海外ブランドビール特集
◆海外ブランドビール特集:家飲み浸透でニーズ顕在化 高単価でもこだわり品を
海外ブランドビールが量販店をはじめとする家庭用市場で存在感を増している。コロナ禍で料飲店は時短営業や休業が強いられ、長く主戦場としてきた業務用市場は先が見えない苦境が続く。一方、家飲みの浸透で高単価でも、こだわりのあるよいものを選ぶニーズが顕在化。小売店頭での露出が高まっており、インポーター各社も提案を強めている。(丸山正和)
●今夏、銘柄間競争が激化
海外ブランドはアメリカ産の「バドワイザー」、メキシコ産の「コロナ」など、輸入やライセンスによる国内生産のビール。多様な味わいや各ブランドが持つ歴史や物語性、ボトル入りの見た目といった個性が魅力で、ビアパブや各種専門店で楽しまれてきた。
昨年来のコロナ禍で、業務用はこれまでにない厳しい状況に見舞われている。インポーターは店舗訪問などの営業活動が制限される中で、SNSやオンライン会議ツールを活用して納入先と情報を交換。環境変化を見極めながら、的確な支援策を講じる構えだ。
もう一つ大きな販売の場となってきたのが、ベルギービールウィークエンドやオクトーバーフェストといったビールイベント。ヘビーユーザーはもちろん若年層や女性のトライアルユーザーの参加も多く、特にここ数年は販売量の確保や市場の裾野拡大に貢献してきた。こちらも多くが延期や中止に追い込まれ打ち手がない。
こうした中、数少ない明るい材料が、巣ごもり生活の浸透による家飲みで増える、高付加価値のビールを楽しみたいというニーズだ。この動きを受け小売店では「世界のビール」や「バラエティビール」といったコーナーが広がり、インポーター各社は業務用の支援に軸足を置きつつ、家庭用での提案を強化している。
ベルギービールを中心に特製グラスとのセット販売が広がっているほか、大手銘柄ではハロウィーンなどの年間催事にあわせたキャンペーンを積極化。売場の拡大に対応して配荷率を高めようと努める。
ビールについては昨年10月に酒税法改定による減税があってから、飲用意向が高まっている。また、キリンビールが缶入りクラフトブランドの販売を本格化していることの効果も大きい。同社は「クラフトビール拡大宣言」を掲げ情報発信を強めており、高単価ビールへの注目は続きそうだ。
21年は夏以降、小売店でのさらなる競争激化が予想される。今後の生き残りをかけ、味わいや物語性といったブランドの個性や魅力を、いかに伝えていくか。業界各社の手腕が試される。