食品産業文化振興会、三菱商事・田中氏講演 「人権・環境保全に認証パーム油を」

田中恒壽氏

田中恒壽氏

 日本食糧新聞社は6日、東京・八丁堀の食情報館で食品産業文化振興会を開催、三菱商事食品原料部油脂チームリーダーの田中恒壽氏が油脂の世界需給と持続可能な認証パーム油の展望について講演した。

 食生活の豊かさとともに大豆油、菜種油などの食用油の消費が拡大し、加工に適したパーム油の消費も増大してきている。「パーム油の主生産国であるマレーシア、インドネシアの人権・環境保全のためにも認証パーム油の使用が不可欠となる」と力説した。

 かつては石けんの原料として使用されてきたパーム油は、その後、食品にも利用されるようになり世界的に需要が拡大している。日本での油種別市場は、消費量が一番多い菜種油が2004年に109万tが15年後の18年に104万tと微減しているのに対して、2番目のパーム油は04年60万tから18年75万tと25%拡大、3番目の大豆油は04年40万tから18年48万tと20%伸びている。国別輸入量では、インドネシアが13年に8万7000tが17年に20万8000tと5年間で2.4倍に伸長し、マレーシアが13年50万2000tが17年49万8000tと微減しているが、この2ヵ国でほぼ全量を占める。

 世界的な需給でもマレーシアとインドネシアの2ヵ国が中心となり世界にパーム油を供給している。近年、パーム油の原料となるアブラヤシ畑を造るために焼き畑による農園開発や農園労働者の人権問題が発生し、それら環境問題の解決などパーム油の生産が継続して活動できる重要性が認識され、WWF主導で生産から販売まで関わる企業・団体の国際的な「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)が発足した。RSPOは、環境や社会に悪影響を与えないパーム油を生産するために必要なこと、世界的な基準作りなどを推進するNPOとして活動し、20年1月時点で世界92ヵ国、4643社が加盟している。

 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、持続可能性に配慮した調達コードにパーム油が含まれることから、RSPO認証パーム油の消費拡大が予想され、RSPO普及にも期待がかかる。(宇津木宏昌)

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