食品ロス対策で脱酸素剤やアルコール蒸散剤に脚光

世帯人数や多様な食シーンに合わせ、食の小型化・個包装化が進む

世帯人数や多様な食シーンに合わせ、食の小型化・個包装化が進む

2020年は食品・流通業界で、脱酸素剤やアルコール蒸散剤など「品質保持剤」への注目が高まりそうだ。業界を後押しするキーワードは「個包装」「東京オリンピック・パラリンピック」「食品ロス対策」の三つ。依然としてコスト環境は厳しく、競合との価格競争も激化しているが、今年は品質保持剤の価値や用途を見直す節目の年になりそうだ。

食品の個包装化が加速

世帯人数の減少や少子高齢化の進展に伴い、食品の小型化・個包装化が加速している。食品は一度パッケージを開封し、内容物が酸素に触れると品質劣化が進むため、流通業界や消費者からは個包装商品を求める声が多い。

若年層や高齢者の単身世帯が増加したことで、加工食品でも“鮮度感”を求める消費者は少なくない。特に焼き菓子やハム・ソーセージ、切りもち、珍味などは使い切り・小分けタイプの商品が増えている。

世帯人数や多様な食シーンに合わせ、食の小型化・個包装化が進む

個包装化が進むことで、パッケージ内に封入される脱酸素剤やアルコール蒸散剤も小型化し、その出荷量は増加傾向にある。これまで品質保持剤を使用していなかった新規ユーザーも増え、品質保持剤の活躍するフィールドが広がっている。

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催期間中は、多くの外国人観光客が日本を訪れることが予想される。観光庁の発表によると、訪日外国人(一般客)一人当たりの旅行支出は16万5000円(2019年7~9月期)。

費目別ではおみやげを含む買い物代が5万2000円と最も高い。国・地域別では中国(9万4000円)が突出して高く、ベトナム、香港、タイと続く。旅行客の買い物場所としては、コンビニエンスストア、ドラッグストア、空港の免税店などが目立つ。

問題は「売れる商品に品質保持剤が入っているかどうか」(業界関係者)。品質保持剤を使用することで得られるメリットを顧客に伝え、より多くの商品に封入してもらうための提案が必要だろう。また、食品メーカーと共同で商品開発を行うなど新しい取組みも有効だ。

本来食べられるのに捨てられてしまう“フードロス”を減らすため、2019年10月1日に「食品ロスの削減の推進に関する法律」(食品ロス削減推進法)が施行された。国や自治体、各事業者が食品ロス削減に積極的に取り組むことが求められている。

これにより、今まで品質保持剤を使用していなかった中小規模のメーカーや街の洋菓子店で新たな需要が生まれる可能性がある。品質保持剤を使用することで「賞味期限が延長できる」「カビなどの発生リスクを低減できる」「商品を全国に流通できる」などの恩恵があるためだ。

既存顧客でもこれまで使用していなかった商品への新規導入が期待できる。「作りたての風味や香りを消費者に届けたい」という作り手の思いを具現化するアイテムとして、品質保持剤の使用量が増えそうだ。

しかしその一方、依然として逆風も強い。食品の味を決定的に左右するものではない副資材は、食品メーカーのコスト削減対象になりやすい。ユーザーとの取引継続のため、値下げ要求を飲まざるを得ない場合も多いという。

売価の下落で利益を継続的に出せる企業は決して多くない。食品メーカーとの価格交渉の際、ライバル企業が廉価な製品価格で提案をすれば、他のメーカーはその金額を基準に再提案しなければ交渉の席にすらつけない。

顧客との取引継続のため、利益度外視の価格交渉も少なくない。当然利益は出にくくなり、量をさばくことで売上げを確保しているのが現状だ。価格競争の激化が企業体力を奪っている。

※日本食糧新聞の2020年1月24日号の「Hard&Soft新春特集」から一部抜粋しました。

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