ダインドクター食医・寇&林:第9回「冷えによる痛症の薬膳」
だんだん寒くなると内臓効能低下と血行障害などのトラブルから冷え性や疼痛を訴える人が現れます。四肢の痛み、シモヤケ、足の冷え、胸痛、腹痛などがよく見られます。季節に合わせた秋冬の薬膳を食べて、身体を中から温め、冷え性や痛みを自然に治していきましょう。冷えによる痛症に対する中医学の考え方
中医学では寒さを「寒邪」と呼びます。寒さは人間の身体にとって大敵なのです。寒邪には次の三つの特徴があります。
まず、「身体の全体を冷やす」。だから手足が冷え、下腹部が冷えるなどの症状が現れるのです。
次の特徴は、「縮まる」「ひきつる」などです。筋のひきつれやこわばりを引き起こします。しかも、気血の流れが停滞し、激しい痛みを引き起こします。特に痛みは動くと悪化します。
最後に、身体を弱らせる特徴を持ちます。倦怠感、元気が出ない、疲れ、足腰が冷たい、トイレが近い、尿が多くて薄いなどが現れます。
◇冷えによる痛みの養生
とにかく冷やさないように、身体を温めることを心がけましょう。スポーツなどで身体を動かし、健康にしていれば寒邪は入り込めないのです。冷たい飲み物は控えましょう。身体を締め付けるようなきつい下着、それから厚着も避けましょう。暖かい部屋から寒いところに移るときは、家の中でも気をつけましょう。暖房に頼り過ぎず、薬膳料理を食べ、エネルギーを取って、新陳代謝を活発化させて身体の中から元気をつけましょう。
◇冷えによる痛みに効く薬膳
一 四肢の痛みタイプ
手足は外に出ているので冷えやすい。シモヤケの痛みやかゆみは辛いものです。しかも一回症状が出ると次の年もなりやすいという悪循環を起こします。指関節、手首、肘、肩、腰、膝、足の関節が痛い。顔色も青白くなって、艶がなくなります。これに対しては身体を温め、四肢の寒邪を追い出します。
1、薬膳としては「当帰牛肉生姜湯」
2、健康食品としては「益宝(イーパオ)」
3、中成薬では「独歩丸」
牛肉は温性で、秋冬におすすめの食材です。当帰は血の巡りを良くし、血液をサラサラにします。生姜は生薬である一方、なおかつ調味料です。これらを用いた当帰牛肉生姜湯は身体を温め、冷え性、手足の疼痛を退治します。
蟻を中心に、葛(クズ)やハトムギを配合した健康食品「イーパオ」は、手足がつる、こわばる、痛む、しびれるなどによい効果を呈します。蟻はタンパク質、ミネラルを豊富に含み、末梢神経の機能を改善する働きがあります。
独活はセリ科の植物などの根で、鎮痛、鎮静及び抗炎症の諸作用があります。独活を主薬とする独歩丸は関節リウマチ、手足のけいれんや痛み、足腰のだるさや痛み、動かしにくさなどを治します。
二 胸腹痛
1、薬膳としては「ベニバナ炒飯」
2、中成薬としては「冠元顆粒」
3、お茶としては「田七人参茶」
ひどい寒さにさらされた時、血管が収縮して胸腹痛を起こしやすくなります。胸が締め付けられそうな痛みは秋冬によく見られます。お腹が冷えて腹痛になるのは、多くの皆さんが経験していると思います。そのような体内の寒さによる胸腹痛に、薬膳はよい効果を呈します。
ベニバナはキク科の植物ベニバナで、美しい色と香りで、血をサラサラにします。ベニバナは口紅の原料など化粧品によく使われます。ベニバナ炒飯はおいしいだけでなく、身体を温め、肌や唇や目や髪に艶を回復させます。ベニバナや丹参(タンジン)を含んだ冠元顆粒は胸痛、動悸、冷え、肩こりなどによく効くのです。田七人参はウコギ科植物の塊根です。田七人参は血行を良くし、痛みを止めるので、寒邪による胸腹痛によく使われます。
食医・李時珍国研究所所長 寇華勝(こう・かしょう)
○医・林の秘密レシピ
●当帰牛肉生姜湯
<材料・4人分>
・牛肉……………200グラム
・当帰…………………12グラム
・生姜…………………10グラム
・大根……………250グラム
・ゴマ油…………小さじ2
・塩……………………適量
・コショウ……………適量
<作り方>
(1)当帰をガーゼに包んでおく。
(2)牛肉をスライスする。
(3)生姜は皮をむき、薄く切る。
(4)大根も皮をむき、切っておく。
(5)水1・5リットルと(1)(2)(3)を鍋に入れて火にかけ、沸騰してからとろ火で20分くらい煮続ける。
(6)大根を加えて、さらに15分煮る。
(7)最後にゴマ油、塩、コショウを加えて少々煮る。
●ベニバナ炒飯
<材料・4人分>
・ベニバナ……………4グラム
・甘エビ………………20グラム
・豚肉……………160グラム
・卵……………………4個
・コメ……………400グラム
・サラダ油………大さじ3
・ゴマ油…………小さじ1
・塩……………………適量
・料理酒…………小さじ1
・長ネギ………………16グラム
・生姜…………………適量
・コショウ……………適量
<作り方>
(1)甘エビを洗ってむき、細かく切る。豚肉も適宜切っておく。
(2)サラダ油を中華鍋に入れ、卵と長ネギを炒めて取り出す。
(3)サラダ油を中華鍋に入れ豚肉を炒め、料理酒・生姜を加え取り出す。
(4)サラダ油を中華鍋に入れご飯を炒め、しばらくして(1)(2)(3)とベニバナを加え、さらに炒める。
(5)(4)に塩とゴマ油を加えて炒め、最後にコショウを加える。
食医・林建豫(りん・けんよ)=寇華勝氏夫人