ミツバチの恩恵をおいしくいただいちゃおう 長寿の源、天然の健康食品ハチミツ

2003.05.10 93号 12面

レンゲやアカシアの花が咲く皐月。その花を求めて、ミツバチたちも子育てのために活発に働く。ミツバチが集めた花の蜜は巣の中で熟成し、ハチミツに生まれ変わる。そんなハチミツは、豊富なカリウムやバランスのとれた長寿ビタミンを含む天然の健康食品。漢方薬の原点ともいえる明(一三六八~一六四四年)の『本草綱目』という書物には、万病に効き、常用すれば不老長寿の薬であると記載されているほど。よ~く知ってあなたの生活にも取り入れてみてはいかが。

◆ハチミツの歴史は人類の歴史

イギリスには「ハチミツの歴史は人類の歴史」ということわざもあるほど、人とハチミツのつきあいは深い。スペインのアラニア洞窟で発見された約一万年前(新石器時代)の壁画には、なんとハチミツを採取する様子が描かれている。エジプトでは、ツタンカーメン王(紀元前一四世紀)がハチミツ壺とともに埋葬されており、壺にはミツバチの象形文字が刻まれていた。一方、日本では平安時代に献上品とされていた。当時から大変貴重なもので、上流社会の人々が医薬品として利用していた。江戸時代には養蜂も行われたが、ハチを殺して蜜を取る残酷な略奪採集だった。

一九世紀の半ばには、アメリカで“巣わく”が発明され、近代養蜂が始まり、二〇世紀にはハチミツの生産量も向上、現在では安価で品質の高いハチミツが食べられるようになった。

◆ハチミツ工場の巣箱は女社会

ミツバチが運ぶ花蜜の量は一回五〇ミリグラムとごくわずか。しかし、最盛期には六万匹の大家族を総動員して一日に五〇~六〇回も運んでくる。花の季節、天気の良い日にはこの働きぶりのおかげで三日で二五キログラムも集めることができる。“蜜も積もれば…”である。

それでは、ミツバチの巣の中はどうなっているのだろう。たった一匹の女王蜂と二〇〇〇~三〇〇〇匹の雄、五万~六万匹の雌(働き蜂)という家族構成。女王蜂は雄と交尾するために結婚旅行に出かける以外は巣の外へ出ることがなく、ひたすら卵を産み続ける。雄蜂は女王蜂と交尾するだけが仕事。その他いっさいの身の回りの世話を雌だけの働き蜂が行う。

◆働きバチたるゆえん

花蜜集めをするのはベテランの外勤バチ。花にたどり着くと舌で蜜を蜜袋に吸い込む。巣に戻ると若い内勤バチに口移しで蜜を渡し、そこでダンスを踊る。花の位置を仲間に教えるためで、テンポの速い円形ダンスはすぐ近く、ゆっくり8の字を描く時は遠くにある。方角は花と太陽の角度で示す。

外から持ち帰った蜜はまだ水っぽく、糖度は一〇~二〇%。これを濃縮してハチミツに変えるのが若い内勤バチの役割。蜜を細く伸ばして水分を蒸発させ、四〇%ほどの糖度に。これを小さな水滴に分割して羽であおぎさらに蒸発させ、別の部屋に集めて熟成させたら、糖度八〇%のハチミツが完成する。完熟していっぱいになった巣穴には、蜜ろうの蓋で密閉して貯蔵する。ハチミツは簡単にできるわけではない。すべて雌の外勤バチと内勤バチの働きで、時間をかけてできるのだ。

◆ハチミツの種類

アカシアの花からはアカシア蜜、レンゲの花からはレンゲ蜜、どんな花から蜜を取ったかでハチミツの種類が分けられる。花の種類によってその特徴も様々(表参照)。花の表示のないものは何種類かがブレンドされた商品だ。

不思議なのは、いろんな花が咲き乱れるシーズンに、他の花の味が混ざらないこと。それはハチの「訪花の一定性」という性質から。ミツバチは一つの花に通い始めるとその花が終わるまで他の花には目もくれない。また、外国では、レンゲならレンゲ、クローバーならクローバーだけの花が見渡す限り咲き続けており、花の味が混ざることが少ない。

◆天然の健康食品

ハチミツの主成分は果糖とブドウ糖で、どちらもこれ以上に分解する必要のない単糖類。だから、即エネルギーとして身体に吸収される。また、ミツバチは花蜜だけでなく花粉も巣に持ち帰るため、三万~二〇万個の花粉がハチミツに入っている。花粉には、タンパク質、ビタミンB1・B2・B6・C・K・E、カルシウム、カリウムなど健康に必要なミネラルやビタミンがほとんど入っており、体内に吸収されやすいイオンの形で溶け込んでいる。

米国のミネソタ大学・ハイダック博士の研究によると一日一〇〇グラムのハチミツと一リットルの牛乳だけで三ヵ月生活した実験でも、何ら健康に異常がなかったという報告がされている。ハチミツは毎日の健康作りに活用したい天然の健康食品だ。

◆料理の演出者

ハチミツの特徴をまとめると…

(1)肉類は加熱するとかたくなるが、ハチミツを加えると柔らかく仕上がる。冷めてもかたまらないのでお弁当のおかずにおすすめ。

(2)ハチミツの分子が魚や肉のにおいの元となるアンモニアと結合して揮発を抑える。

(3)カラメルにしやすいため、焼き色やテリが美しい。みりんの代わりにも。

(4)料理の隠し味として他の調味料とよく合う。特に酢との相性は抜群。

(5)小麦粉にまぶして揚げるとカリッと、クレープなどの生地に入れるとしっとり焼ける。

(6)ハチミツ小さじ1は砂糖大さじ1の甘さ。だから砂糖の三分の一の量で十分。

ハチミツは、豚肉のショウガ焼きや甘酢たれなどのおかずから、くずきりや大学芋などのおやつまで、さまざまな料理の演出者だ。

(参考資料=(株)加藤美蜂園本舗の『ハチミツミニミニ・百科』)

◆ハチミツの賞味期限

1922年、アメリカのT・Mデーヴィスという考古学者がピラミッドを発掘した時、3300年前のハチミツの壷を発見。開けてみたところ、全く変質していなかった。これは、ハチミツの長期保存性を証明した事実だが、1年から2年経つと色や香りが強くなったり多少風味が落ちたりするので、料理に利用するのがよい。

糖度の高い食品なので、腐敗しないが、時には結晶することもある。カビに見えたりすることもあるが品質や栄養の変化などは全くないので、ガラス容器なら蓋を開けてそのまま湯煎にかけると元に戻る。

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