百歳への招待「長寿の源」食材を追う:山査子(サンザシ)
山査子と哈蜜瓜はともに中国北西部の産で、日本にはあまり知られていない。しかし中国庶民の味として人気が高く将来性は大きい。食べやすさと価格の安い点が喜ばれ、しかも薬効も高く、これから日本でも普及しよう。 (食品評論家・太木光一)
サンザシは中国・モンゴル原産のバラ科の落葉低木で漢字では「山査子(山査)」と書く。日本ではなじみが少ないが、中国では菓子・飲料・漢方薬材として貴重である。
果実は二・五~三センチほど、比較的乾燥地を好むので、多湿の日本は栽培にやや不適。中国では河北・河南・山東・東北の各省で多産されている。
性状は甘酸っぱく、しかも温性。食欲を増進させ、肉食の消化を助長し、消化不良や高血圧、二日酔いなどに効用があり、またコレステロールを取り除く作用や、強心効果も大きいとされている。
このため米国では、この強心作用についての研究が進み多くのリポートがみられる。このほかタンの切れを良くするので注目されている。
サンザシの酸はクエン酸で、日本に見る梅の薬効とよく似ている。梅は毒消し・食欲増進・口臭消し・高血圧予防・虫下しに良く効くとされているが、この効用はクエン酸によるもので、サンザシにも同様の効果が期待される。
中国人は宴会で肉や油料理を食べたあと、これが出るとホッとするという。特に魚類の毒消しの効果を高く評価している。
このほか漢方では腰痛・消化助剤・産後の腹痛によいとしているが、胃酸過多や胃潰瘍の人には不適である。
サンザシを素材としたものに優れた飲料や食品が多くみられる。酸梅湯(サンメイタン)は夏の飲み物として最適の飲料である。甘酸っぱくそしてサッパリとした飲み口で日本の麦茶やコーラよりも優れた面がみられる。
特に水質の悪い中国で、酸梅湯は暑気あたりを防ぐのによいとされ、腹の調子の悪いときにも薬代わりに飲める。明時代の宮廷で愛飲されていたがいまや庶民の飲料となった。
糖胡廬(タンフロウ)はサンザシの実を飴にまぶし五つか六つぐらいを竹串に刺したもので、路上で販売され子供の駄菓子とも呼べるもの。華北では街頭にサンザシ飴売りが出始めると冬の訪れを告げる風物詩として親しまれている。
中国の各家庭ではサンザシを常備薬として、子供や高齢者の胃の具合が悪いときにはサンザシと麦芽を煎じて飲ませているが、多少の熱でもこれでとれる。
最近ではこの錠剤もあり薬店で容易に入手できる。医食同源としてもっとも手軽な健胃・整腸剤として親しまれ、しかも価格もきわめて安価。庶民の味方といえよう。