トップインタビュー ピザ・カリフォルニア・牛久保洋次代表取締役

1997.01.20 119号 3面

‐‐ますます競合激化が予測されるデリバリーピザ業態でありますが、本年の動向をどのように展望していますか。

牛久保 店舗過密化による店舗間競争が第三ラウンドに突入、接客サービスなど、現場(店舗)レベルでのCS(顧客満足)対応力の差が明暗を分ける結果となるだろう。これはブームから定着した他業態の歴史を見ても明らかだ。

出店ラッシュによるマーケットの拡大期が第一ラウンド。店舗飽和化に端を発する価格競争やキャンペーン競争の激化が第二ラウンド。そして、ユーザーの満足度(CS)をより高めるためのサービス力、品質力競争が第三ラウンド。デリバリーピザ業態も例外なくこの道筋をたどると見ている。

バブル以後の消費市場は売り手よりも買い手の論理が大勢をしめる状況。それに国民の個性化、意見力が強まっている社会情勢を踏まえていえば、今後ユーザーニーズのサイクルはさらに加速するはず。デリバリーピザ業態の第三ラウンドはそれらの背景も相まって、かつてないオリジナル合戦が繰り広げられよう。

画一的なユーザーニーズ、展開コンセプトに終止符が打たれ“CS”“個性化”をキーワードとするデリバリーピザ新時代の幕開けといったところか。

‐‐第三ラウンドに備えるピザ・カリフォルニアの具体策を聞かせて下さい。

牛久保 ヘビーユーザーをつかみ常連客に育てる戦略。すなわち、目新しさで新規客を狙うよりも、基本的なサービスを徹底させリピーターを着実に増やしていくことだ。それには現場レベルでの接客サービスの見直し、意識改革が必要である。

デリバリーピザはオーナーの努力にかかわらずノウハウ先行型で売れて来たこともあり、基本的な接客サービス精神が所々欠落している。店舗の飽和化によるメニュー変更や商圏拡大、キャンペーンなどが、その穴をさらに大きくしたとも思える。

本部に来る苦情をまとめるとおおむね「配達が遅い」「電話の受け答えが悪い」「冷めている」といった、デリバリーピザ本来のセールスポイントに対するものばかりだ。

ユーザーは、飲食店として当然のサービス、デリバリーピサならではのサービスを前提にオーダーしているわけで、付加価値サービスを理由にその原則を破ることは許されない。展開が軌道にのった店舗では、オーナーが店に出ないといったケースがままあるようだが、これではユーザーが何を望んでいるのかわかるわけがない。出店当初、自ら配達し受け取った金銭のぬくもりを、再度自身で確かめるべきであろう。チェーン本部も同様、それを踏まえた上での戦略を今後講じるつもりだ。

接客サービスの見直し策とともに打ち出しているテーマが、月一回オーダー三〇〇〇軒の常連客づくりだ。デリバリーピザは同業他店との争いに先じて、CVSなど他業種との競合に目を向けねばならない。いたずらな目新しさでオーダーを増やすのではなく、地域密着サービスで着実にヘビーユーザーをつかんで行くほうが得策である。

そのためには、お客に直に接するアルバイト戦力の強化、育成が必須、アルバイトのやる気や自主性を喚起する環境づくり、またそれを実践するFCオーナーの育成が課題だ。

アルバイトが仕事に魅力を感じれば、お客に喜ばれる方法を真剣に考えるし、長期間勤務も見込める。戦力としての価値は高まるばかりだ。事実、アルバイトがそのまま社員にスライドするような店舗はほとんどが繁盛している。

‐‐今後の出店については、また業態開発について聞かせて下さい。

牛久保 出店ペースは年間五〇店ほど。各都道府県で占拠率三〇%を目標に全国的に出店する計画です。

業態開発については、昨年から始めたSS(ガソリンスタンド)との複合出店、ロードサイド型のイートイン店の展開を加速する。郊外型店舗の両業態、いずれも十数店に達したが出足は好調。デリバリーも併用しているが、ローカルな場合は配達を待つよりも自ら買いに来る傾向が目立つ。今後はワンピース売りなど少量多頻度のニーズを視野に入れた新展開も考えたい。

既存店のテコ入れ策としては、試験展開中のデリバリーパエリヤ専門店「パエリーズ」との複合店化を模索中。ノウハウが固まり次第本腰を入れる。

‐‐牛久保氏はピザの市場拡大に努めた功績者の一人として知られます。失礼ながら、FC脱退店を加えると、ピザ・カリフォルニアの看板を掲げた店舗は本紙推計で八〇〇店舗にも上ります。今後のピザ市場を広げるためにはどのように努めて行きますか。

牛久保 やはり仕掛け方でしょう。脱退はさておいて、市場を広げるには経営者のロマン、誠実さ、そして何よりも仕掛けが大切だと思います。ピザにしても、ピザのシーンをどのようにして提案するか、さまざまなシーンに合ったピザをいかなるコンセプトで開発するかが大切だと思う。

脱退については、わが国のFC慣習に難があり、どうしてもというならばやむを得ないのが現状である。それぞれがオリジナリティーを持って社会貢献していればそれで良いと、いまは考えている。だからといって脱退を公然と認めているわけではない。今後もFCビジネスの健全な発展に努める意向だ。

‐‐今後の活躍を期待します。ありがとうございました。

「ピザ・カリフォルニア」は全国に四一〇店舗を有するデリバリーピザのNBチェーン(平成7年度・年商二八八億円)。前身であるレコードレンタルチェーン「友&愛」の組織力でピザを一躍身近な中食に押し上げた。他チェーンに先駆けた地方進出、多店舗化ノウハウ、たぐいまれな商品開発、そして牛久保氏の人を引きつけるカリスマ性は、同業のみならず各方面から注目されるところだ。今後の外食は「“CS”と“個性化”がキーワード」という牛久保氏。その意向について聞いた。

牛久保洋次・昭和20年東京都武蔵野市生まれ、五一歳。慶応義塾大学商学部卒業後、自動車販売会社を経て、レコードレンタル「友&愛」チェーンを設立、レンタルブームの祖として名を刻む。後「ピザ・カリフォルニア」チェーン設立、現在に至る。(文責・岡安)

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