ドラッグストア特集

ドラッグストア特集:電子タグ利用基盤の構築 3社で店舗実証実験

小売 2019.05.03 11872号 07面
(左)=ココカラファイン清澄白河店 (右)=同店では来店客に電子タグ実証実験の実施をチラシなどで告知した

(左)=ココカラファイン清澄白河店 (右)=同店では来店客に電子タグ実証実験の実施をチラシなどで告知した

(左)=電子タグ実証実験を実施したウエルシア千代田御茶ノ水店 (右)=同店では、ほぼすべての商品に電子タグを貼り付けた

(左)=電子タグ実証実験を実施したウエルシア千代田御茶ノ水店 (右)=同店では、ほぼすべての商品に電子タグを貼り付けた

ツルハドラッグ目黒中根店

ツルハドラッグ目黒中根店

25年に産業規模10兆円を目指すドラッグストア業界の人手不足が深刻化する中で業態の専門性を強化するに当たっては、店内作業の軽減を必要としている。店内作業軽減へ革命を起こす切り札として、大きな期待を寄せているのが電子タグ利用基盤の構築だ。このため、業界団体の日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は、25年までに年間1000億枚規模の電子タグで取扱商品すべての個品管理を行うこととして、18年3月16日に経済産業省と共同宣言を発表した。セブン-イレブン・ジャパンなどコンビニエンスストア(CVS)大手5社が17年4月18日に、経産省とともに宣言した趣旨に業界団体として初めて同意したものだ。

同宣言に基づくDgSの電子タグ実証実験を、ウエルシア薬局、ココカラファイン、ツルハの3社がウエルシア千代田御茶ノ水店(東京都千代田区)、ココカラファイン清澄白河店(東京都江東区)、ツルハドラッグ目黒中根店(東京都目黒区)とそれぞれの店舗で2月12~28日に実施した。

同実験は、大日本印刷が実験的に構築したサプライチェーン情報共有システムについてサプライチェーンのプレーヤー間の連携などを検証する目的で行われた。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がサプライチェーンの可視化を行うため、電子タグがもたらす商品の移動情報をコンピューター・サーバー上に蓄え共有するシステムの構築を大日本印刷に委託したものだ。

同サプライチェーン情報共有システムは、商品に貼付された電子タグが電子タグ読み取り装置を通過した際、時間、場所の情報をコンピューター・サーバーへ送り、コンピューター・サーバーはその情報を蓄積、メーカー、卸や配送センター、小売は、個々の商品に貼付した電子タグがもたらす情報とともに製造実績、在庫、消費期限、出荷、入荷、販売の各情報を分析できるという仕組みだ。

ウエルシア薬局は2月15日から28日までの14日間、ウエルシア薬局千代田御茶ノ水店でレジでの電子タグの読み取り率を検証した。全商品に電子タグを貼り付けレジを通過する際にどの程度正しく読み取りが可能かを、店舗のレジの従来通りのオペレーションを運用する中で確かめた。このほか、棚卸し作業の効率化も検証した。電子タグの読み取りと通常の方法を比較したほか、電子タグ読み取りの誤差率も検証した。今回の店舗での実証実験で、ウエルシア薬局千代田御茶ノ水店ではほぼすべての商品に電子タグを貼り付けた。

電子タグとは、電波を利用して非接触で個体を識別するアンテナとICチップからなるタグ(札)形状の電子部品。バーコード(JANシンボル)のように、ほぼすべての商品に電子タグが貼り付けられれば、電子タグに記録された情報を電波で読み取ることで、いつ、どこに、何の商品が、どの程度流通しているかを簡単に把握できるようになる。

大手CVS5社と経産省の宣言は、年間1000億品と推定されるCVS5社すべての取扱商品について、一品一品に貼り付けられた電子タグを通じて管理する個品管理の仕組みを25年までに実現するというものだ。JACDSと経産省の宣言もそれを踏まえた。宣言には、以下の二つの留保条件がある。(1)レンジ温め、金属容器、冷凍・冷蔵、極細形状など特殊な条件がない商品に貼付する“普及型”の電子タグの単価(ICチップ+アンテナ+シール化などのタグの加工に関する費用)が1円以下になっていること(2)メーカーが商品に電子タグを付ける“ソースタギング”が実現し、商品のほぼすべてを電子タグで管理できる環境が整備されていること–の二つだ。

経産省によると、現在の電子タグの最安値は1枚5円という。ソースタギングのコストは、利便性を享受するはずの最終消費者に転換する方向だ。(川崎博之)

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら