72候を楽しむ漢方スローライフ(89)蒙霧升降す
ほのかに漂う秋の気配
(立秋末候 8月17~22日頃)
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森や水面に、霧が白く立ち込める頃。朝夕の空気には、ほんの少し、ひんやりとした心地良さが感じられます。とはいえ、お盆を迎えるこの時期はまだ暑さの盛り。冷麦、きゅうり、トマトなど、身体を整える夏の食材を上手に取り入れて、日々の食事でおいしく暑気払いをしましょう。
●「夏バテ」していませんか?
厳しい暑さが続く8月。長引く食欲不振や睡眠不足で、夏バテ気味の人も多いのでは?
漢方では、夏は湿気が多く、身体に「湿(余分な水分や汚れ)」がたまりやすくなると考えます。また、暑さで冷たいものをたくさん取り、胃腸を冷やしてしまうことも少なくありません。こうした湿や冷えは、胃腸の働きを低下させるため、食欲不振や下痢などを起こしがちに。すると、栄養を十分取れず、暑さで消耗した体力を回復できなくなり、夏バテを起こしてしまうのです。
夏の疲れを引きずると、秋になって風邪をひきやすくなる心配も。暑さを乗り切り、秋を元気に過ごすためにも、夏バテは早めに解消しておきましょう。
●「胃腸」を整え、しっかり栄養を
「夏バテ気味かな?」と感じたら、食欲を取り戻し、しっかり栄養を取ることが大切。疲労感やむくみ、食欲不振、身体がだる重い、といった不調があれば、胃腸が弱っているサインと考えて積極的にケアしましょう。
養生のポイントは、水分の取り過ぎ、冷たい飲食に注意して、胃腸に負担をかけないこと。香りの良い薬味や酸味なども使い、食欲を増す工夫も大切です。
食材は、胃腸を整えて体力を養う豚肉、にんじん、しいたけ、オクラ、しょうが、身体の熱を冷ますもやし、冬瓜、トマトなどを積極的に取りましょう。
◆ハレの日薬膳レシピ:冬瓜とにんじんのそぼろあんかけ
元気な胃腸と食欲を維持して夏バテを解消
エネルギー129kcal たんぱく質8.6g 塩分1.2g(1人分)
<材料・2人分>
・冬瓜(皮つき)………………………400g
・にんじん……………………………20g
・干ししいたけ………………………1個
A・豚ひき肉……………………………80g
A・おろししょうが……………小さじ1/2
A・油……………………………小さじ1/2
B・だし汁……………………………200ml
B・しょうゆ………………………小さじ1
B・砂糖……………………………小さじ1
B・塩……………………………小さじ1/4
・片栗粉……………………………小さじ1
・水…………………………………小さじ2
・オクラ…………………………………2本
<作り方>
(1)冬瓜は種とワタを除き、3cm角に切って皮を薄くむく。にんじんは1cm角に切る。干ししいたけは水で戻し、1cmの色紙切りにする。
(2)鍋を温めてAを入れ、豚ひき肉を炒める。
(3)(2)にBのだし汁と調味料、(1)の野菜を加えて弱火で約20分、煮汁が半分になるくらいまで煮る。輪切りにしたオクラを加える。
(4)水溶き片栗粉をつくり(3)に入れてとろみをつけ、器に盛る。
レシピ=葭谷麻利子(東京栄養士薬膳研究会)
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24節気72候は、古代中国で始まった暦が日本でも取り入れられ、風土気候に合わせ明治まで使われていました。日々の中に少しずつ感じられる季節の移ろいを、楽しみましょう。