話題の「中医ダイエット」を分析する:第2回・大野綾子さん×邱紅梅さん

2001.01.10 65号 7面

肥満が原因で生活習慣病にかかる人が増えてきた背景には、食生活の欧米化がある。ではその食生活の欧米化の実態を漢方的に、それから栄養学的に分析すると、どういうことになるのか。中医師(中国漢方医師)の邱紅梅さん、ホリスティック栄養学に基づいた独自のダイエット法を実践している管理栄養士の大野綾子さんに解説してもらおう。

‐‐食の欧米化の問題は、カロリーが上がったことなのでしょうか。食べ方に問題があるのでしょうか。

大野 実は総カロリーは、増えてはいないんです。厚生省の国民栄養調査を年代別に見ていくと、昭和30年の平均的なエネルギー摂取量は二一〇四キロカロリー、昭和60年は二〇八八キロカロリー、平成10年は一九七九キロカロリーで、ほとんど変わりない。むしろ若干減っているのです。

一方、調査の中のエネルギー栄養素別の摂取構成比を見ていくと、おもしろいことが分かります。昭和30年は摂取エネルギーに占める割合は、タンパク質一三・三%、脂質八・七%、糖質七八%。それが昭和60年になるとタンパク質一五・一%、脂質二四・五%、糖質六〇・四%と変化しています。さらに平成10年にはタンパク質一六・〇%、脂質二六・三%、糖質が五七・七%となっていきます。糖質率は昭和30年の七八%から平成10年の五七・七%まで、この間二〇・三ポイントも減少。逆に脂質は昭和30年の八・七%から平成10年の二六・三%と一七・六ポイントも大きく増加。タンパク質の摂取比率は昭和30年が一三・三%、平成10年が一六・〇%と、これも二・七ポイント増えています。

つまりカロリーの総量ではなく、その構成割合の変化が肥満や生活習慣病の要因として大きくかかわっているということになります。「第一に糖質の減少、第二に高脂肪、第三に高タンパク質」が問題ですね。それらは、ビタミン、ミネラル、食物繊維の摂取量の減少を招きました。

実際の食事としては、糖質が激減したということは主食としてきたご飯のとり方が減った。同時に脂肪・タンパク質の割合が増えたということは、肉・卵・乳製品といった動物性食品と植物油の摂取量が増えてきたということです。

いまダイエットの食事というと、「ご飯類は減らしぎみに、おかずはしっかり食べましょう」というようなパターンが多いですが、日本人は以前は食事全体の七~八割を穀類で摂取していました。それに季節の野菜・海草・豆類・若干の魚介類をプラスしていたんですね。それが肉・卵・乳製品・油が入ってきて比率が変わった。昔はおかずの量は家族みんな同じで、食べ盛りの子供はご飯の量で足りない分を調節していたと思うんです。ところがいま、スポーツをする成長期の男の子ならば、お母さんは自分の食べる量の二倍のお肉を与えたりしています。

現代日本人の頭の中にある食事の献立は、大きなお皿に肉などのタンパク質のおかずがメーンとしてあって、ご飯とみそ汁が添えられている。タンパク質食品がないと献立として成立しないというような考え方もあるような気がします。また、朝食がタンパク質の摂取量を増やしているということも考えられます。最近は簡便なパンの朝食が多いですが、どうしてもタンパク源を合わせることになる。例えば朝食に牛乳をコップ一杯・卵一個・ハム二枚・パン一枚を食べたとすると、タンパク質は二五グラム。女性ならば一日のタンパク質所要量の半分をとってしまうことになります。タンパク質をとり過ぎると骨からカルシウムが抜け出して、それが骨粗鬆症のリスクを高めます。胃や肝臓といった消化器官や肝臓に負担をかけるという問題もあります。

邱 肉・卵・乳製品の動物性タンパク質はそれだけでとるのは不可能、脂質と一緒にとっていくという形なので、タンパク質が増えれば脂質も増えます。漢方では脂質は「厚味」という言い方をします。脂っぽくて、おいしくて、こってりとした味という意味です。

こういうものを消化するには脾胃(消化器系)の力(消化力)が必要です。けれど日本人には残念ながら厚味を消化する力はないんです。もともと農耕民族の日本人は何千年という歴史の中で、淡泊なもの、あっさりした穀物・豆類を消化しやすい身体、利用しやすい身体になっています。歴史の中で酪農的な生活をしてきた欧米人とは違うんですね。また、湿気の多い島国に住んでいるので地理的にも胃腸に負担がかかる。真夏、湿気が多くて蒸し暑い時、誰でも食欲が落ちることを考えればよく分かると思います。

それらの要因から、遺伝的に脾胃はあまり丈夫ではない人が多い。何かトラブルがあるとまず胃腸障害が出る。海外旅行に行っても一番のトラブルはいわゆる食あたり、胃腸障害でしょう。しつこいものを食べているうちに、もうダメ…という感じになりやすいですね。

食の内容変化だけでなく、三食のバランス変化も大きいですね。昭和30年代の日本人の一般的な生活は、朝早起きしてひと仕事をして、その後朝食をたっぷり食べて、またしっかり仕事、お昼を食べて、夜はわりに早く終わる、というような生活だったと思います。それがいまは完全に逆転してどんどん夜型化しています。夕食の時間が非常に遅くなり、一〇時以降に帰宅して、お腹がすいた状態でステーキをあっという間に食べてしまう人もいる。寝るまでの消化時間も短い。そうなると朝も遅くなる。朝食は起きてすぐ、ギリギリの時間にとる。朝食と昼食の間の時間もとても短い。これではどうしても消化器系に負担がかかります。

脾胃が弱い。さらに体質に合わないライフスタイルにも無理がある。それで食べ物を消化しきれないとどうなるか。結局エネルギー源として脂肪という形で身体に貯蓄されることになる。つまり肥満のベースをつくる形になってくるわけです。

大野 身体に合わないタンパク質、脂肪の摂取過剰がいまの日本人の生活習慣病アップの要因を作っているのは、確実です。それでは本来、私たちに理想的なタンパク質・脂質・糖質の構成割合はどのくらいなのでしょうか。専門家によって主張の違いがあるのですが、タンパク質一二~一三%、脂質一五~二〇%、糖質六五~七五%‐‐というラインが理想的と考えます。これを先ほどから見てきました年代でみますと、大体昭和30~40年代ぐらいが理想的だったということになります。その頃の食事はどういうメニューだったのか想像してみると、何となく具体例が浮かびますね。ここ数十年の献立に関する既成概念を一度打ち破って、新しい理想的な食事像をぜひとも創り上げていきたいものです。

◆中医ダイエットシステムの中で中心的に使われる三爽茶、ラリー参加者の感想

●中国茶というので一回ごとに煎じて飲むようなお茶をイメージしていたら、コンパクトなスティックの顆粒タイプでビックリ。持ち運びも便利、外出先でも手軽に飲め、ハトムギ茶に似たほのかな甘みが気に入っています。このお茶を飲むことで「はい、食べるのはもう終わり」という気持ちになり、だらだらと食べてしまうことがなくなりました。

●前日まで「寒い、寒い」と思っていたのに、飲んですぐ外出したら「あれ? 寒くない」と感じました。自転車での通勤中もです。お風呂でもいつもより汗をたくさんかくような気がします。

●食事中と食後、飲んだところ、トイレに行く回数が増えたような気がします。

●ジョギング中も、会社で仕事をしている時も、とにかくすごく汗をかくようになりました。汗をかく、水分をとる、汗をかく…の繰り返しで、そのせいか昼間ぼーっとのぼせることがなくなりました。利尿作用があり、脂肪を燃やすといわれる三爽茶の効果がはやくも現れているようです。

◆「やせるための基本ライフスタイル提案」チェックシート

1.ご飯(主食)をしっかり食べる

2.主食は玄米、分づき米、胚芽米、ライ麦パン、ソバなど(精製度の低い穀類)を食べ る

3.おめざめ食に果物を食べる

4.昼食または夕食前に、野菜ジュースを飲む

5.1日3皿以上、野菜料理を食べる

6.海藻、キノコ、コンニャクを毎日たっぷり食べる

7.1日1回、ご飯+味噌汁+大豆+漬物の組み合わせで食べる

8.魚料理を週に4回以上食べる

9.調理にはオリーブオイル、キャノーラ油を使う

10.お菓子は量を決めてデザートとして食べる

11.カロリーのある飲み物は飲まない

12.食材は旬のもの、調味料は良質のものを使う

13.家の中で食事をする場所を一カ所に決める

14.食べるときに集中する(テレビ、雑誌を見ない)

15.一口ごとに20回噛む

16.噛んでいる間は箸を置く

17.寝る3時間前には食べない

18.20分間続けてウオーキングをする(週3回以上)

19.寝る前に筋力運動とストレッチをする

20.1日1回リラックスタイムを設ける

1~12=食事について

13~16=食事の作法

17~20=生活習慣

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら