“旬の力”で生へ跳躍 旬のものがすべての生物のエネルギーだ

1996.05.10 8号 1面

鮎は知っている。旬のもののうまさを、栄養の豊富さを。だからこそ彼らは飛ぶ。旬の食物を求めて、香魚・若鮎たちは川の遡上の旅に出る。

野に草花が、山に山菜が、そして川には藻が生えそろう新緑の季節。海でプランクトンを食べていたころに比べ、鮎は川で藻を食べるようになるとグーンと成長を早め、その香りを増すという。

玉石の瀬につくおいしい藻を探して、急な流れや高い滝にもめげることなく果敢に飛び続ける。縄張りをもち、仲間と闘争してまで食べる。鮎だけではない。自然界に棲む動物は栄養の豊富な旬の食べ物を食べるのが普通。厳しい環境に棲みながらもずっとそのルールを守ってきた。

見よ、この遡上する鮎の勢いを。食べるのはこんなにも必死になること、生きるのはこんなにも厳しいことだと、自然は私たちに教えてくれる。

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