ヘルシートーク:女優 木村多江さん

2011.04.10 189号 05面

 1960~80年代に大ヒットした漫画『天才バカボン』『おそ松くん』などを生み出し、子どもたちに夢と笑いを与えた“ギャグ漫画の王様”、赤塚不二夫さん。その赤塚さんの半生を描いた映画『これでいいのだ!! 映画★赤塚不二夫』で、主人公を支えるしっかり者の妻を好演した女優の木村多江さんにお話をうかがいました。

 ◆「天才の妻」の母性と強さ

 『これでいいのだ!! 映画★赤塚不二夫』は、実話を基にしたノンフィクションと、コミカルなフィクションの両面を持っている映画です。私が演じた赤塚不二夫さんの奥さまは実在されている方なので、彼女を知っている方が作品を観た時に違和感のない人物像を演じようと思いました。

 奥さま(作品中のトシ子さん)は夫の一番の理解者であろうと努めました。赤塚さんも、奥さまがいらしたから創作に没頭できたのだと思います。赤塚さんをただ許容するだけでなく、良い作品ができるようにお尻を叩き、漫画のアイデア出しをすることもあったそうです。そして、離婚後も赤塚さんを見守り続け、自分の友人との再婚まで橋渡しをしたという、すごい生き方をした女性です。ですので、現場では常に「どうしてこの女性は赤塚さんの奥さんになったのか」を考えて演じていました。

 「赤塚不二夫の妻」を演じるには、彼のお母さんへの想いを理解することも大切でした。映画の中に、「私は2番」という台詞が出てきます。赤塚さんにとって、1番はお母さん。そのお母さんを超えるということはとても難しいことですよね。

 赤塚さんが漫画家を志した当時の時代背景から考えて、「漫画家になる」という選択は、現代よりも大変なことが多かったのではないかと思います。赤塚さんのお母さんは、そんな彼を、世の中の固定概念とは関係なく心から応援されてきました。

 普段の私は創作者の側ですので、周囲からはハチャメチャに感じる赤塚さんの奥にある「産みの苦しみ」というのも、とても理解できるんですね。妻の側から見た赤塚不二夫と、赤塚さんご本人、両方の気持ちに共感できました。

 ◆怒ることは愛情のひとつ

 赤塚不二夫役の浅野忠信さんは、撮影が進むにつれてどんどん赤塚さんに似てきて、最後にはご本人そのままのようでした(笑)。

 お母さん役のいしだあゆみさんは本当に包容力があって、情熱的で愛情深い方なんです。すぐにスタッフ全員のお母さん的な存在になられたので、「お母さんが1番で、私は2番」という台詞がすんなり納得できて、役に入り込むことができました。

 佐藤英明監督は、少年のように情熱的な方。毎日、現場に赤塚不二夫Tシャツを着ていらしてました。作品への想いが満ちあふれていらっしゃるんですね。私も監督の情熱に乗っかったような気持ちになり、お母さんのお通夜で「母ちゃんと一緒に死ぬ!」と遺体にすがる赤塚さんを諫めるシーンでは感情がバーッとあふれて、浅野さんをバシバシ叩いていました。

 トシ子さんは、赤塚さんが生きて描き続けることが彼の使命だと信じている。だから、どんなバカなことをしても止めないけれど、彼の使命に反することには厳しい。怒るということは愛情のひとつなのだと、この役を演じて強く感じました。

 ◆蒸し野菜料理が好きです

 映画の中で、堀北真希さん演じる武田編集者を、手料理でもてなして二人でお酒を飲むシーンがあります。

 いまはお客さまをおもてなしするのって、テーブルコーディネートを考えたり、とても「よそいき」な感じになりますよね。ところがそのシーンでは、炒めものとか、普段のおかずをさっと作って、飾らずに出すんです。ああ、昔はどこの家庭でもそうだったなあと、懐かしく温かい気持ちになりました。

 私も、人とおしゃべりしながらごはんを食べるのが大好きなので、家にはしょっちゅうお客さまがいらっしゃいます。もともと、健康には自信があって、3時間も眠れば大丈夫なのですが、仕事柄、ビタミン不足とスタイル維持には気をつけています。そうしないと、すぐ太ってしまうんですよ。だから野菜料理はよく作りますね。

 家では、会津の職人さんにオーダーして作ってもらった土鍋の大鍋が大活躍していて、それで旬の野菜をたっぷり蒸して、食卓に出すことが多いです。家族もみんなお気に入りで、好き嫌いなく食べてくれます。春はキャベツなんかもいいですね。

 好きなものを我慢せずに食べられる身体にするには、いっぱい動いて筋肉をつけることも大切。実はアクションも大好きなんです。アクティブな役にもどんどん挑戦したいですね。この映画の「何かに向かって、がむしゃらに走り続ける」パワーと強さから、元気を受け取ってもらえたらうれしいです。

 ●プロフィール

 きむら・たえ 1971年東京都生まれ。舞台、映画、テレビドラマなど出演作多数。ドラマ『リング~最終章~』と『らせん』の山村貞子役で注目され、以降『救命病棟24時』の山城紗江子役や『白い巨塔』の林田加奈子役、『大奥』、『ぐるりのこと。』、『ゼロの焦点』(日本アカデミー賞優秀助演女優賞受賞)、『東京島』など立て続けに出演して注目を浴びる。『ぐるりのこと。』(08)では、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞・ブルーリボン賞 主演女優賞などを受賞。

 ●『これでいいのだ!!映画★赤塚不二夫』4月30日(土)全国ロードショー

 『おそ松くん』『天才バカボン』などで知られる“ギャグ漫画の王様”赤塚不二夫の“笑撃”人生を映画化。小学館の名物編集者・武居俊樹が赤塚との35年にわたる交流を綴った原作『赤塚不二夫のことを書いたのだ!!』を基に、ギャグに命を捧げる二人の衝撃的な人生を脚色したコメディ。

 監督:佐藤英明

 キャスト:浅野忠信・堀北真希・阿部力・木村多江・いしだあゆみ・佐藤浩市ほか

 配給:東映

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