命の実」と呼ばれる紅沙棘から自然の力を取り入れて、健康な肌を作りましょう。
婦宝当帰膏は「婦人の宝」という名前の通り、肌のカサカサ、フケなどによく効きます。
2肺燥タイプ
喉が乾く、口唇も乾燥、カラ咳が出る、無痰あるいは少痰、痰を出しにくい(ひどい場合には痰の中に血が混ざる)、鼻血も出る‐‐などの症状が特徴です。
肺燥によるカラ咳は繰り返し、いくら抗生剤、咳止め剤を使っても、なかなか治らないというケースが多い。肺の乾燥を潤せば、カラ咳は自然に止まってきます。
○メニューとしては「ナマコ麦門冬ナガイモ炒め(海参麦門冬炒山薬)」
○健康食品としては「西洋人参茶」
○中成薬としては「潤肺糖漿」「八仙丸」
「ナマコ麦門冬ナガイモ炒め」のナマコは中華で海参と呼ばれ、肺と腎を潤します。高級な中華料理では海参をよく用います。麦門冬はユリ科植物ジャノヒゲの塊根。麦門冬は喉と唇の乾燥を抑え、肺燥によるカラ咳に良い効果を呈します。山薬はヤマイモ科植物ナガイモの根茎。山薬は肺脾腎を益し、肺痰咳、息切れによく効き、乾燥性肺疾患の改善を促進します。山薬は多種のアミノ酸、タンニンなどを含有しています。
麦門冬と山薬を中心として配合した「潤肺糖漿」と「八仙丸」は、肺燥をよく救います。潤肺糖漿は甘味で、喉と肺を潤し、口渇、喉のいがらっぽさ、カラ咳を治します。八仙丸は虚弱体質を改善します。
食医・李時珍国医研究所所長 寇華勝(こう・かしょう)
百合梨羹
<材料・4人分>
・百合…………………12グラム
・梨………1コ約200グラム
・モチ米…………200グラム
・ハチミツ………150グラム
・水……………………2リットル
<作り方>
(1)百合を水で洗っておき、軟かくしてから細く切る。
(2)梨を洗い皮をむいて小さく切っておく。
(3)モチ米を水一リットルに入れミキサーでモチ米汁を作って濾過し、カスを除く。
(4)鍋に水一リットルを入れハチミツを加え溶かす。細く切った百合を加えてから、モチ米汁をゆっくり入れる。最後に梨を加える。
ナマコ麦門冬ナガイモ炒め(海参麦門冬炒山薬)
<材料・4人分>
・海参……………200グラム
・長山芋…………400グラム
・麦門冬………………12グラム
・シイタケ……………50グラム
・塩……………………12グラム
・醤油……………大さじ4
・片栗粉…………大さじ2
・サラダ油……………適量
・食用酒…………大さじ2
<作り方>
(1)長山芋を洗い斜めに切っておく。麦門冬を洗い細かく切る。
(2)海参(ナマコ)を細長く切り、容器に入れてから醤油・片栗粉、食用酒を適量加えてよく混ぜ合わせる。
(3)シイタケを洗っておく。
(4)サラダ油を中華鍋に適量に入れて強火にかけ、(2)を入れて強水でよく炒める。
(5)(1)(3)と塩、醤油、食用酒を加え、炒めてから皿にあげる。
食医・林建豫(りん・けんよ)=寇華勝氏夫人











