釜めしの素特集

◆釜めしの素特集:次の50年の市場継続策は…

調味 2019.09.04 11936号 13面

釜めしは旬の食材が主食のご飯、家族と一緒に味わえる、ごちそうメニューとして人気がある。釜めしの素は常温・長期保存が可能で具材とコメを炊くだけ、ご飯と混ぜるだけで調理できて長年、根強い需要を誇る。ヤマモリが1969年に発売して市場を開き、今年は発売50周年の記念の年。次の50年の市場継続を実現する、新たな成長戦略が示せるか。ハイシーズンの秋商戦で各社のマーケティングの成否が問われる。(吉岡勇樹)

●市場規模、2年連続縮小 野菜安で代替減

釜めし・混ぜ込みご飯の素は今年、2年連続で減少して推移し、縮小前までの成長実績を失いつつある。主因は生鮮野菜価格の安定。おかずが1品減らせる代替需要が無くなり、浸透が望まれてきたアッパー商材、新たな海鮮メニューの勢いが落ち着いた。適量化による単価アップも途上。課題は引き続き、若年のノン・ライトユーザーの開拓に絞られる。トップメーカーである丸美屋食品工業の子ども向け、安価な新シリーズが着実に育ち、新たな潮流が生まれつつある。

市場は長年、漸増して安定。微減しても翌年微増して需要を徐々に増してきた。数あるご飯周り商材の中でも優等生的な存在。形態はレトルトパウチを封入したカートン、透明包装で季節感を訴えるトレータイプに二分できる。相対的に安く、大手NBの多いカートンが約200億円規模と主流。50億円弱のトレーは主戦場のチルド売場の充実もあり、年々活躍の場を狭めている。カートンへ消費が集約しつつある。

市場規模は19年、2%減で推移し、18年の4%減よりは縮小幅を抑えた。前の17年、16年はともに4%増と大きく伸ばしていただけに反動減もうかがえる。16~17年と18年以降の大きな相違点が野菜価格。近年は生産者の高齢化、異常気象が続いて野菜価格が上昇傾向にある。釜めしの素は具だくさんの主食ができ、おかずが1品減らせるという、野菜惣菜の代替需要を獲得。17年まで大幅に成長し続けてきた。

18年秋ごろから一転して野菜安となり、19年1~2月を除いて以後はずっと価格が安定。釜めしの素は代替消費を徐々に失っていった。成長市場ならではの価格・メニューのバラエティー化という奥行きの広がりも一時停止。季節限定での高級商材、従来なかったタイやハマグリ、カニなどの海鮮系の好調な展開も今年は滞りがち。市場拡大は価値と価格が認められ、単価アップの好機だったが、松茸などの原料高も影響。収益悪化も危ぐされ、付加価値提案の施策にも課題を抱えつつある。

商品訴求は栄養バランスの良さ、季節食材が味わえるといった、本来の釜めしの魅力を伝えるのに絞られ、大手企業への上位集約も進む。シェアは丸美屋が2割強で先行し、続くヤマモリが2割弱、江崎グリコが1割で続くとみられる。

丸美屋は「とり」「五目釜めしの素」の2枚看板が順調。ヤマモリは周年記念の限定品を拡充し、全国展開を強めている。グリコは松茸など旬具材の展開に強く、具だくさんの高級ストレートパウチも新発売。人気のサバメニューも商品化して積極姿勢を示す。

丸美屋は昨秋から「鶏めしの素」を発売し、甘めの味付けで子ども需要を喚起。甘いご飯メニューはいなり寿司や助六人気で見られるが、ドライタイプの即席食品では提案が少なかった。白米独特の匂い、淡泊な味わいを嫌う向きは子どもに多く、献立に悩む主婦のニーズも高い。価格も手に取りやすい値付けに設定し、トライアル購買を強力に促している。

市場はシニア層のヘビーユーザーに支えられ、低い購入率が市場の特徴と課題だった。トップとして若年層開拓に乗り出し、成果を挙げつつある。

商品ランキング上位に最近登ってきたのが、レトルトの混ぜご飯の素。ふりかけ同様の乾燥具材も人気があるが、最近はレトルト具材を混ぜ込む商材が、売上げを伸ばしている。レトルト製法は高温殺菌を伴い、もちろん即食できるが、メニュー専用調味料として加熱料理するのが長く通例だった。業務用市場では古くから提案、浸透している即食使用が家庭用でも根付き、用途や食シーンが広がりつつある。コモディティー化や成熟を憂うのはまだ早い。

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