ヘルシー企業の顔:石井食品代表取締役社長・石井健太郎氏

2000.09.10 60号 12面

「イ・シ・イのおべんとクン、ミートボール♪」。お弁当箱を開け、つい歌がでる。発売30周年を迎えた「チキンハンバーグ」をはじめ、お弁当に便利な「こわけちゃん」など時代、時代の消費者の気持ちに添った新価値商品を生み続けている石井食品。さらに今年8月からは“二次元データコード”という食品界初の画期的な品質管理システムを導入した石井健太郎社長にヘルシー企業の指針を聞いた。

「いまボクの箸につままれているこのゴボウは、どこの畑でいつ収穫され、どう運ばれて、誰が調理したんだろう?」と考えたことはありませんか。現代日本の消費者の目の前には、大きなブラックボックスがあります。生産現場と流通、そこでいったい何が行われているのかが見えにくい。消費者の安全と信頼のためには、そのブラックボックスを開示する必要があるのです。

モノを作る側は、どうしても効率を重視してしまいます。野菜なら農薬を、鳥肉なら抗生物質を使って手間をかけずに育てよう、食品メーカーも添加物を使って無駄なく作ろうという動きが主流です。

ところが最近、無農薬栽培、あるいは残存の心配がない添加物を使う生産者が増えています。そして私たち食品メーカーは何ができるか。

『ブラックボックスを取り除こう』。つまり、私たちがしっかりと情報を流して最終的なユーザーの方に安心して食べていただこうと考えたのです」。

同社では8月から全商品に「品質保証番号」がプリントされるようになった。この番号で問い合わせれば、商品に使われているすべての食材の素性や、加工の経緯が明らかになる画期的な品質管理システムだ。

「当社では三年前から、無添加のものづくりに取り組んでいます。そうすると畑の段階から無農薬で栽培・管理された、とれたての素材が必要になります。たとえばゴボウでしたら、当社では収穫後四〇日を過ぎたものは使いません。

しかし一年中おいしいきんぴらを提供するためには、一年中新鮮なゴボウをコンスタントに手に入れなければなりません。

日本各地のゴボウの旬が過ぎたら、外国のどこかがゴボウの旬を迎えているはず、と情報を海外からも広く集め、現地へ行って当社の規定に沿ったやり方で栽培・保管されたものを仕入れるようにしています。例えば中国産のゴボウでも、どういう肥料をいつまいたか、収穫、温度・湿度管理法まで把握しています。原料に徹底してこだわるためには、たった一つの素材に対しても膨大な情報を管理する必要があるのです」。

このように厳選した素材を、それもチベットでとれたての松茸を、消費者にプレゼントするキャンペーンが今春実施された。応募三〇万通の中から当選した全国各地の一〇〇〇名のラッキーさんに、同社社員が直接手渡しで届けたという。

「『生まれて初めてナマの松茸を焼いて食べました!』という感動のお手紙をたくさんいただきました。また、お客様の喜ぶ顔を直接見た社員たちも、とても感動していました」。

松茸といえば「旬」。同社でも三年前までは松茸風の香料を添加していたが「オタクの松茸ご飯の素を使うと、三日間は炊飯器からそのにおいが消えない」という声を聞き、一念発起。香料など添加物をいっさい使わず、その時期とれたての松茸で作るようリニューアルしたという。いまも石井食品の社員は、旬の松茸を求め世界のどこかを歩き回っていることだろう。

「おコメのご飯弁当が一番のごちそうでした。戦後のモノのない時代に育ち、ふだんはイモやら大根、豆や麦のご飯ばかりでしたから。おコメの弁当に、五円のコロッケを買って、たっぷりソースをかけて食べるのが、中学生の私にはなんとも嬉しかったですね。

いま一番お気に入りは船橋(千葉)の東武百貨店にある当社お総菜店の『三五〇キロカロリーの玄米弁当』。毎日食べて、玄米食は健康に本当によいと実感しています。とくにダイエットに最適。今年私も決心して、二カ月で三・五キロ減量し、いまは医者のいう理想体重をキープしています。疲れず元気にやせられますよ。

「健康法といえば、ここ一〇年ほど続けている毎朝のストレッチ運動。朝5時半に起きて、三〇分ストレッチ運動のあと、三〇分間座禅をする、これが楽しみなんです。座禅はいいですよ。足を組んで座り、目をつぶってただ呼吸に集中する。簡単そうですが、呼吸を整えられるようになるのに五~六年かかりました。うまい人は一分間で吸って吐いてひと呼吸できるそうです。私はまだまだ三〇秒くらいです。ふーっと吐いて吸って、呼吸に集中。ストレッチと座禅の合わせて一時間、モノを考えないひとときを持つことが、私にとってとても貴重で楽しい時間なんです。

ストレスはたまりません。もちろん嫌なこと、憎らしい奴は気になりますよ。夜中寝ながらカリカリして、朝寝起きも悪くカリカリして、それを会社に持ち込む、という悪循環。それも朝の“考えないひととき”で、断ち切ることができる。大したことはないと思えるようになるんです。

もともと座禅を始めたきっかけは、鈴木大拙という人の書いた禅宗の本を読んでから。禅問答だけに、この本が実に難解でちっとも理解できない。でも、『禅の言葉は体験しろ』というのでこれは体験するしかない、と座禅を始めたんです。なんでも自分でやってみなくちゃ分からない、中に入ってこそ自分のモノになる、というのが禅の哲学なんですね。

『唯我独尊』という言葉がありますが、独尊というのはなにも勝手なことをするという意味ではなくて、『自分を尊ぶ』ということだそうです。自分が持っているモノはこうだよ、と胸を張るためには、体験し自分を作り上げることが一生のテーマだと思っています」。

プロフィル

(いしい・けんたろう) 昭和15年9月1日、千葉県出身。41年米国カリフォルニア大学食品加工部卒業。同年石井食品(株)入社。48年(株)イシイフード(現・石井食品九州(株))取締役に就任、52年イシイ産業(株)専務取締役などを経て、63年石井食品(株)・(株)イシイフード・(株)関西石井食品(現・石井食品関西(株))の代表取締役社長に就任、現在に至る。

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