食べ物の単位と漢字2 食

人が良くなると書いて「食」?

「おばあちゃんが言っていた。病(やまい)は飯(めし)から。食べるという字は人が良くなると書く」
 これは、ちょっと古くなるが、「平成仮面ライダーシリーズ」の第7作目『仮面ライダーカブト』(2006~07)に登場する主人公の言葉。ほう、この仮面ライダー、なかなかよいことを言うではないかと感心した。彼は、料理の腕もプロ級という設定なのだ。
 確かに、「食」は「人」の下に「良」があるという構造になっている。しかし、それって本当に「人が良くなる」ってことなのか?
――残念。調べてみたら、違っていた。

「食」という漢字の成り立ち

 左から右の順に「食」という漢字の成り立ちを示した。
 「食」の中にある「良」は「good」の意味ではなく、「食べ物を盛った食器」を表している。それに蓋(これが「人」の部分)をしてできた漢字が「食」だ。
 しかし、それだと、「食」という漢字の成り立ちには「eat」の意味はない。この漢字は食べ物を食器に乗せて蓋をしてあるということだから、これは「今、食べる」のではなく、「食べられるのを待っている食べ物」、あるいは「その状態」を表している。
 なるほど、そういうことか。誰かが食事の準備をして、誰かが食べるのを待っているのだ(そこまでは漢字には現れてないけれど……)。だから、この漢字には、単なる「食べ物」ではなく、「心を込めて用意された食事」という意味があるのだと考えられる。そこから「食べる」という意味が派生したのだろう。
 そう考えると、「食べる」ときには、楽しくありたいものだなと思えてきた。

星田 直彦(ほしだ・ただひこ)

1962年、大阪府生まれ。奈良教育大学大学院修了。中学校の数学教師を経て、現在、桐蔭横浜大学 准教授。実生活や歴史の話題を多く取り入れた数学の講義は好評である。幅広い雑学知識を生かして、「身近な疑問研究家」としても活躍。
おもな著書に、『単位171の新知識』(講談社ブルーバックス)、『図解 よくわかる単位の事典』(KADOKAWA)、『楽しくわかる数学の基礎』(SBクリエイティブサイエンス・アイ新書)など多数。
ホームページ:「星田直彦の雑学のすゝめ」
ブログ:「雑学のソムリエ」

ごまの原産地は北アフリカ。そこからユーラシア大陸を横断して日本に伝わった。ごまを炒り絞ってつくる胡麻油は、食用としてはもちろん、エジプトでは肌を守るために身体に塗ったり、インドやスリランカでは薬用にも用いられてきた。そして動物性食物の摂取量が少なかった日本では、胡麻油は貴重な栄養源として利用されてきた。その伝統は、胡麻油やごまを多用する精進料理に今も残っている。胡麻油は、人々の健康を願う気持ちを支えてきたのである。

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