現代人に必須、アレルギーの知識

2002.03.10 79号 2面

いまや1300万人に達するというアレルギー患者。食物アレルギーは乳幼児における一過性の疾患ではなく成人でも発症し重症化する慢性疾患。難治性のアトピー性皮膚炎や他の症状の起因とも深くかかわることから、現代人にとってアレルギー対策とその治療は生涯にわたり、きわめて重要。アレルギーの知識と対策について考えてみよう。

◆なぜ起こるのか

Q アレルギーって何?

A 私たちの身体は、外部からやってきた異物に対し、排除したりして身を守ろうとする。これが免疫システム。免疫システムはいわば身体のガードマンで、ウイルスをはじめとするさまざまな来訪者に対して、常に目を光らせている。

しかし、化学物質が含まれている食物を常食していたり、寝不足が続いたりすると、免疫システムも疲れてきて、常に疑いの目を向け、過剰反応するようになる。そして、本来なら無害なはずの物質(タンパク質)に対してまでも過剰に反応して、逆に身体を攻撃してしまうことがある。これが「アレルギー反応」だ。

Q 食物アレルギーの症状って?

A 「食物アレルギー」とは、特定の食物を食べた時に異常な過敏反応を示し、そのために皮膚・呼吸器・消化器などに病的な状態を起こす現象。症状としてもっとも多いのは、かゆみ・失神・じんましんなどの皮膚症状。ほかにも、鼻・口・目・消化器などへの症状があるが、まれに激しいショック症状を示す重篤なケースもある。

Q 食物アレルギーの原因はなに?

A 食物アレルギーは、消化能力や腸管免疫が成熟していない〇~二歳の乳幼児に発症することが多い。戦後急激に進んだ高タンパク・高脂肪食は、それまでの日本人の食生活になかっただけに子供たちのアレルギー体質が助長された。とくに牛乳・卵・大豆(三大アレルゲン)などの取り過ぎが重視されている。また、食品添加物や農薬など人為的な食品化学汚染もアレルギー疾患の増加に無縁とはいえない。また住環境の変化(家屋構造・生活様式)、食生活の変化(流通機構・旬の喪失)、社会構造の複雑化(各種ストレスの増加)、化学物質の氾濫(医薬品・化粧品・農薬)なども急増の背景として挙げられる。

Q アレルギーの影響は?

A アレルギー体質は、成長発育とともにその症状が出やすい臓器が変わっていくことがあるので、一つの症状が消えたからといって、すぐに安心するわけにはいかない。アレルギーからさまざまな合併症を起こすことがある。またアレルギーとは直接関係のない他の疾患によって、アレルギー症状が悪化したり、長引いたり、せっかく治まった症状がぶり返したりすることもある。食物のアレルギーを振り出しとして、ダニ・カビ・花粉などの吸入性抗原に感作されたり、化学物質に過敏になることもあり、これを「アレルギー・マーチ」(アレルギーの行進)と呼んでいる。

◆開発進む代替食

食物アレルギーの治療の第一歩は、毎日の食生活からその原因食物を除去すること。しかし、その原因食物は、卵・牛乳・大豆など栄養的に優れた食品に多いため、除去食療法を行っている人は、栄養成分、とくにタンパク質の不足に気をつけたい。

▽卵・牛乳・大豆などアレルギーの原因となるものを含まない食肉製品『アピライト』シリーズ。ポーク・ターキー・ラビットのウインナソーセージ三種のほか、ハンバーグやミートボールもある。特別用途食品。日本ハム(株)中央研究所(茨城県つくば市、フリーダイヤル0120・68・1186)

食物アレルギーでは除去食療法のほか、同じ食べ物を大量に、かつ連続して摂取しない「回転食」も指導される。最近ではコメや小麦といった主食にまで過敏反応を呈する重傷の複数食物過敏が増加。食物アレルギー治療用代替食の研究開発が急がれている。

▽アレルゲンとなる物質アルブミン、グロブリンを九五%カットしたコメのパン『A‐カットパン』。保存料不使用。越後製菓(株)(新潟県長岡市、フリーダイヤル0120・36・2358)

◆4月から本格導入のアレルギー物質含有食品表示、ぜひ活用して

食品衛生法の改正により平成13年4月1日からアレルギー物質含有食品に新たに表示基準が定められた。表示義務の対象となるものは、その食品を摂取したことによりアレルギー症状を引き起こす危険性の大きいとされる五食品。これら「特定原材料」のいずれかが原材料に含まれる場合には法律で定められたとおりの方法で表示されることとなった。

また前記のほか、症例は少ないが摂取したことによってアレルギーを起こす可能性のある一九食品についても原材料に含まれる場合に表示を行うことが奨励されている。

従来の表示…従来の表示では原材料で使用した添加物についてのみ食品衛生法で表示が義務づけられていた。

新たな表示…製品中に「特定原材料など」に指定されている食品が微量でも含まれる場合は表示が必要になる。

★「○○が入っているかもしれません」というようなあいまいな書き方は認められない。

★特定原材料を含む食品と同じ製造ラインを使用し、特定原材料が混入する可能性のある場合には例えば「卵を使用した施設で製造しています」との記載が必要になる。

★特定原材料に由来する食品添加物は、原則として「物質名(~由来)」(~の部分が特定原材料名)の表示が必要。

◆抗アレルギー成分を有効活用 九州大学大学院・立花宏文助教授

一方、食品の成分には抗アレルギー作用を有するものもある。「例えば、みなさんがいつも飲んでいるお茶。茶葉中の成分・メチル化カテキンやストリクチニンなどに抗アレルギー効果が認められています。そうした茶の成分を、どうしたら有効的に活用できるか、また食物アレルギーの代替食品や予防食品の開発へ応用する研究が進められています」と九州大学大学院農学研究院・立花宏文助教授は語る。

「食物アレルギーは、身体症状だけでなく精神的にも患者やその家族にとって大きな負担となります。食物アレルギーを起こしにくい加工品を上手に利用して、生命の維持や健全な成長に必要な各種の栄養素をバランスよく摂取すること、また食事を楽しくする工夫も大切です」。

◆すべての商品にアレルゲン使用成分を表示 オーガニックジャパン

手作り・無添加素材厳選を基本として安全な食品を提供する地道な活動を続けてきたオーガニックジャパン(東京都練馬区、電話03・3994・6911)では、二〇〇一年10月から全商品にアレルゲン表示を行っている。同社商品は、アレルギー学会などで評価も高く、製造段階でのアレルゲン混入の危険を回避するために専用ライン化も進めているという。中田秀雄社長は「将来を見据え『一般食品のアレルギー転用』ではなく『卵・大豆・牛乳・コメ・小麦』を使用しない食体系の再構築を進め、食事のレパートリーを広げることでアレルギーに対応していくことが、医療・消費者の要請に応えることであると考えています」と語る。

◆「アレルギー食事療法」で本格中華~茶平

また同社との共同開発により、「アレルギー食事療法」の本格中華料理をコースで提供するレストランもある。

中華料理店『茶平』(東京都練馬区、電話03・3993・7337)では、アレルギー対策用に開発された食材を使用、調理器具もすべて特別のもので調理している。すべての料理に化学調味料は一切使用していない。宅配サービスもしてくれる。ホームパーティーなどに利用してみては? 同コースは二人以上五〇〇〇円から。要予約。

◆わかりやすいアレルギー表示。製品の履歴もすぐわかるパッケージ 石井食品

おべんとくんシリーズなどでおなじみの、石井食品(株)では、独自のわかりやすいアレルギー表示を記したパッケージの製品を2月末より市場導入した。同社では以前から「無添加調理(製造過程において食品添加物を使用せず、製造過程や物流過程において細心の注意を払うこと)」を実践。全製品に「品質保証番号」をつけることで、一つ一つの製品の履歴(原材料・製造)を明確にしている。また平成13年12月よりホームページ上で情報の公開も行っている。今後は『卵抜きミートボール』など、アレルギー対応食品の研究も検討したいとしている。▽石井食品(株)(千葉県船橋市、フリーダイヤル0120・86・1914。ホームページhttp://www.ishiifood.co.jp/)。

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