世界の人気食材 「クレソン」食べる総合ビタミン 欠かせぬ名脇役
クレソンはアブラナ科の多年生水生植物で原産地は中部ヨーロッパである。日本名ではオランダガラシ、英語ではウオータークレス。クレソンはフランス語名である。
日本には江戸時代にオランダ人が自給のため種子を持ち込んだといわれ、各地の水田や畝や谷川のほとりに野生化したものがみられる。明治中期に再度日本に入り、数多い洋菜のうちでは歴史の古いものである。
クレソンの栽培は容易で成長も早い。暑さに弱いため4月中に種子をまき、暑さの厳しくなる前の6~7月に収穫する。最近では厳寒期を除いてローテーションをかえ一年中収穫することができるようになった。
春の鮮緑色の葉が品質的には優れている。最高のクレソンは濃緑色、鮮緑色、ほぼ真っ黒のものであり、パリッとした感じで、茎が細根を下ろして伸びすぎていないものが良品。あまり多肉質でないほうが、特有の香気を持つものが多い。
クレソンは数枚の葉をつけたまま、茎とともに洋風料理の付け合わせにされる。ビーフステーキ、ローストビーフなどの肉料理やサラダ、サンドイッチなどに添えられる。さわやかな香りと辛みを持った味が好まれている。黒っぽいものの方が風味も強く、ほろ辛さも強い。
クレソンは彩りやアクセサリーではない。貴重な栄養野菜である。野菜の少ない北欧では有色野菜として好んで食べている。
この栄養成分をみると生茎葉一〇〇g当たり無機質でカルシウム一四〇、リン七〇、鉄一・三、ナトリウム二九、カリウム四一〇、マグネシウム一六、亜鉛二六〇、銅六〇(いずれもミリグラム)。またビタミンでは、A効力一〇〇〇国際単位、〓〇・一〇、〓〇・二〇、ナイアシン〇・六、C六〇(いずれもミリグラム)となる。
カルシウム、鉄、亜鉛、銅、ビタミンA、〓、〓、Cなどの含有量は非常に高く、食べる総合ビタミン食品とも呼べよう。市販のヘルスフードよりもはるかに優っている。
ビタミンCのみを比較してみても、グレープフルーツ四〇、ミカン三五、キャベツ四四、トマト二〇、ニンジン六、レタス六、セロリ六(いずれもミリグラム)といった具合で、クレソンより少ないのである。
特にカルシウムや鉄分も多く、アルカリ度も高く、肉類などの酸性食品の付け合わせに最適ともいえよう。
利用法は、日本料理としてゆでてごまあえやおひたしにすると良い。栄養野菜として相当量を食べることができる。
洋風では生のまますりつぶし、裏ごししてレモン汁や生クリームと合わせ緑色のソースを作り、パテなどにかける。
また、淡水魚料理用のソースにも利用される。魚のにおい消しと香りづけに役立つ。作り方はパセリソースと同じ要領である。
スープの色づけにも使われる。冷製スープの場合、彩りも良く、ちょっと刺激的な味で、夏場のスープ用として格好な材料となる。刻んで各種のハーブ、たとえばパセリやバジリコなどと合わせてポテトに添えたり、ハーブバターなどにも利用される。
クレソンとポテトサラダ、クレソンとミント、クレソンとアボカドサラダなどによく、さわやかさと同時に辛みも楽しめる。
以上はウオータークレスの場合であるが、アメリカンクレスとガーデンクレスがある。前者はアメリカで多く、冬場のサラダとして珍重、後者はペルシャ原産で刺激性があり、イギリスやアメリカで高い評価を得ている。