ピザ・パスタ 話題のローカル店「ピアーザ」職人気質の小規模経営

1997.09.30 136号 26面

広島県福山市を拠点に八店舗を展開する「ピアーザ」は、生業店志向の地域密着チェーン。“職人的経営”をテーマに掲げ、デリバリーピザ店の進むべき新たな方向性を示している。店舗初期投資はわずか二五〇万円、月商設定は二三〇万円前後。小規模経営の典型的成功例として最近密かな話題となっている。

「デリバリーピザが流行し始めたときは店舗オープンで即月商一〇〇〇万円以上。いま考えると狂気の沙汰でしたね」と同チェーンの代表取締役、大藤慎一さん。大藤さんは業界の草分け「ピザステーション」の出身。一号店当時からスタッフとして活躍してきたが、実家の事情で帰郷。後、福山市にニューコンセプトのデリバリーピザ店「ピアーザ」をオープンした。

「従来は投資目的のデリバリーピザ店が多く、店舗初期投資額は二〇〇〇~三〇〇〇万円にも達した。いわば経営者は資産層に限られ、『本当にピザが好きで、おいしいピザを作りたい、店を持ちたい』という無資産の若者にはチャンスが少なかった。だから、そういった若者にチャンスを与えるため、投資目的とは逆行する、職人志向の小規模経営ノウハウを集積したのです」。思いは初期投資二五〇万円という形に(チェーンデータ参照)。

“職人的経営”がテーマだから、店舗オペレーションも投資目的とは大きく異なる。毎朝オーナー自らドウを作り、オーブンは本格志向のデッキ式オーブン。スタッフのユニフォームは白衣で首にはナプキン。まるでコックが配達しているよう。

とりわけ焼成には細心なノウハウを駆使する。デッキ式オーブンは焼きムラが起こりやすいので、焼成中に幾度かデッキを開けクラストを回す必要がある。そのタイミングを図ってトッピングを施す。例えばダブルチーズの場合、焼成前とクラストを回す時の二回に分けてトッピングする。すると、チーズの味わいが二重になる。マヨネーズをトッピングする際は、ピザが焼き上がる寸前にトッピングすると見栄えがよい。バブルダウン(注)はクラストを回す際に防げるので、ドッカーを使う必要がない。だからドウの繊維を傷つけずにすむ。例え起きても、その部分にトッピングを追加するので、トッピングのムラも皆無という。

「機械任せにしないで、常に見張りながら焼成し、最高のタイミングでトッピングする」という大藤さん。焼き上がりの細部にこだわる焼成ノウハウは、ほかにもたくさんあるという。

こうした職人気質のプレミアムピザだから、キャンペーンや大量ポスティングとは無縁。リピーターをガッチリつかみ、平均商圏一~二㎞、平均二万世帯、バイク三台で安定展開している。月商二三〇万円は大手チェーンの相場に比べ半分以下だが、初期投資、店舗パッケージ、ローコストの販促を踏まえれば決して低くはない。むしろ利益率で見ればオーナー利益は三〇~三五%(七〇~八〇万円)と大手を圧倒的に凌駕。金額ベースでも月商五〇〇万円前後の店と同等の数字を上げている。

「ピアーザ」のコンセプトは、大手チェーンの勢力拡大に困惑する単独店にとって大きな参考材料となるだろう。

注・焼成中にドウのなかの空気が膨張してクラストが膨れ上がること。

ピアーザ

社名=(有)クワトロポルテ/代表者名=大藤慎一/創業=平成元年/設立=平成元年/所在地=広島県福山市御幸町上岩城504-1/TEL0849(55)2066/社員数3人/資本金=300万円/決算期=3月

創業店=福山店/モデル店=駅塚神辺店/店舗平均月商=230万円/基準店舗フォーマット=店舗坪10坪、商圏1~3㎞・8000世帯以上、バイク3台/店舗開店投資=250万円・二段式デッキオーブン2台(50万円)、冷蔵ショーケース(20万円)、家庭用冷蔵庫、ヤマハギア3台、事務テーブル、他/客単価=1600円/M(25㎝)L(36㎝)

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