トップインタビュー ストロベリーコーンズ社長・宮下雅光氏
――昨年、東京に本社を構えいよいよ多店舗化、全国展開へ拍車がかかるかに見えますが。
宮下 いいえ、まったく逆で、いまは既存店の見直しとホスピタリティーのレベルアップに努めています。多店舗化は二の次です。現在の出店数が一三〇店舗。“価値観を共有化できる出会い”をテーマに直営的発想で出店してきましたが、ここらが一つの節目ではないかと思うのです。
――といいますと。
宮下 価値観の共有化を前提に資本と経営を分離させる。ジーの資本とザーの経営が対等でジョイントしFCビジネスが成り立つのですが、熾烈極まるデリバリー市場の現状下、これ以上の多店舗化は両サイドの意志の疎通を欠く恐れがあり、FCビジネス本来の目的を見失う危険性もある。
むしろ次世代ニーズに向け、価値観の共有化を再確認したりホスピタリティーを充実させたりするほうが先決だと見ているのです。
――デリバリーピザからの業態特化を目指しているわけですね。
宮下 その通りです。デリバリーピザ業態は工場(ライン)的発想にもとづき効率第一に展開してきました。が、最近は店舗過密化により市場は過渡期を迎えています。ユーザーは、“三〇分で熱々のまま配達する”従来のセールスポイントに飽きたらないでいます。
先発の米国市場では店舗飽和化(供給過剰)によるディスカウント競争のあおりで停滞ムードが続いています。従来のホスピタリティーはすっかり色あせ「何もないからピザでも食べよう」「金がないからピザでも食べよう」といった存在になりつつあります。米国の後をたどるわが国も少なからず似た状況を迎えるでしょう。
別にそれでもやっていけるのでしょうが、フードサービスに携わる以上は絶えずユーザーにホスピタリティーを与え続けたい。そのために業態特化に踏み切ったわけです。
――具体的には。
宮下 手始めとして対面サービスの強化ですね。デリバリーは“作る”と“届ける”ばかりでお客様相手という感覚がマヒしている。その感覚をイートイン店での再トレーニングで取り戻したい。
このほど、ピザ、パスタを主体にイートイン、テークアウト、デリバリーを兼ね備える「イタリアン・ダイニング」を新機軸として打ち出しました。当面、ここをスタッフ研修に活用するほか、既存店リニューアルのモデル店として位置づける考えです。
――オペレーションを増やしすぎるとマニュアルの混乱を招くのでは。
宮下 スムーズなオペレーション、マニュアルはもちろん必要です。しかしそれらがすべてないと考えることが同店のテーマなのです。
デリバリーの効率主義をベースに、ホスピタリティーの充実策でどのようなフードサービスを演出できるか。FF、FRでも何でも良い、新たなパッケージノウハウをどのようにつくれるか。「イタリアン・ダイニング」のコンセプトは効率至上のフードサービスに終止符を打ち、ユーザー本位に立ち戻ることなのです。
二一世紀は超合理性の時代、ハイテクとハイタッチの融合体と見ています。いうなれば、ハイテクは機械による合理化ナイズ、ハイタッチは人によるホスピタリティー。温かみに欠けるハイテクの飲食ビジネスは一〇年スパンが限界。高単価だけれども高付加価値、ちょっと高めだけれど温かみのあるハイタッチは環境に左右されず一定の支持を得られるはずです。
――既存店のリニューアルはすべて「イタリアン・ダイニング」になるのですか。
宮下 そのつもりはありません。従来のままで繁盛している店もたくさんありますから。今後加盟するFC店も含めすべてオーナーサイドに任せたいと思います。
いずれにせよホスピタリティーを最優先し、それを成功させるための筋道を本部が責任を持って作れば良いのです。
――そうすると既存スタイルの新規出店は当分凍結ですか。
宮下 「ストロベリーコーンズ」にかぎっては積極的に出店するということはありませんね。
――といいますとほかにはあるのですか。
宮下 いままでに培ったノウハウやネットワークは生かさねばなりません。 「人材、物件、資金力は豊富、でもノウハウがない」といった法人企業に対しては、活用法を積極的にコンサルティングして行きます。業務委託の店舗展開となりますが、すでに大手量販店関連や大学生協さんから依頼を受けオープンの段階にきています。
――実績の積み重ねがあって初めて可能となる試みですね。
宮下 確かにデリバリーピザ事業は大きなベースです。でもそれが最終目的ではありません。ホスピタリティーを与え続ける上での通過点と考えています。
実績からはさまざまな事業が生まれます。その一端が「イタリアン・ダイニング」であり業務委託事業でもあるわけです。アッと驚かれそうな事業計画が今後いくつかあります。楽しみにしていて下さい。
――期待しています。ありがとうございました。
昭和25年、宮城県仙台生まれ、四六歳。
コンピューターに関心を持ち上京、日本IBMでSEとなるが、実家の事情でやむなく帰郷。コンピューターに未練を残しつつ、喫茶店、ケーキショップ、パーティーケータリング、カフェバー、イタリアンなど数々の飲食事業を転々。昭和60年、デリバリーピザチェーン「ストロベリーコーンズ」を興してからは持ち前のセンスをいかんなく発揮。システム開発やネットワーク作りに奔走し飲食事業と情報システムの融合をいち早く成功させ、「ストロベリーコーンズ」をまたたく間に東北一の外食チェーンに育て上げた。
■ストロベリーコーンズの概要
会社名=㈱ストロベリーコーンズ
所在地=仙台本社・宮城県仙台市青葉区中央二-二-一五、■022・268・6711
東京本社=東京都港区浜松町二-七-一六、03・3431・0393
店舗数=一三〇店(直営一〇・FC一二〇)
年商=七五億円
(文責・岡安)