事業承継問題、コロナ禍で顕著に 溝渕雅男弁護士が「再生型M&A」を解説

総合 ニュース 2020.10.09 12129号 09面

 【関西】新型コロナの終息が見えない中、外食産業や業務用市場のダメージは計り知れない。巣ごもり需要で好調な家庭用市場も、コスト増大、競争激化、消費者の生活防衛意識の高まりで予断を許さない。事業の持続性が不透明になると、中小の食品企業が後継者を見つけるのがこれまで以上に難しくなり、事業承継も危ぶまれる。だが、M&Aにより、事業の承継と事業の再生を同時に実現できるケースもある。そこで、事業再生や事業承継などの企業法務に詳しい溝渕雅男弁護士(大阪市中央区、共栄法律事務所)に「再生型M&A」を解説してもらった。(服部泰平)

 ●ウイズコロナ時代こそ再生型M&Aは選択肢

 新型コロナに関連する特例的な融資などにより、何とか資金をつないでいる企業も多い。しかし外食産業では、ソーシャルディスタンス確保のための席数減少や大人数での会食の抑制などにより、売上げ回復までの道は遠い。また、好調な家庭用市場でも、環境変化と競争の激化で、もともと資金力が弱いところがますます疲へいする。

 ひとたび資金ショートを起こすと、企業は突然死し、破産申し立て以外の選択肢はなくなる。破産に至る前に、再生型のM&Aも検討すべきだ。

 通常のM&Aで、買主は、対象企業の資産・負債・契約関係などの一切を、株式を購入することによって取得する。

 他方、再生企業は、資産よりも負債の方が多いため、株式譲渡により、それらを丸ごと引き受けるようなスポンサーは現れない。そのため、再生企業についてのM&Aでは、株式譲渡ではなく、当該企業の優良部門などのみを切り離す事業譲渡・会社分割といった手法が用いられる。

 例えば、資産2億円、負債5億円という企業があったとする。そして、仕入れ先に対する買掛金などの取引債務が1億5000万円、残り3億5000万円は金融機関からの借入金だとする。

 この場合、スポンサーは、事業譲渡・会社分割により、資産2億円と取引負債1億5000万円を引き受け、その差額5000万円を対象企業に支払う(実際には、資産価値に一定ののれん代を上乗せすることも多い)。

 スポンサーは、事業価値に見合う負担で事業を取得できる。また、再生企業は、破産とは異なり、従業員の雇用維持などは実現できる。

 この場合、スポンサーがM&Aの対価としていくら支払うべきかが問題となる(金融機関としても、破産されるよりもM&Aの方が有利であるという事情が必要となる)。また、金融機関に対して処理内容を説明し、了解を得ることも必要である。

 これらの処理は、事業再生に精通した弁護士の協力が必要不可欠となる。

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