こめ油特集
◆こめ油特集:急成長の市場規模 風味、クセのなさ、万能性などで需要拡大
米ぬかを原料とするこめ油は近年、市場規模を急速に拡大し、食用油を代表する成長カテゴリーとなっている。健康価値の報道を契機に、14、15年から注目を集めると、優れた風味や食感維持、生使い・加熱の両用途に対応できる万能性などで需要が拡大。ここ数年は大手の新規参入を含めた露出アップや使い方提案が活発化し、家庭用市場は18年、大幅な2桁増となる67億円(本紙推定)となった。19年も4~6月が前年超えで推移するなど、出足は順調。既存汎用油からのシフトが進めば、将来的には100億円到達の可能性も十分ある。一方で、原料となる米ぬかの調達は依然として難化。特に国産米ぬかは競合の垣根を越えた調達施策が求められ、成長への鍵を握る。(佐藤路登世、村岡直樹)
市場は近年、急速な右肩上がりで成長。家庭用市場は15年、30億円に肉薄すると16年は40億円に到達。17年は反動が危惧されたが50億円を大きく超え、18年も伸び率を維持した。
特に17、18年は大手の本格参入によって売場を拡大し、店頭品数も大きく増加し、認知を高めた。かつては10億円未満の小規模市場だったこめ油だが、12年比で市場は13倍強となり、食用油全体の規模拡大にも機能するなど、一躍注目カテゴリーに成長している
こめ油は健康価値へのクローズアップにより脚光を集めたが、風味の良さとクセのなさを両立する優れた味覚特性や、調理時の油酔いやベタつきの少なさなどの優れた価値を元来から持つ。
中でも「クセの少なさ」は、オリーブオイルやごま油など風味に特徴を持つ成長カテゴリーとは真逆に位置するものでこれが優れた万能性として差別化につながっている。
さらに、米ぬかという日本文化に根差した油種であることから、“東洋のオリーブオイル”として消費者イメージも良好に働いている。
使い勝手も含めたこれらの特性こそが、トライアルをリピート化している最大要因であり、近年の規模拡大の基盤となっている。
一方で、原料である米ぬかの調達は、依然厳しい局面が続く。特に国産米ぬか不足は、コメ消費に絡む重要課題であり、抜本的な解決策が求められる。
こめ油搾油メーカーなどで構成される日本こめ油工業協同組合では、国産米ぬかの調達策として、こめ油の油糧米を作る「油田」なども検討していく考えを表明。輸入関連でも18年春からブラジル産こめ油・関連品の関税率がアップ、収益環境を圧迫している。
これら原料環境や、物流費に代表される国内コスト環境の悪化に対応し、安定調達を実現するためには、適時での価格適正化が不可欠。需要の高いこめ油だけに、その重要性は今後さらに増すだろう。
19年も順調な出足をみせていることや、食用油全般の健康価値への見直しが定着化していること、専業搾油メーカー・フルラインメーカーがともに市場拡大に取り組んでいることなどを背景に、成長基調は維持すると思われる。購入率の低さから伸びしろも多く、今後、小容量などによる間口拡大や生食・加熱調理を網羅する万能性訴求が軌道に乗れば、中長期的に右肩上がりを継続する可能性が高い。
将来的には家庭用で100億円規模に到達する可能性も十分で、本紙では2025年をめどに到達すると予想する。