ヘルシートーク:女優・歌手 島田歌穂さん

2024.01.01 342号 05面

映画『カムイのうた』 (C)シネボイス

映画『カムイのうた』 (C)シネボイス

◆作品を通して知ってほしい アイヌ文化を後世に残した実在の女性

アイヌ民族が口頭伝承してきた「ユーカラ」と呼ばれる叙事詩を日本語に翻訳し、後世に残した実在の人物・知里幸惠をモデルにした物語を描く、映画『カムイのうた』。主人公の伯母・イヌイェマツ役を演じた島田歌穂さんに、ユーカラにまつわる話や撮影秘話、さらに大好きな果物や野菜についても伺いました。

●自分にしか分からない楽譜をつくり何度も練習を重ねたユーカラ

この作品のお話をいただいた時、父が北海道出身なのに、アイヌの文化や歴史について何も知らなかったと愕がく然としました。そして、こんなにも深いテーマの物語の中で、アイヌの方々にとって大切なユーカラを私が歌わせていただいていいのだろうか、と感じたんです。でも、「アイヌ民族に伝わる叙事詩ユーカラは、絶対に歌穂さんに歌ってほしい」– 監督やプロデューサーからそんな言葉をいただき、恐れ多いと思いながらも、全身全霊で頑張ろうと引き受けることを決めました。

とは言え、ユーカラは全く未知の世界。歌い方を見出すのは、想像以上に難しいものでした。アイヌの言葉は初めてですし、ユーカラには楽譜がないんです。歌い手さんに録音してもらった音源を何度聴いても、五線譜に表現できるものではないと思いました。

カタカナとローマ字で書かれた歌詞をレポート用紙に書き、そこに耳で聴いた音を、自分にしか分からない記号で書いていったんです。音の上がったり下がったりは矢印をつけて、こぶしの所に~と記したり(笑)。私にしか分からない楽譜をつくり、約1カ月、練習を繰り返しました。

撮影前には一度北海道に行き、この作品を監修されている藤村久和先生にユーカラのレッスンをしていただきました。不安で仕方がなかった私に藤村先生が教えてくださったのは、ユーカラは自由だということ。同じ歌でも、地方や歌い手さんによって全くメロディーが異なり、10時間以上歌い続けることもあれば、気分がのらないからと2~3分で終わることもあると。型にとらわれず、自由に歌えばいいと言ってくださったことで肩の力が抜け、自分の中から自然にあふれ出るような歌い方が見つかりました。

●北海道東川町にある文化財の中にアイヌの暮らしを再現

映画のモデルになった知里幸惠さんは、19歳という若さでこの世を去った実在の人物。はかない命を削りながらも、アイヌの文化を後世に残すという、大きな使命を果たすべく生を受けた方だったんだと思います。アイヌの真実や、時代の波に負けず、誇り高く、素晴らしい作品を残した1人の女性がいたことを、この映画を通して知っていただければと思いますね。

撮影を行ったのは、昨年の夏頃。主人公のテルと、私が演じたテルの伯母・イヌイェマツが暮らす家は、北海道東川町にある文化財の中につくられたんです。アイヌの方々の生活をそのまま再現した空間は、一歩足を踏み入れた瞬間、当時を彷彿させるような空気感に包まれ、自然と役に入ることができました。

イヌイェマツを演じる上で大切にしたのは、さりげなくテルを支えられる存在でいること。縫い物をしながらテルを見守ったり、自然な生活感も出せるように試行錯誤しながら演じました。

劇中、果物が出てくるシーンがあるんです。テルが東京に向かう時、イヌイェマツはおにぎりだけを手渡すのですが、上野駅に着いたテルは、りんごをたくさん入れた籠を持っているんですよね。きっとそれは、イヌイェマツが「青森駅に着いたらりんごを買ってお土産にしなさい」と、テルに伝えていたからだろうなと思っています。

いまでも思い出すのは、撮影帰りに食べたさくらんぼ。さくらんぼ農家さんの所に立ち寄り、とれ立てをいただいたんです。立派な形をしていて、本当においしかったんですよね。箱いっぱいのさくらんぼを買って帰りました(笑)。

●スティック状に切った野菜を麦みそにつけて食べるのが定番

毎朝欠かさずに食べているのは、りんごとバナナです。適当な大きさにカットして、ヨーグルトとはちみつをかけたものを食べるのがルーティン。5年以上続けていますね。

主人も音楽家なので、互いに身体が資本。野菜は大好きですし、毎日取るようにしています。トマト、きゅうり、大根、ピーマン、エシャロットは、冷蔵庫に欠かさないですね。夕飯の一品目は、大きなお皿にスティック状に切った野菜をいろいろ並べて、麦みそなどにつけて食べるのがわが家の定番。主人は、ピーマンも生のまま、バリバリと食べています(笑)。冬が旬のブロッコリーは、栄養素のことを考えると蒸した方がいいとは思うのですが、サッとゆでてマヨネーズをつけて食べるのが、やっぱり一番。季節に関係なく食べている気がします。納豆も365日、免疫アップのために欠かしません。

これから断然多くなるのが鍋料理。野菜がたくさん取れるので風邪予防にもなりますよね。以前、主人は豆乳が少し苦手だったのですが、身体のことを考えて飲むようになったこともあり、豆乳鍋をつくることが増えました。コンサートや舞台初日の前夜には、必ずウナギを食べると決めているんです。スーパーで購入したウナギで充分なんです。「よし、明日頑張るぞ!」という気持ちになります。特にコロナ禍以降は、ほとんど家で食事をするようになったので、仕事帰りは、ほぼ毎日スーパーへ。周囲に気づかれることもなく、普通に主婦してますよ(笑)。

今年でデビュー50周年を迎えます。この映画を機に、これからも、いろいろなジャンルの歌やお芝居に挑戦したいですね。

●プロフィル

しまだ・かほ 1974年、子役デビュー。87年、ミュージカル『レ・ミゼラブル』初演で脚光を浴び、出演回数は1,000回を超えた。主な出演作品は『ウエストサイド・ストーリー』『黙阿弥オペラ』『飢餓海峡』『ビリー・エリオット』『メリー・ポピンズ』『Endl ess SHOCK 』など。芸術選奨文部大臣新人賞、紀伊國屋演劇賞個人賞、読売演劇大賞優秀女優賞など受賞多数。現在、大阪芸術大学教授。今年、デビュー50周年を迎えた。

ニット、パンツ(セラビ/東京都渋谷区千駄ヶ谷3-28-1 TEL 03-3404-6189)、イヤリング、ネックレス(アビステ/東京都港区南青山3-18-17 エイジービル TEL 03-3401-7124)

◆映画『カムイのうた』 1月26日(金)より全国順次公開

弱冠19歳にして、文字を持たないアイヌ民族が口頭伝承してきた叙事詩ユーカラを日本語訳し、「アイヌ神謡集」として後世に残した実在の人物・知里幸惠の壮絶な人生を描いた物語。アイヌ民族の史実が、胸を揺さぶる!

[キャスト]吉田美月喜、望月歩、島田歌穂、清水美砂、加藤雅也[監督・脚本]菅原浩志[主題歌]島田歌穂「カムイのうた」

[公式サイト]https://kamuinouta.jp/

[配給]トリプルアップ

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