特集-そば・うどん 「やしま(東京・葛西)」一般そば店のノウハウ特化

1997.05.05 126号 12面

東京は江戸川区、西葛西駅から離れた高架下、わずか七坪で一日に八〇〇~九〇〇食、三〇万円前後売り上げる立ち食いそば店がある。一般そば店からくら替えした「やしま」がその店。職人いらずの徹底したオペレーション化で、従来の立ち食いそば店にない高品質とサービスを提供、客層の七割を常連につかむ繁盛ぶりだ。

オープンしたのは四年前。脱サラで始めた店を五年でたたみ、パートスタッフでも熟練の味を容易に出せる“究極のそばFF店づくり”を目指し、それまでのノウハウを集約特化した。

「一般そば店で省力化、マニュアル化すべき部分は山ほどある」「立ち食い店舗の小スペース、低単価でも、工夫次第で一般そば店と同等の味を提供できる」と店主の鷲尾圭吾さん。

イートインスペース三坪、厨房四坪での営業は、年中無休の午前7時~午後9時。

Aクラスのそば粉を五割使ったそば、かつて培ったつゆの味は仕様書発注。毎朝、鷲尾さんみずから厨房に入り、天候、そばの状態を見て当日のゆで加減を決定。それに従って日中はパート主体で展開する。角型ゆで釜、底浅のフライヤー、カット野菜、業務用冷食の活用で、揚げ物やサイドアイテムの調理をきめ細かにマニュアル化し、自動券売機の採用で会計、オーダー、POS管理も簡略化した。

「それらで得た余力を、あいさつをはじめとするスタッフの接客サービスに反映させる」というのが鷲尾さんの考え。「いくら低価格でおいしくしても、一般立ち食い店のような開き直ったサービスはダメ。お客が自分の給料を払っている、という意識を持たせられるか否かが明暗の分かれ目」と指摘する。

また、一般的に立ち食いそば店の売上げが激減する夏場でも、同店の客足にかわりはない。「冷やしアイテムは味の差がはっきり出るから立ち食いそば店はやりたがらない。うちは味に自信があるから三六アイテムの半数を冷やしアイテムに衣替えしています。なめこおろしそば、牛おろしそばは夏場ダントツの売れ筋です」と胸を張る。

噂を聞きつけての問い合わせは数多い。多すぎるため、立ち食いそば店の経営セミナーまで開くほどだ。同店で研修してのれん分けした店も、すでに六店舗あるという。そば店のみならず必見すべき店である。

◆「やしま」(東京都江戸川区西葛西六-一四、メトロセンター店、■03・5674・3510)=営業時間午前7時~午後9時、年中無休

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