めざすは体内インフラの整った身体 キーワードは「活性酸素」と「腸内環境」

2003.09.10 98号 2面

◆体内インフラとは

「体内インフラ」とは栄養素を体内に行き渡らせる流れ。この機能は加齢とともに衰える。「体内インフラ」を日頃からしっかり整備し、衰えのスピードが緩やかな人こそ、我々の目指す『百歳元気』健康長寿者だ。口から入った栄養素は、腸で取り込まれ、血管を通って届けられる。これらをいかに整備するか。二つのキーワード「活性酸素」と「腸内環境」から体内インフラの仕組みについて考えよう。

取材協力=明治製菓メディアセミナー「抗加齢医学と効果的な栄養摂取のための『体内インフラ整備』」

◆腸内環境が悪いと便秘やがんに

「腸管機能向上と体内インフラ整備」光岡知足・東京大学名誉教授

「食事やサプリメントはまず腸管から吸収されます。吸収された成分は血管を通して臓器に届き、代謝・利用され排泄に至ります。ですから腸内環境を整え効率よく吸収させることが重要です」と語るのは腸内細菌研究の第一人者、光岡知足・東京大学名誉教授だ。

「腸の健康状態は、腸内細菌の状態によって決まります。腸内の善玉菌はビタミン・タンパク質の合成、消化・吸収の補助、免疫機能の刺激など健康維持に働くことが分かっています。悪玉菌は腸内腐敗、発がん物質の産生、毒素産生などに関与し、肝臓障害・動脈硬化・高血圧・がんを起こすといわれます。胃がん患者と健常者との比較研究では、がん患者には悪玉菌が多く、ビフィズス菌などの善玉菌が減少しているという結果が出ています。痴呆症についても健常高齢者と腸内フローラを比較した結果では、痴呆症患者に悪玉菌の代表であるウェルシュ菌の数が異常に高いという特徴がありました」。

高齢者の腸内フローラは乱れやすく、ビフィズス菌がまったく検出できない例もあるという。

◆血管を傷つける活性酸素

「抗加齢医学と体内インフラ整備」吉川敏一・京都府立医科大学教授

血管を縮めたり血管の壁を厚くするなど、身体のトラブルの元になる活性酸素。通常は体内で処理されるが、加齢とともにその処理機能が減退し、さまざまな問題を引き起こす。「細胞の化学変化を調べると、ほとんどすべての病気で細胞が酸化により変性することが直接のきっかけになっていることが分かってきました。また細胞の酸化は老化の原因の一つでもあります」とフリーラジカル(活性酸素)と抗加齢研究の第一人者である吉川敏一・京都府立医科大学教授はいう。

「鉄が酸素によって錆びてボロボロになる。これと同じことがヒトの細胞にも起こります。例えば活性酸素が赤血球の膜を酸化させると、膜に傷がつき、血管を通りづらくなるのです」。

酸化の仕組みはこうだ。不安定な分子を持つフリーラジカルが他の細胞の成分を奪おうとする、そのため正常な細胞が次々に不安定な状態になっていく。

「活性酸素は細胞がエネルギーを産生する時に必ず発生するもの。そのため身体には酸化を防ぐシステムも備わっています。しかし加齢によって活性酸素の量と酸化を防ぐ力のバランスが乱れると、老化のスピードが加速し、病気を招く原因になるのです。

ひとくくりに活性酸素と呼ばれていますが、実はいろいろな種類が存在します。したがって、活性酸素を退治するための有効成分もひとつではないのです。有効成分を複合的に摂取することによって効果的に活性酸素を退治し、栄養素の通り道をきれいに整えてやると、栄養素は体内のあちこちへスムーズに運ばれていきます」。

・加齢と老化の違いとは?

「加齢」は年齢を重ねることによって起こる変化。「老化」は外見的な構造及び機能の退行性変化です。「加齢」は生まれたときから死ぬまで起こる変化。子供時代の変化は「成長」と呼ばれ、高齢期の変化は「老化」と呼ばれるのです。

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