外食の新しいカタチ ラーメン自販機最前線

2022.06.06 520号 08面
ハッピーツリーの「ご当地ラーメンセレクション」は立地を問わず響く

ハッピーツリーの「ご当地ラーメンセレクション」は立地を問わず響く

「ご当地ラーメンセレクション」の人気商品「煮干そば藍(柚子塩)」

「ご当地ラーメンセレクション」の人気商品「煮干そば藍(柚子塩)」

自社工場前に設置された丸山製麺の「ヌードルツアーズ」

自社工場前に設置された丸山製麺の「ヌードルツアーズ」

「ヌードルツアーズ」の中で人気トップの「AFURI柚子塩らーめん」商品

「ヌードルツアーズ」の中で人気トップの「AFURI柚子塩らーめん」商品

富士電機(株)の「FROZENSTATION」(写真右)もついにデビュー。ウルトラフーズの自社前で「ど冷えもん」と2台並べて試験的に運用しており好調

富士電機(株)の「FROZENSTATION」(写真右)もついにデビュー。ウルトラフーズの自社前で「ど冷えもん」と2台並べて試験的に運用しており好調

「ウルトララーメン大集合」シリーズの一番人気商品

「ウルトララーメン大集合」シリーズの一番人気商品

「ど冷えもん」の内部

「ど冷えもん」の内部

リンガーハットの黄色い自販機は目を引く

リンガーハットの黄色い自販機は目を引く

自販ランドの様子。「人気店の味」「話題性のあるビャンビャン麺」という2つの要素が人気に拍車をかける

自販ランドの様子。「人気店の味」「話題性のあるビャンビャン麺」という2つの要素が人気に拍車をかける

店の味をそのまま冷凍

店の味をそのまま冷凍

「西安麺荘 秦唐記」の看板料理、ビャンビャン麺

「西安麺荘 秦唐記」の看板料理、ビャンビャン麺

内部でラーメンを自動調理

内部でラーメンを自動調理

JR東京駅で試験的に販売された豚骨ラーメン(記者撮影)

JR東京駅で試験的に販売された豚骨ラーメン(記者撮影)

 外食自粛のコロナ下で爆発的に普及した冷凍自販機。中でも冷凍ラーメンの人気はすこぶる高く、多くの自販機では日販10~30食を維持している。もともとラーメンのスープ、生麺は冷凍向きの食材であり、何ら手を加えることなくそのまま冷凍商品化でき、おいしさを再現できる。一過性のブームを超えて一つの食文化として定着しつつある、冷凍ラーメン自販機の実情を追った。

 ◆有力各社で急拡大中 冷凍自販機の好調事例

 冷凍食品自販機の現在の主流は、2021年1月に発売されたサンデン・リテールシステムの「ど冷えもん」だ。同機は、4種類(ツイン・ハーフ・シングル・クォーター)のストッカーを組み合わせて多彩な梱包形式の商品を販売でき、最大11種類・308食を格納できる。参考価格は約200万円、電力費は1ヵ月約6000円。販売台数は、22年3月末時点で3000台を超え、新規導入はますます加速している。

 ●(株)ハッピーツリー「ご当地ラーメンセレクション」

 ど冷えもんの国内1号機は21年2月、東京・新宿区の餃子工場直売所「新宿餃苑」前に設置された冷凍餃子自販機だ。導入後の好調ぶりを受け、当時「新宿餃苑」のコンサルティングに携わっていたハッピーツリーは21年5月、冷凍ラーメンの自販機事業を本格スタートした。同社が手掛ける冷凍自販機「ご当地ラーメンセレクション」は、ミシュランガイド掲載の名店など約30の有名ラーメン店ブランド53商品をラインアップしている。屋号をうたわないフリーネームタイプも展開し、「ラーメン店が自店の商品とご当地ラーメンシリーズ商品を組み合わせて店前に設置したり、餃子店がラーメンを組み合わせる導入例が好調」と、同社の川瀬裕也社長はいう。日販は安定して平均10~20食を売り上げる。

 ●(株)丸山製麺「ヌードルツアーズ」

 業務用麺類製造の丸山製麺もいち早くど冷えもんを導入し、全国の有名ラーメン店のスープと自社の麺をコラボした冷凍ラーメン自販機「ヌードルツアーズ」を企画。21年3月末に1号機を東京都大田区の自社工場前に設置したところ大反響を呼び、日販は休日300~400食、平日約100食に及んだ。

 その後、自販機オーナーの土地に「ヌードルツアーズ」を設置し、そこで販売するラーメン製品を同社が卸す事業を展開。5月現在、23都府県で約100台が稼働しており、ブームが少し落ち着いた今も日販平均15~20食を維持している。

 ●ウルトラフーズ(株)「ウルトララーメン大集合」

 飲食店の開業支援や業務用食材販売を手掛けるウルトラフーズは、21年7月に自社隣接の駐車場に1号機を導入し、冷凍ラーメンを試験販売。日販330食を売り上げたことから、「ウルトララーメン大集合」ブランドを立ち上げ、冷凍ラーメン自販機のFC展開を開始した。ラインアップは、同社で運営している人気ラーメンチェーン「松壱家」「ゴル麺。」の屋号をつけた商品のほか、鶏白湯、和風魚介、担々麺など、人気の味を幅広く揃えている。5月現在、東北から中国地方まで約50台が稼働。さらに週4、5台のペースで新規設置が進んでおり、右肩上がりで拡大中だ。日販は平均30食以上。

 また、同社では他社に先駆けて3月、初の富士電機製冷凍自販機も導入した。(同社使用の)ど冷えもんは各10品×5種類の商品が格納できるのに対し、富士電機製は各10品×8種類で、自販機に入る商品サイズはど冷えもんよりやや小さい。飯塚眞執行役員によると、「本体の価格もほぼ同じ。どのようなすみ分けができるか、実験的に導入した」そうで、冷凍自販機文化が今後ますます多彩に広がる、と同社は見込んでいる。

 ●リンガーハットも店前に導入

 外食チェーンでも、自販機を導入する動きが生まれている。「長崎ちゃんぽんリンガーハット」は首都圏を中心に28店に冷凍ちゃんぽんや餃子を販売する冷凍自販機を設置。8月末までに国内589店舗の内、約60店に設置予定だ。

 ◆小規模店でも販売好調 店の厨房で冷凍商品化

 自社工場などを持たない小規模店で自販機を導入したのが、都内で4店舗を展開する「西安麺荘 秦唐記」だ。同店はコロナ下で看板料理であるビャンビャン麺のテイクアウト要望が急増したことから、冷凍自販機での商品販売を始めた。店前ではなく、東京・江東区に自販機集合型ショップ「自販ランド」をオープンしたのが何ともユニーク。自販ランドには5台のど冷えもんが並び、ビャンビャン麺のほか、餃子や「武漢熱乾麺」「麻辣鶏串」などを販売している。

 主要商品は、「秦唐記」各店で手分けして調理、冷凍しており、「朝、自販機の在庫確認をしたら、補充分の麺は永代総本店の厨房で、タレは神保町店で作り、業務用冷凍庫で1~2時間、急速冷凍します」と、同店を運営するソンメー商事の小川克実社長は説明する。「作りたてを急速冷凍するのだから、『店のお持ち帰り料理』と同じ感覚」と、シンプルな考え方だ。“最も画数の多い超難読漢字”としても話題性のあるビャンビャン麺と「自販機の集合ショップ」というキャッチーさから、付近の住宅にチラシをまくと集客効果は高い。チラシをまくと日販100食を超えるという。

 ◆「人気商品の傾向」と「主要価格の相場」

 「ご当地ラーメンセレクション」で人気が高いのは、ミシュランの冠が付いた商品だが、「京都のあっさりとしたラーメンや煮干しラーメンなど、ストーリー性のあるものも響いている」(川瀬社長)という。

 「ヌードルツアーズ」では二郎インスパイア系の「らーめんバリ男」が一番人気で、「ジャンク系に振り切った、中毒性のある濃いラーメンが人気」と丸山製麺の丸山晃司社長。ウルトラフーズでも屋号が付いた商品は人気があり、「『松壱家』の醤油豚骨はどこの自販機でも人気1位で、売上げの約4割を占める。そのほか、鶏白湯や和風魚介など、“ラーメン店の味”として想像しやすいものが人気傾向ですね」(飯塚氏)。また、自販ランドでは、「麺商品と一緒に購入する焼き餃子が、一番売れている」と、小川社長は話す。

 価格を見ると、「ご当地ラーメンセレクション」の商品は一律1000円だ。「商品の卸値は500円ほどで、当社は30~50円のロイヤリティを乗せて自販機オーナーに商品提供している」と、川瀬社長。平均日販30食以上を維持すれば、自販機オーナーは月に約100万円の売上げが見込めるというわけだ。

 「ヌードルツアーズ」は900~1000円、「秦唐記」のビャンビャン麺は1000円。釣り銭補充の手間を軽減する狙いもあるが、「お釣りを取るワンアクションが自販機では敬遠される」と、自販ランドの小川社長は言う。

 「ウルトララーメン大集合」の商品は従来の業務用食品販売業の強みを生かして、750円がメイン価格帯。リンガーハットは長崎ちゃんぽん、長崎皿うどんが各500円だ。

 冷凍自販機のラーメンの相場は概ね700~1000円前後といったところだろう。一方でコンビニやSMでは、レンジ調理で即食できるチルド、冷凍タイプのラーメンが400~500円前後で販売されている。自販機の冷凍ラーメンは価格競争で劣勢のようにも思えるが、そもそも冷凍ラーメン自販機事業者はコンビニ、SMに並ぶラーメン商品を「競合」と捉えていない。実際、冷凍自販機のラーメンは「専門店の味」「家では出せない味」を求める層が高価格でもリピート購入しており、各社ともに「われわれの競合はラーメン店であり飲食店だ」と口を揃える。

 ◆「売れる設置場所」と「購買ニーズ」

 冷凍ラーメン自販機設置に好適な条件としては、「駅前や多くの人の帰宅動線上にあり、視認性のいい場所」だ。コインパーキングなど「車が止めやすい場所」も好調。今後拡大しそうな例では、県内の名店ラーメンを集めた自販機が群馬県の信用金庫前に設置され、人気を集めている。

 また、「コインランドリーやセルフのガソリンスタンド、レンタル倉庫前などと相性がいい」と、丸山製麺の丸山社長。

 「ご当地ラーメンセレクション」はショッピングモールなどに多く、今後期待できる立地は「スーパー、ドラッグストア前」「パチンコ店」という。

 そして、冷凍ラーメン自販機の購買シーンだが、冷凍食品ながら「店のラーメンを(すぐに)家で食べたい」というニーズが大半だ。自販ランドの例では「18時から深夜の売上げが全体の7割を占める。飲食店は閉まっているが、店の味を求める人が圧倒的に多い」(小川社長)。自販機の冷凍ラーメンの立ち位置はやはり「外食がすくい切れないニーズをフォローする商品」が正解のようだ。

 また、ハッピーツリーの調査では、購買層は「近隣に住むリピーター」が最も多く、「リピート頻度と客単価をいかに上げるかが鍵になる」と、同社では販売する商品の定期的な入れ替えをすすめている。

 ◆自販機の横展開でビジネスが拡大

 各社では冷凍ラーメンからの横展開を見据えている。

 自販ランドでは、「自販機が集まるランド」としてのさらなる集客の仕掛けとして、為替両替自販機を新導入した。

 ウルトラフーズも「現在、飲料自販機が複数台並んでいる所などは、冷凍ラーメンのほか、例えばハンバーグ、馬刺しなど、バラエティーに富んだ冷凍自販機に変えるだけで、アミューズメントエリアになる」と、“食のアミューズメントとしての自販機”に大きな可能性を見いだしている。

 一方、ハッピーツリーの川瀬社長は、「冷凍自販機は町なかで目に付くだけに、さまざまなオファーが舞い込む」と明かす。同社には「自販機に入れる商品を卸したい」「マーケティング目的でサンプル販売してほしい」という問い合わせが絶えず、川瀬社長は「今後は自販機を軸とした、これまでにない新たなビジネスモデルがどんどん構築される」と確信している。

 ●ラーメン自動調理機も登場!

 全米約50ヵ所で稼働している自動調理自販機「Yo-Kai Express」が日本に上陸し、話題を呼んでいる。同機の中には丼に入った料理が冷凍保存されており、注文が入るとスチームで解凍調理し、90~100秒ほどで熱々の料理を提供。日本ではラーメンの自動調理自販機として、羽田空港第2ターミナル、首都高芝浦PAに設置されている(5月現在、機械メンテナンスのため販売休止中)。自販機内には、柚子塩、醤油、味噌、豚骨の4種類のラーメンが50食分ストックされていて、価格は790円(税込み)。現在、日販平均30~50食ほどで、飲食店が営業していない夜間の時間帯が特に人気だ。

 ●「ウルトララーメン大集合」FC収益シミュレーション例(月間)

 「販売価格=1個750円」「日販50食」想定

 売上げ:1,125,000円

 原価:637,500円(56.7%)

 粗利:487,500円(43.3%)

 <販売管理費(10.7%)の内訳>

 送料 90,000円 8%

 システム費 3,300円 0.3%

 管理費 3,300円 0.3%

 ロイヤリティ 16,500円 1.5%

 電気代 7,000円 0.6%

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