果物が足りない日本人 りんご1日1個半~2個で中性脂肪21%減

2001.10.10 74号 7面

さあ、そろそろりんごがおいしくなる時期到来。りんごには、「一日一個で医者いらず」なんていう格言もあり、病院のお見舞いにもつきもの。りんごが身体に良い果物としてよく知られている証拠だ。ただでさえ健康増進にもってこいのりんごの新たな有効作用として、一日一個半~二個食べると中性脂肪が二一%も減少するという試験結果がつくばの農業技術研究機構から発表された。実はいままで、りんごの果糖が中性脂肪を増やすとまでいわれていたため、今回の試験は常識を根底から覆す成果なのだ。この成果から、りんごの秘めたるパワーに迫ってみた。

私たち日本人の一人一日当たりの果物購入量ってご存じですか。平成12年版の「家計調査」では八四・九グラム。昨年示された「食生活指針」には、毎日果物を二〇〇グラム以上摂取するように推奨しているものの、年々消費量は減少。アメリカでは、果物と野菜を合わせて一日四〇〇~八〇〇グラム摂取する運動が展開され、がんの死亡率減少など生活習慣病を予防し健康維持に成功している。世界の果物消費量を見ると平均一五六グラムで、日本はその約半分に過ぎず、発展途上国平均の一三八グラムにも達しないほどだ。

農水省は、健康の維持増進に果物を食べることが有効ということを実証するため、プロジェクトを始動。

「医者いらず」とまでいわれているりんごだが、果糖が含まれているため血液中の中性脂肪が増えるという指摘があった。しかし、中性脂肪と果物との関係の科学的検証事例はなかった。そこで、「毎日りんごを摂取する食生活が健康増進にどのような効果があるか」を知るため、独立行政法人の農業技術研究機構果樹研究所でヒトを対象とする研究を始めた。

試験では、通常に勤務している三〇~五七歳の男女一四人に、りんごを毎日一個半~二個(摂取量=三六〇~四八〇グラム)食べてもらった。

使用されたりんごは『ふじ』でビタミン、ミネラルの成分値は五訂版日本食品標準成分表とほぼ同数値。カロリーは二二九~三〇六キロカロリー、ビタミンCは一二~一六ミリグラム、糖類含量は五三・五~七一・三グラム、食物繊維は、水溶性が一・四~一・九グラム、不溶性が四・四~五・九グラムだった。

りんごの摂取を三週間続けた結果、被験者一四人中一二人で中性脂肪が低下した。摂取前の中性脂肪値が一一〇ミリグラム/dlだったのに対し、りんごを食べたことで八七ミリグラム/dlと大きく減少。その差は二一%にもなった。ただ、もともと基準値(九〇ミリグラム/dl)より低い人では減少幅は少なく、逆に摂取前に中性脂肪値が高かった二人は、基準値範囲内まで減少した。

このことから、りんごは中性脂肪を減らすのに効果的であることが明らかになったばかりでなく、中性脂肪を正常化する作用が備わっていると考えられる。

同時にりんごを食べると摂取前に比べて三四%血液中のビタミンCが増え、やめると減少した。りんごはビタミンCが極端に多いというわけではないが、効率よく体内に取り込むことができるということだ。

また、便通を良くする整腸作用も認められた。

これらのことから、りんごには、生理活性機能があり、高脂血症などの生活習慣病予防に適した食品であることが証明された。

同研究所では、今後もりんごの機能性成分の探索・分析を進めるとともに、他の食品との相性と人への健康の影響の解明を進めていき、「食生活指針」で示された毎日二〇〇グラム以上の果物摂取が健康維持増進に有効であることを実証していく計画だ。

握り拳大ほどのりんごには、生活習慣病予防などの効能に対して大きな期待がかかっている。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら