即席麺市場、カップ麺は「自分に合ったサイズ」のニーズ高まる

即席麺は年末商戦で需要を喚起していく

即席麺は年末商戦で需要を喚起していく

即席麺市場は、最需要期を迎えプラス成長に向けた展開が行われている。同市場は近年、過去最高を更新してきたが、2019年の即席麺の総需要は成長が鈍化している。6月の値上げや10月の消費増税、台風などの災害など、例年とは違った市場環境も影響している。カテゴリーでは、袋麺がマイナスとなり、カップ麺は前年並みで推移している。低調であるものの、年末商戦などで盛り上げていくことで、需要の喚起を図っていく。

値上げ後オープンプライス品の販売増

2019年は、2018年が即席麺誕生60周年など大きな話題のあった裏年に当たり、成長への挑戦の年だった。TV番組の影響などもあり、スタートは堅調に推移した。そんな中で、6月に値上げを実施すると、単月でマイナスとなり、影響を受けた。「これまで、ナショナルブランド製品は低価格で提供していたため、消費者の反応が早かった」(メーカー関係者)ようだ。そのため、ナショナルブランド製品を中心に売上げが伸び悩んでいる。

半面、オープンプライスやプライベートブランドなど、価格を据え置いた商品群が販売好調。オープンプライス商品を持つメーカーなどは積極的な販売に取り組んで、ナショナルブランドのマイナスをカバーした。オープンプライスの展開で、業績に明暗が分かれているようだ。

マーケティングリサーチ会社のインテージによると、1~11月のカップ麺の“サイズ”に着目して動向を見てみると、消費者の食のニーズが細分化されてきたことにより、大型サイズで「がっつり食べたり」、普及型サイズでは多いために小型サイズで「ちょこっと食べたり」と、“自分に合ったサイズ”が求められている様子がうかがえる。

うがった見方をすると、このことが食べたいときに買うといった明確な目的行動につながり、ついで買いが減少してきたことで、市場が縮小しているものと思われる。

一方、袋麺に関してインテージは、規模はまだ小さいものの小型サイズが徐々に台頭し始め、2014年以降は規模拡大の一途にあり、2016年からは2桁増を連続し、2018年の市場規模は38億円(同41.7%増)となり、4年前の3倍増となった。主力メーカーが2016年に市場に投入した商品が浸透、定着してきたことが大きく、まさに小腹がすいたときや、スープ替わりとしての需要が喚起されと考えられ、今後の成長が期待されると、分析する。

即席麺は年末商戦で需要を喚起していく

カップ麺は横ばい、袋麺の減少響く

日本即席食品認定協会が集計した2019年の即席麺類JAS受検数量は、1~10月累計37億3153万4000食(前年比2.3%減)とマイナスで推移している。このうち袋麺10億2892万7000食(同7.7%減)、カップ麺27億90万食(同0.1%減)、生タイプ170万7000食(同8.1%減)と、カップ麺が横ばいで推移するも袋麺のマイナス分が全体の減少の要因となった。

4~10月累計ベースでは、袋麺7億56万食(同9.5%減)、カップ麺19億1096万5000食(同1.5%増)、生タイプ108万3000食(同13.3%減)の合計26億1260万8000食(同1.7%減)となっている。年ベースよりはマイナス幅が少ない。

また、1~10月の総需要では、45億6576万3000食(同2.4%減)、4788億4400万円(同1.9%減)となっている。袋麺が13億7291万6000食(同3.9%減)、1014億6300万円(同3.9%減)、カップ麺が31億9284万7000食(同1.7%減)、3773億8200万円(同0.3%減)と総需要でも前年を割った。

1~10月累計ベースの袋麺のうち中華タイプでは油処理(フライ麺・焼そばを含む)が7億8733万9000万食(同2.7%減)、非油処理(ノンフライ麺・冷やしを含む)が2億1167万7000食(同23.4%減)で、数量比率はフライ麺が76.5%(前年同期72.6%)、ノンフライ麺が23.5%(同27.4%)となっている。

フライ麺の比率が上がり、ノンフライ麺が減少している傾向が続いている。フライ麺のフレーバー別では、豚骨だけが伸長している。また、和風タイプはフライ麺が2322万4000食(前年比11.0%減)、ノンフライ麺が403万5000食(同30.4%増)でフライ麺が約78%の比率を占めている。

一方、カップ麺では中華タイプのフライ麺が18億1185万6000食(同0.1%増)、このうち伸長しているのが、醤油味4億7798万9000食(同1.5%増)、味噌味1億5825万食(同17.5%増)、塩味2億9177万食(同10.4%増)となっている。ノンフライ麺(中華タイプ)は2億3067万9000食(同9.2%減)で中華タイプのうち11.3%(前年同期12.3%)の比率となっている。

また、和風タイプ(ノンフライ麺を含む)は6億5836万6000食(同5.0%増)でカップ麺全体のうち24.4%の比率を占めている。和風タイプは、12月が最需要期となるため、年末商戦での積極的な販売で比率はさらに高まっていく。

台風で非常食としての価値見直される

10月に東日本に甚大な被害をもたらした台風19号。東日本を通過し、関東、甲信越、東北地方に影響を与えた。気象庁などやメディアが、台風の接近する前から、最大限の警戒や備えを呼び掛けていたこともあり、台風の接近した週の即席麺の売上げは関東エリアで大幅に伸びた。これは非常食として即席麺が求められたためだ。

即席麺は、カップ麺、袋麺ともに、消費者の生活の中にしっかりと浸透している。近年、日本のどこかで毎年災害が起こっているような環境を迎え、日常的に即席麺を楽しむことに加え、非常食としての価値が見直されていくことが考えられる。

※日本食糧新聞の2019年12月23日号の「即席麺特集」から一部抜粋しました。

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