喫茶特集 「サントレー笹川店」(四日市市) 主婦のブランチ独り占め

1996.10.21 113号 12面

過熱する中部地方の喫茶戦争。ボリューム、低価格の物的な過剰サービス争いに拍車がかかる一方、質的向上に向け独自路線を歩む店舗も出てきている。ターゲットを絞りきったニューコンセプトも目立ち始めている。次世代ニーズを志向するこれらの店舗、過当競争のおりにもかかわらず出足はまずまずのようである。色あせる既存喫茶をしり目に勢力を伸ばすニュースタイル喫茶を取材した。

■ベーカリーとの複合

三重県四日市市、近鉄四日市駅からバスで約三〇分の住宅街に話題のモーニング大繁盛店がある。新生軒製パン(株)の手掛けるベーカリー喫茶「サントレー笹川店」がそれ。郊外店にもかかわらず午前8時30分~午前11時のモーニングタイムに四四席が四回転。近隣主婦のブランチを独り占めしている模様だ。

ベーカリーと喫茶を複合展開する同店の客層ターゲットは、従来モーニングに無縁だった家庭内主婦層だ。コンセプトは清潔で明るい店内に少量多頻度で高品質のメニュー。ボリュームや低価格に偏る男性向け店舗と異なり女性志向は明確だ。「中部では喫茶店での朝食が一般化しているが、それは男性に限ってのこと。女性客については未開拓。女性客にマッチした喫茶スペースがあってもいいはず」とチーフの原田憲治さん。

いまのところ客層の八割以上が近隣主婦。売上構成比の物販(ベーカリー)対喫茶は五対五。モーニングとランチだけで喫茶売上げの約八割に達する。喫茶での井戸端後、物販に立ち寄る客層も多く複合化の相乗効果もいかんなく発揮している。潜在需要を掘り起こす、ターゲットを女性客に絞り切ったモーニング戦略は予想以上に成功した格好である。人気の広まりが口コミであるのはいうまでもない。

売り物のモーニングは、日替わりトースト、オムレツ、サラダ、コーヒーの四八〇円セット。ベーカリーならではの豊富なパン・アイテム、手作り感あふれる半熟オムレツが人気の源だ。

「日替わりトーストは気に入らなければ別のパンに差し替えます。オムレツはツーオーダーを徹底しています」とサービス精神に胸を張る。

■品質アップの絞込み

週替わりのランチは一アイテムのみ。六一〇円でドリンク付きだと七五〇円。モーニング、ランチともに奇抜さや、いたずらなアイテム化は見られない。逆に絞り込むことで繊細さや品質アップに磨きをかけている。スケールメリットもそこから派生しているようだ(定番セットは数アイテムある)。

「サントレー」は四日市市を拠点に一六店舗を展開するベーカリーチェーン。喫茶展開は、鈴鹿店に続き同店が二店舗目。オープンから二年目を迎える。「フードサービスに対してはいまだ初心者。手抜きはできません。皆、必死で勉強してます。パンの仕込み、焼成が一段落したら今度は飲食店としての厨房でしょう。もう戦争状態ですよ」。初心のひたむきさが息ずくサービスとメニュー、快進撃はどこまで続くか見物である。

◆「サントレー笹川店」=三重県四日市市笹川八‐七五、Tel0593・22・3101、午前8時30分~午後7時(喫茶スペース)

コロッケ付オムカレー(サラダ付ランチ610円、ドリンク付で750円)。オムレツの中は白飯。サラダはパスタサラダ

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