FF先行で植物肉パティに脚光 コロナ後の商機探る外食産業でも高い関心
ファストフード(FF)で植物肉を使ったメニューが増えている。2015年3月のモスバーガーを皮切りに、19年5月にロッテリア、昨年後半に3社から発売された。SDGsの盛況を背景にトレンドに敏感なFFが先行したもようだが、食品メーカーの開発は世界的に加速しており、アフターコロナの商機を探る外食産業でも関心が高まっている。市場拡大の課題は「ゆるベジ健康志向」の開拓だ。(千葉哲幸)
モスバーガーは「ソイパティ」(植物肉)の開発について、「固定観念にとらわれないメニュー開発の必要性」「おいしいの次に大事な医食同源という考え方」「もともと野菜にこだわっているが、さらにソイパティという選択肢を増やした」と発表している。
また「プラントベースで日本と世界を繋ぐ」を掲げコンサル事業を展開するフリーフロムの山崎寛斗代表は「食の多様性に配慮するという考え方は、19年まで急増したインバウンドに対するおもてなしが主流だったが、20年になってSDGsが一般的に論じられ、さらにコロナ禍で地球環境に対する意識が高まっている。昨年末に植物肉のメニュー化が進んだのは、それに対応した表れではないか」と語る。FFに集中している理由は「FFの商品開発は、世の中で売れている商品を取り入れるのではなく、トレンドをいち早くつかみとって売れる商品をつくっていく業界」(業界筋)と言う。
植物肉の開発は米国が先進国である。注目されるメーカーとして挙げられるのは米国ののビヨンドミート、インポッシブルフーズ、ベジタリアンブッチャー、台湾のベジファーム、香港のオムニミート、日本では大塚食品、日本ハム、ネクストミーツが挙げられる。
中でもネクストミーツは17年から研究をはじめ、プロダクトが完成した20年6月に法人化、同12月に総合商社の豊田通商とパートナーシップの基本合意を発表。今年1月にはアメリカ証券市場に参入するなど積極的な動きを見せる。
「焼肉のFF」をうたう焼肉ライク(50店舗)では、昨年10月から「フェイクミート」の実験販売を行い12月に全店導入。本品の植物肉にはネクストミーツを使用している。
今後の展望について山崎代表は「今、全部のメーカーが誰を対象にしようかと悩んでいる。本命の候補はビーガンやベジタリアンとは異なる、ベジオプションの考え方でいわゆる“ゆるベジ”といった健康志向の人。市場拡大の可能性はノンアルコールドリンクに近いニーズではないか。普段アルコールを飲む人が、今日は休肝日、これから車の運転、明日の朝が早いからという具合だ」と述べた。
米国のビヨンドミートの調査では購入者の95%が肉食の習慣がある人だという。植物肉のメーカーとそれをメニュー化する外食産業の切磋琢磨(せっさたくま)により、消費者の選択肢の一つとして、植物肉の市場拡大が見込まれる。