ヘルシートーク:夫婦ユニット しんすけ・かい夫婦
◆いつもの和食を簡単に格上げするには 味を決定づける“ひと手間”をかけること
しんすけ・かい夫婦は、和食料理人歴15年の夫「しんすけ」さんと、彼がつくる家庭料理をSNSで発信する妻「かい」さんのユニット。ちょっとしたひと手間を加えたレシピが「おいしすぎる!」と話題です。しんすけさんに和食をプロの味に格上げする簡単なひと手間、失敗しないためのコツを伺いました。
●料理のおいしさを左右する「かける手間」と「省く手間」
SNSでレシピ投稿を始めた頃から「ほんのひと手間でワンランクアップする料理」にこだわって発信を続けています。「かける手間」と「省く手間」を見極めて、簡単なひと手間を加えれば、普段の料理も格段においしくなるからです。例えば、魚料理で「かける手間」は、酒・塩・水を合わせた「立て塩」に魚をつけること。20~30分つけるだけで、魚の臭みがとれるのはもちろん、煮物や焼き物の味もおいしく仕上がります。肉料理には、少しの塩と砂糖で下味をつける手間をかければ、肉の中まで味が染み込むんですよね。
「省く手間」は、料理の見た目をキレイにするなど、お店で行うような手間のこと。毎日の食事作りは大変なので、味の核となる「かける手間」だけを加えればいいと思っています。
普段の和食をプロの味に格上げするには、食材の大きさをできるだけ揃えて切るのがポイントです。火の通りが均一になるので、味むらなく仕上がりますし、野菜を下ゆでする場合も時間が統一できます。うちは子どもが3人いるのですが、食材の大きさが揃っていれば、どれを盛りつけても同じ量になるので、喧嘩にならずにすむんです(笑)。
レシピ通りにつくったのに、おいしくできなかったことはありませんか? 食材の水気をしっかり切っていないと、余計な水分が入って味がぶれてしまいます。とくに魚は水気が残っていると臭みのもとにもなってしまうので、ペーパータオルできちんと拭きとることが大切。サバなど臭みのある魚は、しもふりや立て塩などの下処理を行うと格段においしさがアップします。
●味が染みたおいしい煮物は食べる前日につくるのがコツ
和食の基本でもある煮物料理。実は、冷める過程で味が染み込んでいくので、食べる前日につくることが、おいしさを底上げする秘訣です。火を通しすぎてしまうと煮崩れてしまうため時間に注意し、好みの味より少し薄めの状態で火を止めることが大事。粗熱がとれたら保存容器に入れて冷蔵庫でひと晩寝かせると、味がぐっと染み込んだおいしい煮物が食べられますよ。
煮物のように、和食は寝かせる工程でおいしく仕上がる料理も多いんです。だから、週末に魚の下ごしらえをして、みそに漬けて冷凍しておくことも。忙しい日は、それを解凍してトースターで焼くだけで、おいしい一品になりますからね。
和食作りが苦手、ハードルが高いと感じているなら、まずはみそ汁や豚汁をつくってみるのがいいと思います。食材を同じ大きさに切る練習になりますし、味は多少失敗しても食材に火が通っていれば大丈夫(笑)。かつお節と昆布からだしをとることも一度はチャレンジしてほしいですね。ただ、毎日の料理は無理なくつくることが大事なので、和風だしの素で十分だと思います。
煮物をつくるなら、具材が少なく、炒めたり、煮込んだりなどバランスよく調理工程が入っている「肉じゃが」が和食料理初心者におすすめです。
ただし、味を染み込ませようと、じゃがいもを触りすぎてしまうと失敗する要因に。じゃがいもがしっかりつかる程度のだし汁をつくり、落としぶたと外ぶたをして、蒸し器のような状態にすれば、しっかり火は入ります。とはいえ、料理を始めた頃は、煮崩れてだし汁までどろっとなるという失敗を何度もしたものです(苦笑)。
●ゆで時間は20秒でOK!旬のほうれん草はおひたしで
いまの時期は白菜がおいしいので、著書にも掲載しているレシピ「豚バラ白菜煮」や「豚のすき煮」がおすすめです。火を通しすぎてしまうと肉がかたくなったり、パサついてしまうのですが、2品ともかたくなりにくい豚バラ肉を使っているので、失敗なくつくれると思います。煮込む料理の時は豚バラ肉を使うと、肉の甘い脂を野菜が吸って、うま味がアップするんです。
旬のほうれん草や小松菜は、シンプルな味つけのおひたしにすると、素材のおいしさが存分に楽しめます。つくる時に大事なのは、ゆで加減。茎と葉に分け、ほうれん草の場合は沸騰した湯に茎を入れて10秒、すぐに葉を加えて10秒ゆでるだけ。湯をしっかり沸騰させておけば、ほうれん草を加えた時に温度が下がりすぎず、短い時間でも十分火が入ります。その後、ザルに上げて流水で冷やし、しっかり絞ればベストな食感に。小松菜も同じ要領でゆで時間を10秒ほどのばせばOKです。
先日、春菊をたくさんいただいたので、天ぷらをつくったんです。でも、油が少なかったせいか、とんでもなくオイリーに仕上がってしまいました(苦笑)。私自身、いまでも上手につくれないことがありますし、これまでも数え切れないほど失敗を繰り返しています。だから失敗を気にせず、まずはつくってみることが大事だと思います。
最近、新たに始めたのがオンライン料理教室です。この料理教室を通して、煮物やおひたしなど和食の基本の作り方を覚えてほしいと思っています。難しそうに見える和食も、一度作り方を覚えてしまえば、味つけなどは体感で応用できるようになり、料理の幅も広がっていくはずです。
●プロフィル
和食料理人の夫しんすけ氏と、SNS編集・発信を担当する妻かい氏の夫婦ユニット。12歳、8歳、3歳の3姉妹との5人家族。Nadia Artistとして活躍中。「ほんのひと手間でワンランクアップする料理」をテーマに、身近で手に入る食材でプロの味が楽しめる家庭料理を考案。SNSやNadiaなどで「おいしすぎる!」と話題を集めている。Instagramのフォロワー数は16万人(2024年11月現在)。
◆NEW Book
『TJMOOK 和食料理人夫婦が教える 毎日食べたい和そうざい』
しんすけ・かい夫婦著/宝島社 定価:1320円(税込)