ドラッグストア特集

ドラッグストア特集:数字から見るドラッグストア 総店舗数2万店突破

小売 2019.05.03 11872号 04面

日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が3月に発表した2018年度版「日本のドラッグストア実態調査」によると、全国総売上高は6.2%増の7兆2744億円となり、17年度の5.5%増を上回る増収率となった。食品・調剤の拡大が続き、店舗の大型化も進行している。主要企業の業績は、JACDSの18年度統計とおおよそ合致する17年度実績では2桁の増収増益が目立った。ただ、18年度は既存店の伸びの鈍化や販管費比率の上昇で営業減益を見込むチェーンが増加しており、成長に減速感もみられる。(宮川耕平)

調査企業数409社の総店舗数は2万0228店、純増数は694店だった。この10年で企業数は7割に集約される一方、店舗数は3割増えている。500平方m(150坪)以上の大型店の割合は60.6%に高まったが、1000平方m(300坪)を超える店舗の割合は0.5ポイント減の14.9%だった。

1店舗当たりの売上高は2.5%増の3億5962万円と過去最高を更新した。2万店を突破した総店舗数と合わせ、ドラッグストア(DgS)業態の成長ペースは加速している。

商品分類別にみると、食品を含む「その他」の伸長率が最も高く9.5%増だった。売上高は1兆9468億円で2兆円に迫り、構成比は「医薬品」に次いで高く26.7%となっている。「医薬品」(5.1%増)と「化粧品」(5.6%増)の伸びに比べると、「日用雑貨」(4.3%増)の伸長率は鈍かった。各社が戦略的に食品・調剤を強化していることや、化粧品をはじめとするビューティーケアでインバウンド需要が大きいことも要因となっている。

主要DgSチェーンの17年度業績は、JACDSの統計と呼応するように総じて好調だ。合併などの効果もあり2桁の増収となるチェーンは表1の18社中8社、2桁増益となるチェーンも8社あった。既存店ベースでも16社5事業のうち前年クリアが15社4事業となっている。上位ほど粗利益率、販管費比率が改善しており、下位になると営業減益となる企業も増える。

食品の拡大は続き、表3の14社中7社が2桁伸長となった。コスモス薬品の食品売上高は3134億7000万円、DgSで初めて3000億円を突破した。1000億円を超えるチェーンは前年より2社増えて7社となった。

食品構成比が最も高いGenky DrugStores(ゲンキー)は、58.7%と6割に迫る。次いでコスモス薬品も50%を超えている。40%台は2社、30%台は4社といずれも前年と変わらないが、クリエイトエス・ディーとクスリのアオキホールディングスの2社は40%を目前にしている。食品の構成比が10%を切るマツモトキヨシホールディングス(HD)は、大手DgSでは例外的なケースになりつつある。食品の売上げそのものが減少しているのは同社だけだ。 総じて好調な17年度に対し、18年度は様相が変わりそうだ。18年度業績は決算月の関係で大半が見通しの数値だが、営業減益となる企業の割合は前年の2割強から4割弱に増えている。増益となるチェーンも営業利益率は総じて低下する見込みだ。要因はさまざまだが、ほかの小売業種と同様に人件費や光熱費は上昇している。

売上げの拡大は続くものの、既存店の推移は18年11月ごろから前年割れも散見されるようになってきた。図6ではフォーマットの特徴別に代表的な3社の月次動向を比較した。11月からマツモトキヨシHDは前年割れが続き、コスモス薬品の伸びも鈍化している。ウエルシアHDは高い伸長率を続けており、既存店の推移はチェーン間の差が大きい。

食品の粗利益率はDgS商材の中では低く、構成比が高まるほど利益率の低下要因になりかねない。一方で回転率の高い商材であることから、補充などの作業量は増える。食品の拡大は売上げ増や来店頻度の向上につながるものの、粗利益率と販管費の両面で対策が必要だ。食品の構成比アップが数年のうちに急速に進んだチェーンも多く、作業効率の適正化のために従来の人時計画を見直す動きもみられる。

粗利益率の改善に向けたアプローチで多いのは、ヘルスケアとビューティーケア領域を再強化する動きだ。コスモス薬品のように食品ディスカウントで伸長してきたフォーマットでも、医薬品・化粧品への取組みを見直している。

食品PB(自主企画)商品の開発も一段と進みそうだ。日配・加工食品だけで1000億円を超える売上げは、食品スーパーでいえば2000億円規模のチェーンの販売力に相当する。DgS内の差別化や異業種との対抗上も、食品分野におけるオリジナル商品の必要性は高まっている。

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