低価格時代の外食・飲食店 安全食材にこだわるモスバーガー

1997.05.05 126号 5面

モスバーガーの第一号出店は一九七二年(昭和47年)6月。東武東上線成増駅近くの立地だった。その約一年前の一九七一年(昭和46年)7月、マクドナルドは華々しく銀座三越デパートの一階に、日本上陸第一号店を出店している。

一方は都心をはるかに離れた、いわば三等地レベルでの立地。もう一方は都心、それも日本を代表する銀座という超一等地のベストロケーション。

しかも、モスは現櫻田慧会長を含む三人の男の脱サラの弱少資本。生業店同様のスタートだった。マックはファストフードの本場アメリカから進出してきた大資本とシステムのハンバーガーチェーン。

すべてが対照的な出発だ。とくにモスのホスピタリティーと手づくり志向、マックの効率とテクノロジー志向は好対照で、これは現在でも変わらない企業精神だ。

モスバーガーは第一号の成増店を出したあと、神楽坂、浅草と出店し、一九七三年(昭和48年)11月には早くも名古屋市にFC第一号店を開設、チェーン展開に乗り出した。

この結果、順調に店舗数を伸ばし、八一年(56年)に一○○店、一○年後の九一年(66年)には一○○○店の大台、今年3月末現在には直営(六八店)、FC(一三五八店)を合わせ計一四二六店を展開する。

売上高は九六年3月期で一二五○億円(前年比三・三%増)。店舗数、売上げともにハンバーガーチェーンでは、マックに次ぐ第二位の位置にあるが、しかし今期はマックの大量出店と低価格攻勢にあって、業績は創業始まって以来の横ばいか、マイナスとなる見通しである。

「マスコミは減収減益と書き立てますが、そんなに大げさなものではなく、二グレクトの範囲のものです。マックさんの攻勢の影響がなかったとはいえませんが、例の狂牛病やO157問題といった不可抗力のアクシデントもあり、集客力がダウンしたのは事実です」

「しかし、私どもはポリシーやオペレーションを変更することなく、業績向上をめざしてさまざまな課題と取り組んでいるのです」((株)モスフードサービス広報室長栗生東亞(はるつぐ)氏)

モスバーガーは業績が落ちてきたので、現社長の清水孝夫氏に代わって創業者の櫻田会長が第一線に返り咲くと報道されたこともあった。前出の栗生氏はこれもマスコミの誤報だと指摘する。

「目に見えて業績が悪くなっているわけでもないのに、業績が落ちたのは清水社長の経営手腕が劣るからといわんばかりの報道ですから、これは困るわけです。櫻田会長と清水社長の考えは一致しておりますし、常に同じ経営ポリシー、同じ政策において事業に取り組んでおりますから、とくに清水社長の責任が問われることはないのです」

「櫻田会長の言動が十分でなかったかもわかりませんが、実際には櫻田会長も大変に困惑しておりますので、マスコミの方も正しい報道をされるように、十分に留意していただきたいと思うのです」(栗生広報室長)

モスは一九八五年(昭和60年)11月に株式の店頭登録した後、八八年(同63年)3月に東証二部上場、そして昨年9月には指定替えによる一部上場企業となった。

株価は昨年あたりまでは二五○○~三○○○円で推移していたが、今年に入っては一六○○円前後にとどまっている。

上場企業であるだけに、トップの言動や業績の推移は株式にデリケートに反映する。モスがマスコミの報道に敏感になるのは、こういった事例があるためだ。

因みに、外食業界の優良児と称されているデニーズの株価は三四○○円前後で業界トップ。ロイヤル二一○○円台、すかいらーく一六○○円台、西洋フード八○○円、テンアライド(居酒屋天狗チェーン)六八○円、東天紅四○○円台(各一部上場企業)という内容で、株価が落ちたといっても、モスの寄りつきはまだまだ強い。

ともあれ、マックの大量出店、低価格戦略の市場争奪攻勢を受けて、ハンバーガー業界はモスを含め、大なり小なりのマイナス影響を受けているのは事実だ。

モスはどう対応していくのか。「決費者のし好、選択の範囲もあるでしょうから、ハンバーガー市場がすべてマックさんに占有されるとは考えられません」。

「私どもはあくまでも創業精神のホスピタリティー(真心、スピリット)と手づくり志向を基本に、安全な食材を使った質の高い商品で消費者の支持を得ていく考えでおります」(栗生広報室長)

外食は価格のポピュラリティーも求められるが、今や「健康」が大きなキーワードだ。モスは徹底して商品のクオリティー、バリューで消費者ニーズに対応していくという考えだ。

天然素材の調味料、自社農場での水耕栽培や有機栽培による食材(野菜類)の利用は、その具体的な行動だ。モスの奮起が期待される。

◇会社概要

・企業名/(株)モスフードサービス

・チェーンブランド/ハンバーガーショップ「モスバーガー」

・設立/昭和47年(一九七二年)7月

・本社所在地/東京都新宿区〓〓町二二(電話03・3266・7111)

・資本金/一一一四億一二八四万円

・代表取締役会長/櫻田慧

・代表取締役社長/清水孝夫

・従業員数/正社員五○五人

・事業内容/FCシステムによるハンバーガーショップのチェーン展開

・決算期/3月

・出店数/直営六八店、FC一三一八店、計一三八六店(九六年3月期)

・売上高/直営五九四億円(九六年3月期、前年比一・一%増)、FC一二五四億円(同 、三・七%増)

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