97外食・飲食業界 実力派コンサルタントはこう見る 茂木 信太郎氏
(1)低価格というより、リーズナブル志向というべきだろう。価値志向といってもよい。
同じ品質、サービス水準が担保されるなら価格は低いほどよい。価格を下げないのなら、品質やサービスが消費者の目に見える(味わって分かる)かたちで向上していなければならない。
ひところの素材の質を変えたり、サービス水準を落としたりして、“低価格”で消費者の歓心を買おうとしたものはことごとく敗退した。
むしろ、消費者は自分たちの生活の質にこだわりはじめた。だから、生活の質の充実、質の向上に寄与する品質・サービスの提供を心掛けていかなければならない。FRの復調はこの点に要因がある。
外食市場は成熟市場である。成長市場であった時期はある企業の成功例が大いに参考となったはずだ。だが、成熟市場では、ほかと同じことをして消費者の歓心を買うことはできない。当該企業独自のアピールポイントが要る。
それぞれが、差別的ななにものかを持って消費者に対応しなくてはならない。消費者に何ができるか。このことを徹底的に考え抜き、自分だけの武器を開発するという姿勢が重要。
(2)外食事業は粗利率(売上高に対する食材料費の割合の逆数)が高い。したがって、入店総客数を増やすことが最も大切。最も重要な経営指数は、既存店ベースの対前年比売上高とされるが、ぜひ対前年比客数の増減も見ていきたい。
サービスの水準を落とすことなく、総客数の増加を意図したオペレーションを企てるべきである。具体的には二つの性格の異なる領域(時間帯)があるので、これを区別して設計することが肝要だ。二つの領域(時間帯)とは、ピーク時とアイドル時である。
ピーク時は、スムーズにオペレーションが営まれなければならない。そのためにはリード面が整えられていなければならない。まずハードであり、人の問題はその次だ。徹底的にリード面を検討し、どんどん改良していきたい。
ピーク時のケアレスミスは大いなる機会損失である。だが、この場合もまずハード面の不備がなかったかどうかを検討すべきだろう。次に手順が単純化されているかどうかというソフトを検討する。人の問題は最後でよい(アイドル時対応は省略)。
(3)消費者の生活の質的向上に資する業態が伸びる(当たり前の話だ)。ほかと異なった訴求ポイントを持つ業態が伸びる。
例えばFR。FRの顧客はだれか。その顧客の生活はどのように営まれているか。
FRの顧客は、ファミリーのみにあらず。一人客あり、二人客あり、グループ客あり。これに幼児がまじると、幼児は店内で運動会、他の客はしかめ面。これでは双方にとって印象の良くない体験となってしまう。
ならば、幼児の運動会OK(遊戯施設付き店舗)のFRバージョンがあってもよかろうに。
(長野市に「ひよこの会」というボランティアがあって、小さい子供を連れていって楽しく食事ができる店のマップをつくって配布しています。「ひよこマップ」にはベビーカーで店内に入れる、おむつ替え可、ベビーベッドの有無などのチェックがあります。こんなマップ、全国で広まってますよ、きっと、同会によれば、自称FRだが、子連れは困るという店がたいそう多かったようです)
過去の業態発想にとらわれずに、もう一度今の消費者の生活を見つめ直してみるべきだろう。