地域ルポ 芝・三田界隈(東京・港区) 桜田通りはFFゾーンの様相
東京・港区の芝・三田界隈。JR田町駅前の第一京浜を渡って北側の芝園橋と赤羽橋まで南北を貫く日比谷通り、桜田通り周辺の芝一~五丁目、三田一~三丁目エリアをいう。トータル的には田町界隈といってもいいが、三田といえば、森永の本社ビルや慶応大学をイメージする。最寄り駅はJR田町、都営浅草線と都営三田線の三田。
この地域の唯一の商店街は「慶応通り」(慶応通り振興会)。田町駅前の第一京浜を北側に横断すれば、即通りのアーチにアクセスする形になる。幅三mほどの狭い通り、前進すれば、カギ型に折れて桜田通りの慶応三田キャンパスにたどり着く。パチンコ、パチスロ、ゲームセンター、雀荘などに加え、メガネ、ドラッグストア、コンビニ、書店、飲食店舗など雑多に商業集積が進む。
大半が学生やサラリーマン相手の店舗運営だが、周辺には森永をはじめ、三菱自動車、NEC、ニチメンなどの大手企業も点在する。
教育施設では慶応大ほか、芝浦工大、戸板女子短大、聖徳学園、三田高校など、多くの大学や高等学校が立地しており、地域の立地特性としては学生街とビジネス街の二つの顔をもつという感じだ。
第一京浜を渡って慶応通りに向かう入口左手に読売東京理工専門学校、バス道路を挟んで向かい側に、ハンバーガーチェーン後発のバーガーキングが出店している。
通り名のアーチをくぐれば、右手にセットバックした形で四階建ての飲食ビルが存在する。
一階にカーサ、二階小吃坊、三階藩、四階OLD NEWというフロア構成で、四店舗すべてが西洋フードシステムズの直営店だ。
このビルは、オープンして八年になる。こういった複合タイプのレストランビルは、西洋フードは過去“オールドニュープロジェクト”と称して、積極的に展開していたが、現在は小休止といったところだ。
やや行くと道がカギ型に折れるが、正面にドラッグストア、左隣のビル地下一階に居酒屋チェーン庄やが出店している。
道は北から西側に折れる形になるが、全長約二〇〇m、幅三mほどの狭い道で、終端は桜田通り三田二丁目交差点に接する。この交差点の北西方向に、慶応の三田キャンパスが広がる。
だから、通り名のとおり、この道(商店街)は慶応の学生さんの通学路でもあるのだ。商店街はこの通りから北側に四本の枝道に沿って展開する。枝道も狭く長さ一〇〇m前後。NEC前面の日比谷通りとクロスする東西方向の“電気通り”にジョイントする。
商店はこれらの道に沿って軒を連ねている。エリア内の商店数は「慶応通り振興会」(高木栄二会長)によれば、約一三〇店舗で、この七、八割が飲食店舗だという。
飲食店舗の中でも居酒屋(パブ)業態は、大手チェーンの進出で目立った存在で、先の藩や庄やに加えて天狗、りきしゃまん、ニユー・トーキヨー庄屋、ニユー・トーキヨーウエル、駒八などが、地域をやや外れては村さ来、海鮮問屋などが出店している。
この中にあって、天狗、りきしゃまんは二店舗ずつ、駒八も同じ業態で四店舗、カラオケ、海鮮居酒屋などを含めればグループ店としては九店舗の集中出店を実現している。
ファストフードも目に付く。ハンバーガーチェーンでは、先のバーガーキングをはじめ、モスバーガー、ドーナツではミスタードーナツ、フライドチキンはケンタッキーフライドチキン(KFC)、牛丼では神戸らんぷ亭、吉野家など。
ハンバーガー分野は、かつて田町・三田エリアは森永ラブのホームグラウンドで、森永本社ビル(プラザ)一階に一号店(フラッグ店)があったほか、地域に四、五店舗展開していた。
しかし一昨年6月、バーガーキングを展開するバーガーキングジャパン(本社=東京・港区)にこれら店舗を含め、トータルで五〇店を譲渡したので、その後店(物件)は順次バーガーキングに変わっており、現時点(九七年10月末現在)においては三〇店舗がバーガーキングとして営業している。
喫茶チェーンの出店。これは慶応通り近接地での出店になるが、ドトールコーヒーをはじめ、珈琲館、ベローチェ、ルノアールなどの四チェーン。ドトールは芝五丁目、三田三丁目に二店舗を出店している。
目立った存在ではないが、慶応通りには中華、中国料理、ラーメン店の出店も多い。
喜多方ラーメン麺ロード、ラーメン専科は、一〇坪前後の小型店舗だが、学生や若いサラリーマンなど常に人の入りがあり、強い集客力を発揮している。
両店は通りを挟んで向き合う形で立地しているが、麺ロードは屋号どおりに麺オンリー、ラーメン専科はご飯物もあるということで、すみ分けている。
通りの中ほどに八階建ての建築会館がある。オープン式の地下一階、地上一階は“飲食街”になっており、一階にカレー「インディア」、パブレストラン「はてな亭」、ジャズレストラン「三田倶楽部」、地下に洋風居酒屋「ニユー・トーキヨーウエル」、和風居酒屋「ニユー・トーキヨー庄屋」の計五店舗が展開する。
はてな亭(約一〇〇席)はジローレストランシステムの経営で、パスタほか、エスニック的な料理も提供しており、若い女性客も多い。
「ほうれん草と鶏せんべいのサラダ」三八〇円、「手造り明太子コロッケ」五五〇円、「宮崎産日向地鶏の唐揚」六八〇円、「野菜たっぷりちゃんぽ餃子」五八〇円はオリジナルのおすすめメニュー。
カレーインディア(約三〇席)は、ボリュームのある「ランチカツカレー」(味噌汁+サラダ付)八三〇円が評判の店で、連日サラリーマンや学生で賑わっている。「ポークカレー」六〇〇円、「カツカレー」「ハンバーグカレー」各七八〇円、「ビーフカレー」「エッグカレー」各七三〇円など。
建築会館から桜田通りへ向かう。派手な看板のすし屋が目に入る。チェーン店の「魚がし日本一」に似た雰囲気だが、屋号も経営も異なる。
看板に「魚がし鮨」とある。本店(四〇席)と分店(六〇席)の二店舗がほぼ向き合う形で営業している。経営は共英総合事務所(東京・新宿)。
桜田通りに出る。そこは幹線道路としてはT字型の「三田二丁目交差点」になる。慶応大学が近接する位置関係にあるが、通りに面しては前記のモスバーガー、ミスタードーナツ、吉野家の三店が軒を連ねる形で展開、KFC(慶応大学正門前近く)はやや遠のくが、強いていえばこのエリアは桜田通り沿いの“FFゾーン”と形容することもできる。