百歳への招待「長寿の源」食材を追う:コブシ

2002.06.10 82号 11面

クロモジとコブシはともに日本全土に分布し親しみの深い樹木。ともに薬効が多くポピュラー。クロモジは薬酒・薬剤・薬茶などに。コブシも薬酒や薬粥などに利用される。庭木としても欲しい木である。

(食品評論家・太木光一)

コブシはモクレン科の落葉喬木で、中国語では「辛夷」と書きシン・イと読む。生育地は平地から二〇〇〇メートル以上の高山まで原野・山林など日本各地で自生している。3~5月にかけて、葉が出る前に枝先に香気ある白い花をつけ、木全体が白く見えるほどである。古くから花の咲く時期が農作業を始める目安とされている。

漢方ではこのつぼみを乾燥したものを辛夷と呼んでいる。中国産のコブシの分布は比較的暖地に多い。現在では野生種はほとんどなく山東・四川・江西・雲南などで広く栽培されている。漢方薬材となるコブシの成分は精油を約三%含み、主成分はチトラール・オイゲノール・テネオールほかで、微量のアルカロイドも確認されている。

中国産は日本産と比べて、その作用ははるかに強い。薬性は辛にして温、薬能は発散の薬とされている。コブシの辛温は気を走して肺に入り、その体は軽浮にしてよく胃中の清腸を助け、上行して天に通じる。よく中を温め頭面、目鼻の病を治すゆえんであるとする。

用途としては頭痛・頭重感、特に鼻炎・蓄のう症などの鎮静・鎮痛に応用される。処方は辛夷散(辛夷・升麻・防風ほか)、辛夷清肺湯などがある。つぼみが頭痛薬・鼻の治療薬として大活躍している。この使用適量は一日当たり二~五グラム程度。花梗を除いた、芳香性の強いものが良品といえよう。治療効果として、治鼻炎・治鼻塞不知香味・治歯牙痛・治頭昏などがあげられ、効用主治は去風・頭痛・歯痛・鼻炎など。

コブシは薬食利用として薬用酒と薬粥があげられる。

辛夷酒の作り方は、採取時期としてつぼみは3~4月、種子は9~11月、小枝は周年となる。作り方は小枝を細断、乾燥して用いる。用量は容器に対して一〇分の三程度。つぼみも同量。種子は一〇分の一・五~二くらいを用意。砂糖は少なめに大さじ二~三杯。中身の引き上げが大切で、つぼみで五日以内、枝で一〇日以内に引き上げる。種はそのまま。ほぼ一カ月で飲むことができるが、熟成には二カ月が必要。仕上がりは美しいこはく色となる。数多い本草酒の中でも逸品といえよう。ストレートによく、カクテルに用いても万能。芳香薬として頭を爽快にし、頭痛・鼻炎・精神安定に効果大。

薬粥として慢性鼻炎用に辛夷豆腐粥がおすすめ。辛夷花一五グラム、豆腐二切れ、コメ一〇〇グラム。辛夷花の煎汁をとり、コメと豆腐で粥をつくり煎汁を加える。慢性鼻炎によく効く。

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