こめ油、需要好調も環境悪化 安易な安売り成長阻害に
米ぬかを原料とする家庭用こめ油が、需要好調と環境悪化のはざまに直面している。ここ10年間で約20倍となる100億円強の市場規模に急伸し、今夏も伸長が見込まれる一方、コメ消費量の停滞に伴う原料調達の難化や価格高騰が市場を直撃。輸入面でも主力調達先での国内需要増を背景にタイト化が進んでいる。こめ油は、クセの無さや汎用(はんよう)性に優れ、健康価値も高く、加熱から生食まで幅広い用途に対応する食用油屈指の“万能選手”。業界では価格適正化を進めており、安易な特売・安売りは成長の芽を摘む可能性がある。
家庭用こめ油は今春、20年の内食・巣ごもり需要の反動が危惧された中、驚異的ともいえる前年増で推移。健康的価値の高い汎用油用途に加え、ドレッシング向けなどの生食用途や、特性を生かしたスイーツ・パン作りでの活用などが広がっており、トライアルを含めた他カテゴリーからのシフトはもちろん、大容量が好調に動くなどヘビーユーザー化も進んでいる。
この状況下、近年ではコメ消費量減退により、国産米ぬかの発生量が減少。国内食料自給率の改善にも直結するといわれる、国産米ぬか使用のこめ油は、原料調達が難しくなっている。輸入に目を向けても、大豆や菜種、パームなど主要油種の国際的高騰に伴い価格が上昇。特に主力調達先であるブラジル産は、同国内飼料向け需要が増大し、高騰している。
風味(おいしさ)、健康感、万能的用途など“スキのない”市場特性を持つこめ油は、いまだ十分な伸びしろを持つ。国産原料のみではパイ不足となることは否めないが、輸入原料使用品を含めると、家庭用200億円の大台を射程圏内にとらえる可能性も十分ある。
極めて好調な需要と、かつてないレベルでの調達困難のはざまにある現状だからこそ、安易な特売や安売りは健全な規模拡大の深刻な阻害要因となる。作り手・売り手の垣根を越えた価格適正化と価値訴求がまさに求められている。=関連記事7面(村岡直樹)