韓国・錦山の高麗人参畑探訪リポート 高麗人参パワーの源泉にふれる
「高麗人参」は補血強壮など優れた効能が知られ、がん細胞を抑制する成分・サポニンを豊富に含むことなども確認されている。とくに今年6月のサッカーワールドカップで大健闘した韓国チームのパワーの源として各国から注目を集めた。世界最大の高麗人参の産地である錦山(クムサン)を訪れ、収穫真っ盛りの高麗人参畑・研究施設・農業祭を視察する機会を得た。強靱な生命力をもつ高麗人参についてリポートする。(取材協力=韓国農水産物流公社)
ソウルから南へ車で三時間(約二〇〇キロ)、忠南地方にある錦山は天恵の栽培条件を有し、最高水準の人参が取れる地。なだらかで美しい山々が連なり、錦の川・金剛の本流が流れ、清らかな空気と自然エネルギーあふれる野山には、人参・薬草などさまざまな霊薬が育つ。稲や梨の田畑の中に、黒いビニールで覆われたイワクありげな一角が現れる。それが高麗人参の畑だ。
高麗人参は大地の栄養分をたっぷり吸収するため、畑は連作ができない。そのため錦山の農家では栽培適地を数年かけて整備する。厳選した種子のみを苗に育て、四~六年後収穫に至る。六年といえば小学校に通う年月と同じ。まさに農家の誠意がこもった霊草だ。
訪韓した9月は、ちょうど韓国南部がひどい台風の被害を受け、テレビは連日ボランティアや軍隊の救済活動の様子を伝えていた。長年かけ、天災や人災を乗り越えやっと製品となる、人参生産の難しさ・奥深さを感じた。というのも、人参掘り体験で記者は大切な根を鍬で傷つけてしまったのだ。観光農園とはいえ、長年手塩にかけた作物を目の前で痛めつけられる農家の方の気持ちを思うと申し訳なさで一杯だった。
人参は、栽培年数や加工方法によって、名称・価格・品質が決まる。畑から掘ったまま、乾燥前の人参を「水参」。水参を蒸してから固く乾燥させたものを「紅参」。水参の皮をはぎ、太陽や微風により乾燥させた微黄白の製品を「白参」、水参を湯に浸してから皮をはぎ乾かしたものを「太極参」という。
錦山の高麗人参の歴史は約一五〇〇年前、百済時代に始まる。病気の母親を看病中の学者が「観音峰の岩肌に赤い実を三つつけた植物が生えている。それを根ごとゆでて母親に食べさせなさい」と夢で山神のお告げを聞いた。その通りにすると母親の病気はすっかり治った。以来、錦山の農民はこの不思議な効力を持つ植物、高麗人参を栽培しているのだ。
高麗人参の服用方法として韓国で一般的なのは、乾燥したものを煎じて茶として飲む方法。神経を休める「安神(アンシン)茶」(高麗人参・龍眼肉・白茯神・ナツメの種・甘草)、滋養を高める「補気(ポギ)茶」(高麗人参・生姜・ナツメ・オウギ・杜仲・白述)など韓国伝統茶の材料としても欠かせない。また、最も有名な高麗人参料理といえば「参鶏湯(サムゲタン)」。丸ごとのヒナドリの中にモチゴメ・栗・ナツメ・ニンニク・人参などを詰めて長時間煮込む料理で、最近は日本でもレトルト製品などが販売されている。にぎり寿司・サラダ・キムチ・炒め物・煮物など、今回多くの高麗人参料理を試食したが、中でも天ぷらは芋のようにほっくり柔らかく、風味も和らぎ好評だった。
高麗人参の医学的効力としては、心臓や中枢神経を刺激し心理的能率を上げる、がんや高血圧・糖尿病・老化の予防、ストレスや疲労を和らげる効果など列挙のいとまがない。「主要な薬理成分である人参サポニン(ジンセノサイド)は、韓国産品には三〇種含まれ、アメリカ産の一四種、中国産の一五種に比べ、バランスよく多含することが確認されています」とKT&G(韓国煙草・人参中央研究院)の魏在〓研究部長。
同氏は今年8月、スペインで行われた国際学会で『高麗紅参の抽出物のダイオキシン毒性への防御効果』について発表。今後さらに環境ホルモンに対する有効性など、「現代人の健康を守る高麗人参パワーを検証し、生活に役立つ具体策を探りたい」と力強く語ってくれた。